おしらせ


MAMIYA-TOMINONのページに写真家・橘ゆうさんからご提供いただいた素晴らしいお写真を掲載しました!
大変感謝しています。是非御覧ください。こちらです。

2019/04/24

Wollensak Cine Velostigmat 1inch(25mm) F1.5 (C mount)




オールドレンズガールの活動が勢いを増しています。ある筋によると、最近流行りのブテイックスタイルのオールドレンズ専門店では、来店する客の8割以上が女性なのだそうです。これは、日本だけにみられる特異な傾向なのかもしれませんが、カメラではなくレンズ、しかもオールドレンズを基軸に据えて創作活動を行うカメラガールの亜種、ある種のオタク的な人種、言ってしまえば変態カメラ女子がこの島にはウヨウヨいるというのです。本ブログではオールドレンズ女子部の助けを借りながら、彼女たちが心弾ませるフンワリ、ボンヤリ、でもシッカリ写るレンズを何本か紹介してみようとおもいます。

特集:女子力向上レンズ PART 1
F1.5の明るさを備えた滲み系シネレンズ
チビですが万能!
WOLLENSAK  CINE VELOSTIGMAT 25mm(1inch) F1.5
シネ・ベロスティグマート 

特集の一本目はCマウントのシネマムービー用レンズ(シネレンズ)で、米国ニューヨーク州ロチェスターに拠点をかまえていたウォーレンザック社(WOLLENSAK)のシネ・ベロスティグマート(Cine Velostigmat 25mm F1.5です。このレンズはボレックスという16mmの映画用カメラに搭載する交換レンズとして、1940年代から1950年代にかけて市場供給されました。開放でフンワリと柔らかく、薄いフレアが適度な滲みを伴ってあらわれます。トーンが軟らかく明らかに軟調傾向の描写ですが、発色は依然として良好なため、お洒落な写真が撮れます。オールドレンズガールたちの嗜好にストライクのレンズだと思います。
レンズのイメージサークルはAPS-Cセンサーをギリギリでカバーできる広さがあり、マイクロフォーサーズ機に搭載して用いる場合には明るい標準レンズ、APS-C機では広角レンズとなります。レンズはCマウントですので、アダプターを用いれば各社のミラーレス機で使用することができます。鏡胴が小さく軽いため小型ミラーレス機に搭載した場合にもバランスよく使用でき、旅でこれ一本あれば一通りの撮影をこなすことができます。唯一の弱点は最短撮影距離が50cmと長めなところ。これを克服するには、Cマウントレンズ用のマクロエクステンションリングを手にいれておくとよいでしょう。私はライカMマウントに改造しミラーレス機用のヘリコイド付アダプターに搭載して用いることにしました。最短撮影距離を18cmまで短縮でき、十分に寄れる万能なレンズとなっています。



レンズの光学系は下図に示すようなKino-Plasmatの4枚玉バージョンと同一構成で、同じ構成ではKodak Anastgmat 1inch F1.9にも採用されています[4]。これを大胆にもF1.5の明るさで製品化したのが今回のシネレンズというわけですが、反動で滲みやフレアをともなう個性豊かなオールドレンズが誕生しています。ちなみに、Cine-Velostigmatには少し暗いF1.9のモデルもあります。光学系の設計は全く同一で、前群を抑えるトリムリングの厚みを変えてF1.9に絞っているだけです。F1.5のモデルで少し絞れば、F1.9のモデルとほぼ同じ写りになります。
Cine Velostigmat 1inch F1.5(sketched by spiral)の見取り図。構成は4群4枚でHugo Meyer社のKino Plasmat4枚玉バージョンと同一です
  
参考文献
[1] WOLLENSAK MEANS FINE LENSE (BOLEX用レンズのチラシ)
[2] カメラマンのための写真レンズの科学 吉田正太郎 地人書館:戦前にボシュ・ロムが開発した新式ペッツバール
[3] アサヒカメラ1993年12月増刊「郷愁のアンティークカメラIII・レンズ編」P147, Kodak Anastigmat F1.9に採用された変形ダイアリート
[4] Kino Plasmat DE Pat.401630 (1924) 
 
Cine Velostigmat 1inch F1.9(左)と 1inch F1.5(右)の前群を外したところ。両者は全く同一の光学系です。F1.9はトリムリング(レンズエレメントを固定するリング)の厚みで口径比を制限しています
 
レンズの市場価格
流通量は少なく探すとなるとやや大変ですが、イーベイには常に何本かが高めの値段設定で出ています。実際の取引相場は落札相場は15000~20000円くらいでしょう。ただし、市場に流通している個体の多くはヘリコイドグリスが固着しているので、オーバーホールを視野に入れておく必要があります。中古店での相場は25000~30000円とネットオークションに比べ割高ですが、オーバーホールされているなら、このあたりの値段でも十分でしょう。
重量(実測)97g, 絞り羽 9枚構成, 最短撮影距離 約50cm, 絞りF1.5-F16, 絞り F1.5-F16, Cマウント, 16mmシネマフォーマット, 設計構成は4群4枚のKino-Plasmat型[4], コーティング付とノンコートがありノンコートの流通が大半のようだ






撮影テスト

開放ではピント部をフレアが覆い、ハイライト部に滲みが出るなど柔らかい描写傾向になります。この種のレンズの多くは発色が淡白になりがちですが、このレンズの場合には色がしっかりと出るので、軟調で軽めのトーンと相まって雰囲気のあるお洒落な写真が撮れます。また、少し絞ればフレアや滲みは消滅し、スッキリとしたヌケのよいシャープな像になります。APS-C機で用いると立体感のある画が撮れるとともに、グルグルボケや光量落ちが顕著に発生します。一方、マイクロフォーサーズ機では四隅が切り取られますので画質が安定し、グルグルボケや光量落ちは目立たなくなります。カメラの選択により表現の幅が広がるのは素晴らしいことだとおもいます。APS-C機でアスペクト比を映画に近い16:9に設定して用いるのもオススメです。今回は私の作例に加え、オールドレンズ女子部の皆さんからも写真を提供してもらう予定ですので、続けてご覧ください。
このレンズを使うと有無を言わさず女子力が高まるのだと女子部のある人から教えてもらいました。事実確認のため自分もイングリッシュガーデンで一日使ってみたところ、女子力の高まりを感じ取ることができました。女子力・・・それは、トキメキだったのです。
 

Photographer:SPIRAL
Camera: SONY A7R2 (APS-C mode)

F1.5(開放)  sony A7R2(APS-C mode, WB: 曇天) 


F1.5(開放)  sony A7R2(APS-C mode, WB: 曇天) 




F1.5(開放)  sony A7R2(APS-C mode, WB: 曇天)  フンワリ感を増すには、わざとピントを外すのも有効です
F1.5(開放)  sony A7R2(APS-C mode, WB: 曇天) 






続いてオールドレンズ女子部のMiyuYoneさん、安藤さんの写真作品を掲示します。随時追加してゆきますので、その際にはブログのトップでお知らせします。ちなみにレンズは自分がライカMに改造したものをお使いいただきました。


 
Photographer: Miyu Yone
Camera: Olympus OM-D


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Photographer: Tomoe Ando
Camera: Olympus OM-D  


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Photographer: どあ*
Camera: Olympus PEN E-PL6  
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Cine Velostigmatを使いこなす写真家を発見!
Photographer:  Taka(58)
オールドレンズフェス2023にて
Camera: Fujifilm X-T4













Model: Maiwuさん

2019/04/23

Kodak Anastigmat 25mm(1inch) F1.9 改LM










試写記録:APS-Cセンサーをカバーできる
コダックの16mmシネマ用レンズ
KODAK ANASTIGMAT 25mm(1inch) F1.9
知り合いからの依頼でレンズをライカMマウントに改造することになりました。テストを兼ねて試写記録を残しておきます。
レンズは1936年から1945年にかけて生産されたMagazine Cine-Kodakという16mm映画用カメラの交換レンズとして市場供給されました。イメージサークルはこのクラスのレンズにしては広く、前玉側についているドーム状のフードを付けた状態でマイクロフォーサーズセンサーをカバーし、フードを外せばAPS-Cセンサーを余裕でカバーしています。ライカMに改造しておけば各社のミラーレス機で使用できますし、ヘリコイド付アダプターとの組み合わせで寄れるレンズにもなります。メリットしかありません。

  
Kodak Anastigmatの構成図。アサヒカメラ1993年12月増刊「郷愁のアンティークカメラIII・レンズ編」P147に掲載されていた構成図のトレーススケッチで左が被写体側で右がカメラの側。構成は4群4枚のダイアリート型です。Goetz社のCelor/Dogmarなどにこの構成が採用されました
レンズの光学系は上の図に示すような4群4枚の対称型で、ダイアリートと呼ばれる種類の設計構成です。レンズの対称性と空気レンズの助けを借り、僅か4枚のエレメントでザイデルの5収差を合理的に補正できるのが特徴です。20世紀前半にヨーロッパや米国で、この構成を採用したレンズが数多く登場しました。

KODAK ANASTIGMAT 1inch (25mm) F1.9:ライカMに改造,  最短撮影距離(規格) 2 feet(約61cm), 絞り値 F1.9-F16
レンズのマウントはKodak Type Mという独自規格のため、アダプターの市販品がありません。現代のデジタル一眼カメラで使用するにはマウント部の改造が必要です。一般の人には敷居が高いので中古市場での取引価格は20005000円程度と安価です。

撮影テスト
今回はAPS-Cフォーマットで撮影を行いました。開放から中心部はシャープで解像力も良好ですが、定格より遥かに広いイメージフォーマットのためピント部四隅の画質は破綻気味で、背後にはグルグルボケ、前方には放射ボケが顕著に発生します。階調は軟らかく発色はやや温調にコケるので、味わい深い写真になります。同じダイアリート型レンズでも、ひとつ前のブログエントリーで取り上げたWollensak社のCine Velostigmatの方が滲みが多く柔らかい描写でした。こちらのレンズの方がヌケは良いのですが、暴れん坊です。
  
F1.9(開放)  Sony A7R2(APS-C mode, WB:曇天)  激しい開放描写です
F1.9(開放)  Sony A7R2(APS-C mode WB:曇天)  振り回されます
F1.9(開放)  Sony A7R2(APS-C mode WB:曇天)