おしらせ


2024/02/12

Wollensak Cine-Velostigmat 1.9/25(1 inch)



滲みは控えめですが、それでも凄い

ブラック・ベロスティグマート

Wollensak Cine-Velostigmat 25mm(1inch) F1.9 C-mount

滲み系シネレンズの代表格として今や若者を中心に人気のCine-Velostigmat F1.5(シネ・ベロスティグマート)には、実は開放F値を1段抑えた兄弟(F1.9のモデル)が存在します。1段抑えたぶんだけ滲みや収差は控えめのはずですが、開放では依然として凄い描写です。F1.5が手に負えないと言う方には、こちらのモデルを試してみることをおすすします。

レンズは米国ニューヨーク州ロチェスターに拠点をかまえていたウォーレンサック社(WOLLENSAKが1940年代から1950年代にかけて、ボレックスという16mmの映画用カメラに搭載する交換レンズとして市場供給しました。軟調で発色も淡いので、ふんわり、ボンヤリとした写真を狙うここぞという時に力を発揮し、オシャレな写真が撮れます。飛び道具としてポケットに入れておきたいアイテムの一つです。

レンズはCマウントのためアダプターを介して各社のミラーレス機にて使用することができます。イメージサークルはAPS-Cセンサーをギリギリでカバーできる広さがあり(ただし、四隅が少しだけケラれます)、マイクロフォーサーズ機で用いる場合には標準レンズ、APS-C機では広角レンズとなります。鏡胴がコンパクトで軽いため小型ミラーレス機でもバランスよく使用でき、旅ではこれ一本あれば一通りの撮影をこなすことができます。唯一の弱点は最短撮影距離が50cmと長めなところで、これを克服するには、Cマウントレンズ用のマクロエクステンションリングを手にいれておくとよいでしょう。最短撮影距離を18cmまで短縮でき、十分に寄れる万能なレンズとなります。

 

Cine Velostigmat 1inch F1.9/F1.5の見取り図(Sketched by spiral)。左が被写体側で右がカメラの側です。構成は4群4枚でHugo Meyer社のKino Plasmat4枚玉バージョン[DE Pat.401630 (1924)]と同一構成です
 

レンズの設計構成は上図に示すようなKino-Plasmatの4枚玉バージョン[DE Pat.401630 (1924)]で、一段明るいF1.5のモデルと同じ光学系を流用しています。下の写真のように前群を抑えるトリムリングの厚みを変えることでF1.9としてあります。コーティングのある個体とない個体が存在しており、今回私が手にした個体にはコーティングがありませんでした。コーティン付きよりも更に軟調な描写です。

Cine Velostigmat 1inch F1.9(左)と 1inch F1.5(右)の前群を外したところ。両者は全く同一の光学系です。F1.9はトリムリング(レンズエレメントを固定するリング)の厚みで口径比を制限しています

レンズの市場価格

流通量はF1.5のモデルより少なく、探すとなるとやや大変です。値段的にはF1.5のモデルと大差はなく、eBayでの落札相場は100-150ドルくらいでしょう。ただし、市場に流通している個体の多くはヘリコイドグリスが固着しているので、オーバーホールを視野に入れておく必要があります。中古店での相場は25000~35000円とネットオークションに比べ割高ですが、オーバーホールされているなら、このあたりの値段でも妥当でしょう。

Wollensak Cine Velostigmat 1inch F1.9: 重量(実測)100g, 絞り羽 9枚構成, 最短撮影距離 約50cm, 絞りF1.5-F16, 絞り F1.5-F16, Cマウント, 16mmシネマフォーマット, 設計構成は4群4枚のKinoplasmat型, コーティング付のモデルとノンコートのモデルがありノンコートモデルの流通が大半のようだ


  
撮影テスト
開放ではフンワリと柔らかい描写で、薄いハレーションが適度な滲みを伴ってあらわれます。ただし、ピント部中央には芯がありソフトフォーカスレンズよりも細部までしっかり解像します。トーンが軟らかいうえ発色は淡いのですが、色が薄くなることはありません。個性の強い描写ですので常用にはできませんが、使いこなせるようになれば、ここぞという時に良い働きをしてくれる強い手駒となるはずです。ちなみに背後には強めのグルグルボケが出ており、APS-C機で用いると糸巻き状の歪みと、周辺光量落ちが目立ちます。近接撮影時は収差の嵐に見舞われます。
 
 
F1.9(開放) Fujifilm X-Pro1(WB 日光)

F1.9(開放) Fujifilm X-Pro1(WB 日光 Aspect Ratio 16:9)

F1.9(開放) Fujifilm X-Pro1(WB 日光 Aspect Ratio 16:9)

F1.9(開放) Fujifilm X-Pro1(WB 日陰 Aspect Ratio 16:9)
F1.9(開放) Fujifilm X-Pro1(WB 日陰 Aspect Ratio 16:9)
F1.9(開放) Fujifilm X-Pro1(WB:日陰、Aspect ratio 16:9)

F1.9(開放) Fujifilm X-Pro1(WB:日陰 Aspect ratio 16:9)
F1.9(開放) Fujifilm X-Pro1(WB:日光 Aspect ratio 16:9)





2024/02/08

【2024年】オールドレンズ入門者です。カメラは持っていません。どんな機材を揃えればよいのでしょうか?



オールドレンズはじっくり時間をかけ、自分に合った製品を探してゆくものです。先ずは「カメラ」と「アダプター」を買い揃えてください。

買い揃えるカメラはフルサイズ・ミラーレス機が入門者には最適です。SONY A7(初代ILCE-7)の中古品をおすすめします。フルサイズ・ミラーレス機であればレンズ選択の幅が広く、自分のニーズや嗜好に合ったレンズを探すのが容易です。初級者から上級者まで幅広い層が使用しており、悩んだり困ったときには誰かに相談することができます。SONY A7ならば現在は中古店で60000円程度(ネットオークションでは35000円程度)から入手できます。他のフルサイズ・ミラーレス機と比べ圧倒的に安いのが特徴です。まずはこのくらいの製品でオールドレンズライフをスタートさせ、本格的に取り組む段階で、必要に応じて最新機を買いなおすのがよいでしょう。もちろん予算に余裕があれば、最初から最新機を手に入れるのもよいと思います。

APS-C機やマイクロフォーサーズ機に手を出すのは、今はやめた方がよいです。実際のところ、この種のカメラは中・上級者向けです。レンズの選択幅が狭く、レンズとカメラの相性に関する専門的な知識も必要になります。最大の悩みは広角レンズを探すのがたいへん困難なことです。カメラとの相性を考えると、ベストな選択はシネレンズやハーフサイズカメラ用レンズに限定されます。値段が安くカメラ自体がコンパクトであることは初級者には大きな魅力ですが、相性の良いレンズが見つからなければ、結局は大きなフルサイズ機用のレンズを付けることになります。こうなるとカメラとのバランスが悪い上に、レンズ本来の性能を引き出すことはこれらの機種ではできません。ちなみにSONY A7(初代)は10年も前の製品ですが、まぁまぁコンパクトな上に本体重量は416gしかありません。

次にアダプターですが、入門者が買い揃えておきたいのは3種類、ライカMマウントレンズのアダプターと、ライカL(L39)-ライカM変換リング、M42マウントレンズのアダプターです。これらのマウント規格は、かつてユニバーサルマウントと呼ばれ、世界中の光学メーカーがレンズを供給していました。数多くのオールドレンズが中古市場に流通しています。

最後に少し将来の話になりますが、ライカMマウントレンズのアダプターを買い揃えておけば、そこを起点にアダプターを継ぎ足す事で、さまざまなレンズが使えるようになります。こちらの記事が参考になりますので、今ではなく、いつか読んでみてください。今お伝えしたいのは、ライカMアダプターをお勧めするのには合理的な理由があるという事です。ただし、安物を入手するとレンズを継ぎ足す際にガタが出ることがありますので、ライカMアダプターだけは多少値が張っても精度のよいもの、定評のあるものを手に入れることをお勧めします。

thanks to Loose Drawing