おしらせ


2018/01/25

KMZ OKC1-10-1(OKS1-10-1) 10mm F2.8



ロシアの16mm映画用レンズ part 3
試写記録:KMZ OKS1-10-1  10mm F2.8
フィルム写真のような色味が魅力のレトロフォーカス型レンズ

OKC1-10-1(OKS1-10-1)はロシアのKMZ(クラスノゴルスク機械工場)が16mm映画用カメラの16SPに搭載する広角モデルとして市場供給したシネマムービー用レンズです。前玉にはロシア製レンズ特有のコッテリとした色のコーティングが施され、いかにもよく写りそうな雰囲気を漂わせています。レンズの構成は下図で示すような6群9枚のレトロフォーカスタイプで、採算性を省みない共産圏ならではの豪華な設計であることがわかります。
レンズを搭載した16SPという映画用カメラはアリ社のアリフレックス16STを手本に開発されたプロフェッショナル向けの製品で、ターレット式マウントに一度に3本のレンズをマウントすることができました。本レンズに加え、例えばOKC-1-50 50mm F2とOKC2-75-1 75mm F2.8などを組み合わせて使っていたようです。

OKC1-10-1構成図。GOI Objective Catalog 1971からの見取り図(トレーススケッチ)。設計構成は6群9枚と豪華


入手の経緯
レンズは2017年秋にeBayにてウクライナのオールドレンズを専門に扱うセラーから7000円(+送料1500円)で購入しました。レンズヘッドのみで売られている個体は改造難度が高いことが一目見てわかるので、今回はヘリコイドがついている個体を狙いました。相場はレンズヘッドだけの商品が10000円~15000円程度。ヘリコイド付きは流通量が少なく探すのが大変です。届いたレンズはカビやクモリこそなく実用上は問題ありませんでしたが、コンディションは値段相応でレンズ内の清掃も必要でした。

フィルター径 58mm,  絞りT3.1(F2.8) -T16, 設計構成 6群9枚レトロフォーカス型, 絞り羽 10枚構成,  上の写真はM42ヘリコイド(22.5-48mm)に搭載しPentax Qマウントに改造した事例ですが、M42ヘリコイド(15-27mm)に搭載しライカマウントに変換することも可能でした
レンズは16mmシネマフィルム向けに設計されているため、Nikon 1で使用するのが相性の良い組み合わせです。この場合の35mm換算焦点距離は28mm相当となります。Pentax Qでも使用することができますが、この場合の換算焦点距離は55mm相当となり、標準レンズとして使用することになります。
本レンズを手に入れた直後に初めはマイクロフォーサーズ機につけてみたのですが、はっきりとトンネル状にケラれてしまい、イメージサークルには規格以上の余裕が無いことがわかりました。手元に使えるカメラがなかったため、しばらく放置していたのですが、ある時に知人がPentax Qを使うとのことで出番が到来、さっさとPENTAX Qマウントに改造しお貸ししたところ、たいへん気に入り、5000円+部品代でお譲りすることにしました。嫁ぎ先が決まって、めでたしめでたし。ご厚意で知人から写真作例を何枚か頂戴できましたので、以下に掲載します。このレンズを使って撮った写真がネット上には皆無でしたので、どんな写りなのか、ある程度参考になると思います。

★試写記録
F4.5, pentax Q(AWB) photo: Wataru Yamamoto スッキリとヌケのよい優等生的な写りです



F5.6(AWB), PENTAX Q, photo: Wataru Yamamoto 階調は適度に軟らかく、発色は温調気味で、いかにもオールドレンズらい写りです

F3.1(AWB), Pentax Q,  photo: Wataru Yamamoto 逆光に敏感なのはレトロフォーカスタイプならではの性質です。赤がきついのはカメラの画像処理エンジンの味付けからでしょう

F3.1(AWB), pentax Q, photo: Wataru Yamamoto 
F4.5(AWB), pentax Q, photo: Wataru Yamamoto 軟らかいフィルムのような写りを期待することができます

F4.5(AWB), pentax Q, photo: Wataru Yamamoto 



2018/01/19

オールドレンズ専用のフィルムカメラ

おすすめのフィルムカメラをご紹介します
もちろんオールドレンズ専用機です
MINOLTA X-700 and YASHICA FX-3 Super 2000
昨年あたりから日本の10代~20代の若者の間でフィルムカメラが流行していることを知りました。インスタグラムが火付け役になっているそうで、知人が企画しているフィルム散歩会には男女を問わず多くの若者が集まります。しかも、参加者らは古くて安いマニュアルフォーカスカメラにオールドレンズをつけて使っているのです。最近はいろいろなコミュニティで「オールドレンズ用におすすめのフィルムカメラはありますか?」と尋ねられる機会も増えてきました。そこで、おすすめのカメラを2台ご紹介しますが、1台目はミノルタのX-700です。まずは、どんなカメラなのか写真でご覧ください。

MINOLTA X-700: 1981-1999年製造, MINOLTA SRマウント(フランジバック43.5mm < M42, EXAKTA, etc...) (GOOD!) ,  最高シャッタースピード 1/1000 (tough! 残念), 露出計: TTL開放中央重点測光/瞬間絞り込み測光, ミラーアップ方式:スイングバック(Great!), 明るさとピントの合わせ安さを両立させたアキュートマットスクリーンを採用(Great!), ファインダー視野率95%(GOOD!), ファインダー倍率0.9(GOOD!), フォーカッシングスクリーン: スプリットマイクロプリズム(中央)アキュートマット(周辺) (GOOD!),  重量 505g, カラーバリエーションはブラックおよびブラック/シルバーのツートン


一眼レフカメラの中ではフランジバックが比較的短いため、アダプターを使えばM42マウント、エキザクタマウント、デッケルマウントなどのユニバーサルマウントに対応でき、オールドレンズの選択肢が豊富にあります。中古市場では5000円以内で手に入るリーズナブルな価格帯にありますが、侮ってはいけません。このカメラには他にはないユニークな特徴が備わっており、私が手元に残した一眼レフカメラの中では最も使い出のある一台になっています。
まず、何と言っても重要な特徴は、ミラーアップの方式がスイングバックになっている点です。これは、ミラーが後退しながらはね上がるという仕組みです。シャッターを切る際にミラーがレンズの後玉に引っかかるトラブル(ミラー干渉)を未然に防ぐことができます。大方の一眼レフカメラはシャッターをきるとミラーが単純にはね上がるクイックリターン方式を採用しているのに対し、スイングバック方式はごく限られた高級機のみに採用されました。後玉が飛び出したレンズでも、このカメラなら使用できたという報告例が相次いでおり、後玉の飛び出し具合が特に著しいキルフィット製レンズでも使用できました。このカメラなら、数多くのオールドレンズが問題なく使用できます。そして、X-700のもう一つの特徴はピントの合わせやすさを極限まで高めた非常に明るく見やすいファインダーです。ここにはミノルタが独自開発したアキューマットスクリーンが使われており、これが実に素晴らしい。アキューマットスクリーンはあのハッセルブラッドにも採用されました。ピントの合わせすさでX-700の右にでるフィルムカメラは無いと言ってもよいでしょう。スクリーンの中央部はスプリットマイクロプリズムになっており、厳密なピント合わせを行う際に重宝します。また、ファインダー倍率が約0.9、視野率が約95%と高いのも魅力です。残念なのは最高シャッタースピードが1/1000までとごく平凡な点と、カメラの心臓部が電子式なので、半永久的に使える機械式とは異なり、いずれ寿命がくる点ですが、その分を差し引いても十分に魅力のあるカメラです。

詳しい事情はわかりませんが、m42-minoltaアダプターには無限遠のフォーカスを拾えない製品がかなりの割合で流通しています。記載文にハッキリと無限が出ないと書いてありますので、入手時には注意してください。無限遠のフォーカスが拾えることを保証している製品もありますので、探してみるとよいでしょう。

Minolta X-700 + Kilfit Tele-Kilar 105mm F4

続く2台目は、コシナがOEM生産しヤシカブランドで1993年に発売されたYASHICA FX-3 Super 2000です。シンプルな操作系と軽くて小さなボディ、壊れにくい構造が特徴で、中古市場では5000円以内で手に入ります。このカメラはヤシカブランドの国内最終モデルですが、なんとZeissとの提携により実現したコンタックス・ヤシカマウントが採用されており、名玉の宝庫、ヤシコンのカールツァイスレンズ群が使用できます。また、アダプターを使い数あるM42レンズ群を使用することもできます。ヤシカ・コンタックスマウントはフランジバックがM42マウントより極僅かに長いので、M42レンズが使用できるのは意外と思われる方も多いでしょう。無限のフォーカスを拾えるよう、アダプターの側でマウントを僅かに沈胴させているのです。

YASHICA FX-3 Super 2000: 1993発売, C/Y(コンタックス/ヤシカ)マウント:フランジバック45.5mm,  最高シャッタースピード 1/2000 , 露出計: 中央部重点 平均測光, ミラーアップ方式:クリックリターン, ファインダー視野率92%(GOOD!), ファインダー倍率0.91(GOOD!), フォーカッシングスクリーン: スプリットマイクロプリズム(中央),  重量 445g(Good!), カラーバリエーションはブラックおよび北米向け輸出モデルのみに供給されたブラック/シルバーのツートン

カメラの機能としての特徴は、露出計を除くカメラの心臓部が機械式のため、オーバーホールさえ続ければ半永久的に使用できる点、そして、最高シャッタースピードが1/2000と機械式にしては高速な点でしょう。X-700が弱点としていた箇所が見事に補完されています。外観はプラスティック感が漂っていますが、アルミダイキャストボディを採用しており、見かけによらず頑丈なつくりです。ファインダーの明るさはごく平凡でX-700には及ばないものの、ファインダー倍率0.91、視野率92%は立派なスペックです。スクリーン中央にはスプリットマイクロプリズムがついており、厳密なピント合わせを行う際に重宝します。

YASHICA Fx-3 super 2000 + Carl Zeiss Contarex Planar 85mm F2