おしらせ


2015/03/13

Handsome Optical engineer 紙上アンケート:決定!ハンサム設計士ランキング

美しい世界の光学エンジニアたち!
今年も恒例の紙上アンケートを実施する時期になりました。テーマは「ハンサムなイケメン設計士」です。今も昔もその地味な存在のため、ほとんど認知されることのなかった光学エンジニア達ですが、中には絶世の容姿をもつとんでもないイケメンがいるとの情報を各方面からいただきました。そこで、あらかじめノミネートしたハンサムな男性エンジニア10人の中からアンケート方式で決選投票をおこない、ハンサムのなかのハンサムを決めるという何の役にも立たない投票企画を実行することにしました。エンジニア達の容姿にスポットライトをあて、カメラやレンズに対する認識を更に深めてみたいと思います。本当に深まるのか?

なお、回答者が男性であるか女性であるかは集計結果に大きな相違を生じさせる可能性があります。これはハンサムな男性に対する女性側の価値観と男性側の価値観が一致する保障がないためでです。

そこで、今回は回答者を性別ごとにわけアンケートを実施することにしました。それぞれの集計を独立に行うことで、男女間の趣味嗜好の差異についての理解にも迫りたいのです。本ブログの訪問者は男性で、しかもマニア層が多いので、本来ならばその特殊性を考慮しなければならないのですが、回答者がマニアであるか否による美意識や価値観、ハンサムな男に対する反応度の差異までは考慮しません。

ハンサムな光学エンジニアを発掘する

エントリーNo.1 ハリー・ツェルナー(H. Zöllner) 1912-2007
参考:Marco Cavina's Home Page, where the photo is supplied by Larry Gubas
ドイツ人。カールツァイスのレンズ設計士。ビオメタールやフレクトゴン 2.8/35,  パンコラー 1.8/50などを設計した。新種ガラスを導入しテッサーF2.8の性能を大幅に向上させたのも彼の著しい功績です
 
エントリーNo.2 ハインツ・キュッペンベンダー(H. Kueppenbender) 1901-1989
参考:Zeiss Historica, Zeiss Historical Soc.
ドイツ人。ツァイス・イコン社のカメラ設計士。オーバーコッヘンに移ってからコンタックス開発のプロジェクトのリーダーとしてカール・ツァイスの再建に尽力、西ドイツのツァイスの社長も務めた。ゾクッとする甘いマスクに釘付けか!?
 
エントリーNo.3 エルハルト・グラッツエル(E. Glatzel) 1925-2002
参考:Arndt Müller, Legendäre Objektive und ihre Konstrukteure / Dr. Glatzel und das Zeiss Planar 50mm/f0.7, Samstag, 6. August 2011
ドイツ人。カール・ツァイスのレンズ設計者。コンピュータを用いたレンズの自動設計方法(グラッツェル法)を確立し、レンズ設計の可能性の新たな境地を築いた。ホロゴン、ディスタゴン、カラーウルトロンなどを設計した。笑顔が素敵
 
エントリーNo.4 アルベルト・ウィルヘルム・トロニエ(A.W. Tronnier) 1902-1982
参考:Frank Mechelhoff's Home page: Rollei Rolleiflex 350
戦前はシュナイダーでクセノン、クセナー、アンギュロンを設計。戦後はフォクトレンダーに移籍しノクトン、ウルトロン、ウロトラゴン、カラーへリアー、カラースコパー、テロマーなど数々の名玉を残した謎の多いレンズ設計士。カラーウルトロンや凹ウルトロンの開発時はツァイスに協力もした。ダブルガウス型レンズを実用域まで高め、現代の明るいレンズの基礎を築いた人物。天才設計者の象徴的存在
 
エントリーNo.5 トーマス・ダルマイヤー(T. Dallmeyer) 1859-1906
参考: Wikipedia: Thomas Rudolphus Dallmeyer
ドイツ系英国人で老舗レンズメーカーDallmeyer社の創始者ジョン・ダルマイヤーの長男(あと継ぎ)。立派なお髭です。パパのお髭も立派です
 
エントリーNo.6 フーゴ・マイヤー(H. Meyer) 1863-1905
参考: Wikipedia: Meyer-Optik
ドイツ人。マイヤー光学(フーゴ・マイヤー)社の創始者。レンズとしては、アリストスティグマートを開発しヒットさせるが42歳の若さで世を去る。ジャニーズ系の容姿です
 
エントリーNo.7 シャルル・ルイ・シュバリエ(C.Chevalier ) 1804-1859
参考: Wellcome Images
フランス人。光学機器商のシュバリエ商会を運営し、レンズの製作にも取り組んだ。19世紀にフランスで絶頂期を迎えたフランスの光学機器産業を語る際には必ず登場する人物。名前がステキ
 
エントリーNo.8 ウィリー・ウォルター・メルテ(W.W. Merte) 1889-1948
参考: Rudolf Kingslake, A History of the Photographic Lens, Academic Press 1989
ドイツ人。カールツァイスのレンズ設計士。ビオター, ビオテッサー , テレテッサー,オルソメタールなどを開発。バンデルスレプとともにテッサーの高速化にも貢献した。眼が生き生きしてる
 
エントリーNo.9 ピエール・アンジェニュー(P.Angenieux) 1907-1998
参考: 「アンジェニューの歴史1907-1950」 nac image technology web site
フランス人。ズームレンズやレトロフォーカスレンズの開拓者として知られている。フランス映画界とも深いつながりのあった人物
 
エントリーNo.10 オスカー・バルナック(O.Barnack) 1879-1936
参考: Wikipedia:オスカー・バルナック
ドイツ人。いわずと知れたライカの生みの親。カリスマ性は抜群です

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では投票に移りたいと思います。

あなたがハンサムだと感じる光学エンジニアを選択肢から最大3名まで選び投票して下さい。1~2名でもかまいません。

Please choose, in the following sheet, camera/lens designers you feel handsome up to a maximum of 3 people.   Note that the left side sheet is for women and the right side is for men.


結果発表
約半年間の投票で45名(男性35名・女性10名)の方から投票をいただきました。ありがとうございました。予想していたことですが男性と女性では結果が異なるようです。投票結果の集計は以下の通りです。

男女を問わずハンサムであると評価された光学エンジニア

 トロニエ(男女計20票)、マイヤー(男女計20票)

男性からのみハンサムであるという支持を得た光学エンジニア

 T.ダルマイーアー(35%の男性がハンサムであると回答、女性は14%)

 アンジェニュー(26%の男性が支持、女性は12%)

特に女性からのみハンサムであるという支持を得た光学エンジニア

 バルナック(46%の女性がハンサムでると回答、男性は12%)

 ツェルナー(42%の女性がハンサムであると回答、男性は9%)
 
とても面白い結果です。



2015/02/24

Meyer-Optik Görlitz Primagon 35mm F4.5



たかがレトロフォーカス、されどレトロフォーカス
Meyerらしくない優等生レンズ
Meyer-Optik Görlitz PRIMAGON 35mm F4.5
Primagon(プリマゴン)はドイツのゲルリッツに拠点を置くMeyer-Optik社(メイヤー光学社)が1952年から1964年にかけて生産し、一眼レフカメラのExakta, Contax S, Praktinaおよびレンジファインダー機のAltixに搭載した広角レンズである。前玉に大きな湾曲凹レンズを据えバックフォーカスを延長させることで一眼レフカメラに適合させる「レトロフォーカス」と呼ばれる設計法を取り入れている(下図)。この設計法はメガネをかける近視矯正にも似ているため、「画質的には何らメリットはない」とか「本来は不要な補正レンズだ」などネガティブな認識を持つ方も多く、私もそんな一人であった。しかし、レンズ設計者の本をいろいろ読むにつれ、どうもその認識は間違いであることに気付かされた。前玉に据えた凹レンズには光学系のバランスを調える役割があり、四隅の解像力を向上させボケを安定させる素晴らしい働きがあるというのだ。更には周辺光量落ちを抑える効果もあり、デメリットどころか広角化に有利な性質を幾つも引き出してくれる素晴らしい添加物なのである。そういう観点を踏まえ過去に取り上げたレトロフォーカス型広角レンズを思い返してみると、確かにボケが穏やかでピント部も四隅まで均一に写る製品が多かった。今回取り上げるPrimagonもシンプルな構成ながら開放から良く写るレンズとして高く評価されている。
では、改めてPrimagonの設計を見てみよう(下図)。プリマゴンは3枚玉のトリプレットを設計ベース(マスターレンズ)とし、その前方に大きな凹レンズを据えた4枚構成のレトロフォーカス型広角レンズである。マスターレンズが広角化には向かないトリプレットなので、このまま包括画角を広げても実用的な画質を維持することは到底できない。しかし、前玉に据えた凹レンズたった1枚のおかげで一眼レフカメラに適合し、広角化にも耐え、しかも開放から良く写るレンズへと大変身を遂げている。
 
Primagonの構成図をトレースしたもの。後方(右側)のトリプレット(3枚玉)をマスターレンズとし、その前方(左側)に大きな湾曲凹レンズを据えた4群4枚の構成である。凹レンズを追加したことで光学系のバランスが改善、ペッツバール和が抑えられ非点収差が容易に補正できるようになっている。前玉の後方に広い空気間隔を設けることで樽型歪曲収差を抑えている。正の第2レンズが異様なほど分厚いのはこれ以降のレトロフォーカス型レンズによくみられる性質であるが、1952年登場のPrimagonには早くもその形態がみられる。一見したところ広角レンズとは無縁にも思われたトリプレットをマスターレンズに起用しているあたりが、とても大胆で興味深い設計構成である
重量(実測):158g, フィルター径:49mm, 構成:4群4枚(トリプレットベースのレトロフォーカス型), 対応マウント:M42, EXAKTA, Praktina, Altix, 絞り:F4.5-F22, プリセット絞り,  絞り羽: 10枚構成,  最短撮影距離:0.4m, 焦点距離:35mm, 本品はEXAKTAマウント。前玉のみコーティングのない初期のモデルと、前玉を含む全てのレンズにコーティング(単層コーティング)の施された後期のモデルが存在する。後期モデルにはフィルター枠の銘板にはドイツの国産コーティングであることを誇示するVマークが記されている


 
入手の経緯
eBayを介して2014年3月にドイツのプライベートセラーから落札購入した。オークションの記述は「フォーカスリング、絞りリングともにスムーズで軽快に回る。絞り羽に油シミはなく開閉はスムース。ガラスはクリーンでクリア。パーフェクトなコーティングでキズ、カビ、クモリはない」とのこと。eBayでの中古相場は85-100ユーロ前後である。スマートフォンの入札ソフトで寝ている間に自動入札したところ、翌日になって53ユーロ(+送料10ユーロ)で落札していた。安い!ラッキー。届いた僅かにホコリの混入と微かな汚れがみられる程度で実用充分な状態であった。
 
撮影テスト
Primagonの設計は3枚玉のトリプレットをレトロフォーカス化した構成である。マスターレンズがトリプレットなので当初は四隅の画質に不安を感じていたが、使い始めてみるとかなりの優等生であることがわかり正直驚いた。トリプレットならではの長所である中心解像力の高さとヌケの良さを受け継ぎながら、短所である四隅の画質を大幅に改善、口径比がやや暗いことと絞ったときに微かに周辺光量落ちがみられることを除けば、弱点らしい弱点は見当たらず開放から良く写るレンズとなっている。ボケも安定しておりグルグルボケや放射ボケなどトリプレットによくある像の乱れは目立たないレベルまで抑えられている。階調はたいへん軟らかく絞ってもなだらかなトーン描写を維持している。発色はややあっさりとしていて癖がなく、どことなく品のある写りは私の好みである。ただし、口径比をF4.5と控えめに設定しているあたりはMeyerらしくない堅実で大人しい設計と言わざるを得ない。

撮影機材
Camera: sony A7
Hood: 広角ラバーフード(49mm径用)
F4.5(開放), Sony A7(AWB): 淡い発色がとても美しく、軟調レンズの良さがとても良く出ている。中心解像力は開放でも良好でヌケも良い。グルグルボケもよく補正されている

F8, Sony A7(AWB): 絞っても階調はなだらかでシャドーにむかってトーンが丁寧に描かれている

F8, sony A7(AWB): 発色はあっさりとしている。癖などなくノーマルだ


F8, sony A7(AWB): 良く見ると若干の周辺光量落ちがみられる。気にしなければよい


F4.5(開放), Sony A7(AWB): グルグルボケは出てもこの程度・・・堪えている。前玉の凹レンズが荒治療ながらもよく奮闘している様子が伝わってくる