おしらせ


2010/04/02

Steinheil MACRO-QUINARON 35mm/F2.8
シュタインハイル マクログィナロン(マクロキナロン)


最大撮影倍率2.0を実現したマクロレンズ界のモンスター

MACRO-QUINARONはシュタインハイル社が1963年に発売したMACROシリーズ4製品の中で焦点距離が35mmと最も短いレトロフォーカス型広角レンズである。本ブログで過去に取り上げたAuto-D-QUINARONをマクロ撮影用に特化した製品となる。ヘリコイドの構造は全群繰り出し型の2段式で、1段目のヘリコイドをいっぱいに繰り出したときの鏡胴の長さは約10cm、2段目をいっぱいまで繰り出した最長の状態では約13.5cmにもなる。オールメタルのズシリと重い鏡胴で、重量は515gもある。

ワーキングディスタンス:約0.5cm, 重量(実測):515g, 焦点距離:35mm, 光学系: 5群7枚, 絞り値:F2.8-F22, フィルター径:54mm, 最大撮影倍率:2.0倍, 本品はEXAKTAマウント用,

本レンズの特徴は何と言っても最大撮影倍率が2.0倍もあるという点だ。マクロレンズの多くは0.5倍から1.0倍であり、これだけ高倍率のレンズは他に見当たらない。撮影倍率とは撮像面(フィルムやセンサー)に投影される被写体の像の大きさが、原寸の何倍であるのかをあらわしている。特に被写体に近づき最短撮影距離で接写撮影したときの倍率を最大撮影倍率とよび、このときに10mmの虫が10mmの大きさで撮像面に写るならば最大撮影倍率は1.0倍、20mmの大きさで写るならば2.0倍である。撮影倍率が大きい程、小さなものをより大きく拡大して撮影できることになる。
このレンズを用いて倍率2.0を実現させるには前玉を被写体に5mmの距離まで近づけなければならない。まるで一般道をレーシングカーで走行するかのような実用性の無さ・・・。嫌いではないが、一体どう使いこなせば良いというのだ。

全群繰り出し式の直進ヘリコイドであり2段目のヘリコイドまでをいっぱいに繰り出したときの鏡胴の長さは約13.5cmにもなる(写真右)。

★入手の経緯
本品は2009年10月にドイツ版eBayにて個人の出品者から452ユーロ(6万円弱)にて落札購入した。配送先を欧州に限定していたので掲示板を介して出品者に日本への配送を交渉したところOKとの返事をもらえた。オークションの解説には「光学系の状態は傑出している。傷・チリ・補修を要するダメージは無く、カビもない。2段のヘリコイドまで滑らかに回転する。マウント部は綺麗で傷はない。非常にレアなドイツ製品だ。これはプライベートな販売なので保障はつかない。」と書かれていた。入札額は締め切り数日前からじわじわ高騰しており、本品が注目度の高い商品であることを感じ取ることができた。私は300~400ユーロで落札したいと願っていたが、締め切り6時間前には既に325ユーロの値をつけていた。締め切り時刻は日本時間の午前5時15分で、5分前に365ユーロをつけ、そのまま安定していたので1分前に401ユーロで入札してみたがダメ。直ぐに451で再入札したがダメ。まさか競買相手は500なのかとビックリした。500も払う気はなく予算オーバーなので、10秒前に試しに476を投じてみたら452で落札できた。どうやら競買相手の設定額は451ユーロで私と同じ端数の手を使うようであった。記録には入札者数12人、入札件数28とあり、最後に競り合ったスナイパーは5日まえからちょこちょこ威嚇入札していた。
MACRO-QUINシリーズは元々かなりの高級品であることに加え、流通している個体数の少ないレアなレンズなので、中古相場は高値で安定している。市場に流通しているのは主にEXAKTAマウント用であり、M42マウント用はさらに稀少である。本品の国内中古店での相場はEXAKTAマウント用で10万円前後、海外での相場(eBay)は500-700㌦程度であろうと思われる。参考までに同じ時期にeBayに出品されていた姉妹品のMACRO-QUINAR 100mm(M42マウント用)は使用感のある品ではあったが560㌦(5万強)で落札されていた。また同じレンズの美品(エキザクタマウント用)が660㌦で売られていた。クラシックカメラ専門のオークションPHOTOGRAPHICA AUCTIONでは純正フード付きのMACRO-QUINARON(M42マウント用のMINT品)が660ユーロで落札されていた。

★試写テスト
本ブログで過去に取り上げたノーマル仕様のAUTO-D-QUINARONは開放絞り付近での柔らかい結像が持ち味であった。これに対してMACRO-QUINARONは光学系のチューニングが全く異なるようだ。球面収差の補正が過剰気味で開放絞りから極めてシャープに結像するが、この反動で後ボケは大変硬めである。撮影距離によってはアウトフォーカス部がガサガサと煩く、さらに5枚の絞り羽根が不自然なボケ味を演出してしまう。しかしながら、硬いボケ味は近接撮影になるほど軟化し(収差変動)、マクロ領域では程よいシャープネスとボケ味の柔らかさ滑らかさが同居した優れた描写に変化する。本レンズは通常の撮影距離での描写力をやや犠牲にする代わりに、接写撮影時に高い描写力を発揮するよう設計されているようだ。

以下、本レンズの描写力をまとめると、

●ガラス面のコーティングが単層なので逆光には弱いが、フレアの発生さえ防止すればコントラストは充分に高い。レベル曲線は端部まで平坦で安定している
●開放絞りからシャープに結像する
●発色は癖のない素直で自然な仕上がりだ。鮮やかな色ノリで、難しい中間色に対しても高い再現性がある。WEB上ではメタリック系の色の表現力が素晴らしいというユーザーレポートを目にする
●前ボケは柔らかく後ボケはかなり硬い。絞り羽根の構成枚数が僅か5枚のため開口部が5角形になる。これが原因で中遠景の撮影の際には滑らかさを欠いた不自然なボケ味になる事がある
●近接撮影では諸収差がしっかり補正されており画像周辺部まで歪みや乱れの少ない均質な画質得られる。ボケ味も柔らかく滑らかである。これに対して中遠景になると非点収差らしい結像の流れ(グルグルとした回転)が見える時がある

まさにマクロ撮影のために生まれてきたレンズである。近接撮影で最高の描写力を発揮できるようチューニングされている。以下、JPEG撮りっぱなしの作例を示す。レンズ本来の能力を知るためにコントラストや色調など一切の補正は行っていない。

上段はF4における屋内での撮影結果/下段は上段の写真のレベル曲線(輝度分布)。このとおり輝度成分が幅広い領域にわたって充実している。コントラストが高いことがわかる。発色は自然だ

F5.6 難しい光沢感のある紫色。多くのレンズではもっと淡い色になってしまうが、MACRO-QUINARONはほぼ完璧に再現している。メタリック感の表現も実に素晴らしい

★ボケ味についてのテスト結果(通常の撮影倍率)
本レンズは中遠景の撮影時においてボケ味に弱点を持つ。それを再現したテスト撮影の結果をお見せする。
F4  皿の輪郭に注目すると前ボケは柔らかく後ボケは硬い事がわかる
F2.8 肩のラインやテーブルの境界線、紺色のエプロンの水玉模様などに注目すると後ボケが硬いことがよくわかる

F2.8 これに対して前ボケは柔らかく、瓶の輪郭部がフワッと滲むように見える
F5.6 これくらいまで絞ると絞り羽根の開口部の形が5角形になり、点光源を撮影すると5角形状にボケる。半逆光なので若干フレアが発生気味で、暗部が持ち上がりコントラストが低下しているが、おかげで黒潰れが回避され中間階調域が充実した目に優しい仕上がりになっている

F2.8 このとおり通常の撮影距離ではボケ味が極めて硬く、特にハイライトのボケ味が不自然になる
F4 これくらい遠い撮影距離ではボケ味に滑らかさなくガサガサと煩い。非点収差がでているのかな?結像が流れグルグルと回っているように見える

★高倍率マクロ領域での描写
通常の距離で撮影をおこなう際の描写の特徴は、シャープな結像と極めて硬いボケ味であった。一方、高い倍率にて近接撮影をおこなう際には球面収差が増大するためか結像がややソフトになり、アウトフォーカス部も柔らかく程よい結像具合になる。他の収差はしっかりと補正されており、中距離の撮影時に顕著化した非点収差(結像の流れやグルグルボケ)は全く表れない。画像周辺部まで歪みや乱れの少ない均質な画質が得られる。

F5.6 近接撮影では諸収差の補整は良好。歪みが出たりグルグルと結像が流れるようなことは全くない。アウトフォーカス部の結像もよくととのっている。ボケ味はだいぶ柔らかくなっている
F5.6 ここまで近接になるとボケ味は柔らかく滑らか
F4 ピント面の程よいシャープネスとボケの柔らかさが共存した高い描写力である
F5.6 こちらも周辺部まで良く整っている。花びらの繊細な色彩が見事に表現されている

★エクステンションチューブを付けて超高倍率撮影を行う
キターーーー。規格外倍率での撮影だ。今回は新宿の中古カメラ市場で倍率を最大で3.5倍化できるマクロエクステンションチューブを入手した。チューブをすべて継ぎ足し3.5倍化したときの最大撮影倍率は約7倍である。撮影倍率を強制的に高め、どこまで画質を維持できるのかテストしてみた。
Ihageeエキザクタマウント用マクロエクステンションチューブを接続してみた。チューブを全て用いると撮影倍率は最大7倍程度まで高められる


撮影対象は上段の左側に示したボールペンの先端である。2段目のヘリコイドをいっぱいに繰り出しレンズ単体の最大倍率(x2.0)で撮影した(上段・右)。ピントの芯をつかむことができ、ペン先のボールをしっかり解像している。次にマクロエクステンションチューブを付け倍率を約3倍に高めてみた(下段・左)。球面収差が急激に増大しておりピント面の解像感が落ちてきた。被写界深度はかなり狭いが、何とかピントの芯は出ている。このあたりが画質的には限界に思える。最後にチューブを継ぎ足し倍率4倍で撮影した。ペンの先が前玉に接触してしまうすれすれでの撮影結果だが、ピントの芯を得ることができなかった。これ以上倍率をあげても無駄であると判断し、継ぎ足すのをやめた。
レトロフォーカス型の光学系を持つMACRO-QUINONにエクステンションチューブを装着し撮影したが、倍率を2倍化した段階で既に画質の低下が著しく、収差の爆発的な増大には対応できていないことがわかった。ちなみにチューブを全て連結し倍率を7倍まで高めてみたが全く結像しなかった。これに対して、ガウス型の光学系を持つMACRO-QUINON(55/1.9)では、マクロチューブを用いて最大撮影倍率を2倍化しても、そこそこシャープな結像を保っていた(前回ブログ参照)。このあたりの耐性の差はガウス型の光学系によるアドバンテージなのであろうか。

★撮影機材:Steinheil MACRO-QUINARON 35mm/F2.8 + EOS Kiss x3 + Steinheil Metal Hood(54mm径)

このレンズ、やはり私には使いこなせない。もっと写真の腕を磨かなくては、このレンズの設計者に申しわけない。

2010/03/29

Steinheil MACRO-QUINON 55mm/F1.9 (M42)
シュタインハイル マクログィノン(マクロキノン)



シュタインハイル社といえば19世紀のドイツ写真工業の中でひときわ大きな存在感をみせたミュンヘンに拠点を置く光学機器メーカーです[1]。創業は1855年と古く、物理学者のカール・アウグスト・フォン・シュタインハイル(Carl August von Steinheil, 1801-1870)という人物が息子のフーゴ・アドルフ・シュタインハイル(Hugo Adolph Steinheil, 1832-1893)とミュンヘンに会社を設立し事業をスタートさせたのが始まりです。息子のアドルフは光学と天文学を専門とする技術者であるとともに、収差研究の第一人者ザイデルの友人でもありました。こうした好条件から彼はレンズの設計法を早い段階で手中に収め、天体観測用の望遠鏡や顕微鏡など計測科学の分野に数多くの光学製品を供給します。アドルフがザイデルの協力のもと1866年に開発した写真用レンズのアプラナートは史上初めて4大収差を補正した画期的なレンズでした。レンズの設計から製造まで一貫生産のできるシュタインハイル社は、19世紀のドイツ光学産業の中で名実ともに大きな存在感を示すようになります。

散り際の鮮やかさ、
シュタインハイル最後の輝き
Steinheil München Macro-Quinon 55mm F1.9(Rev.2)
アドルフの没後から70年の歳月を経た1960年代、カメラの潮流はレンジファインダー機から一眼レフカメラへと大きく転換しようとしていました。シュタインハイル社のレンズ製造本数は戦後の復興景気の波に乗り1955年に年産25万本の大台でピークを迎えますが、ここから僅か5年の間に年産8万本まで落ち込んでいました。会社の存続をかけ経営戦略の見直しを迫られていた同社は、当時の一眼レフカメラの急速な普及がマクロ撮影用レンズの分野に大きな商機をもたらすと予想し、経営を立て直すための大勝負に打って出ます。1963年に同社はフラッグシップであるQuinシリーズの全ラインナップ(広角35mmから望遠135mmまで4製品)にマクロ機能を強化した別バージョンを展開[2]、これから巻き起こるであろうブームの到来に社運をかけたのです。しかも、レンズは2段ヘリコイドを組み込んだ超高倍率で、性能面でも他社の追随を許さない特別仕様になっていました。当時は勿論ですが、今に至るまでマクロ撮影用レンズをここまでアグレッシブに取りそろえたメーカーは他にはありませんでした。しかし、同社が供給した高価なマクロレンズに対する市場の反応は鈍く、マクロ撮影のブームも大きなものにはなりませんでした。1966年に同社のレンズ生産量(年産)は一時1万本を大きく下回る戦後最低水準まで落ち込みます。その後1970年まで1万本強の水準に回復しますが、同社は深刻な経営難に陥ります[1]。
今回再び紹介するのはドイツの老舗光学機器メーカーのシュタインハイル社が1963年に発売したマクロ撮影専用レンズのマクロ・ヴィノン(MACRO-Quinon)55mm F1.9です[2]。同社のマクロQuinシリーズには本レンズ以外にMacro-Quinaron 35mm, Macro-Quinar 100mm, Macro-teke-Quinar 135mmなどがあり、これらは同じ焦点距離を持つポートレート用のQuinシリーズと並行して市場供給されました。レンズ名の由来はラテン語の「5つの」を意味するQuinarius(ドイツ語のQuin)です。レンズの構成枚数にかけた名称ならばQuinarとMacro-Quinarは確かに5枚玉ですが、本レンズは6枚玉なのでつじつまが合いません。もしかしたら「ザイデルの5収差」にかけているのかもしれません。レンズの設計構成は下図に示すような4群6枚のガウスタイプで、ポートレート用のAuto-Quinon 55mm F1.9と同一構成のまま近接域で最高の性能が出せるよう、撮影距離に対する収差変動を予め考慮に入れた過剰気味の収差設計になっていました。鏡胴の造りは見事としか言い様のない素晴らしいレベルです。老舗光学メーカーの根性が入ったレンズといえます。
Steinheil Macro-Quinonの構成図:文献[2]に掲載されているものをトレーススケッチした見取り図。設計構成は4群6枚のガウスタイプ。前群と後群のサイズに大きな差がある
レンズの特徴はマクロレンズとしては極めて明るい口径比F1.9を実現していること、そして最大撮影倍率が1.4倍もあることです。ここまで高い撮影倍率を実現させるには、ヘリコドによる繰り出し量がかなり大きなものとなり、普通に考えれば困難ですが、シュタインハイル社は2段ヘリコイドという機械的にかなり凝った仕掛けをもつ新しい機構を導入することで、技術的なハードルを乗り越えています。下の写真にはヘリコイドを繰り出したときの様子を段階的に提示しました。一段目のヘリコイドを目一杯まで繰り出したのが左の写真ですが、ここまでくると内部でロックが外れ、二段目のヘリコイドが繰り出せるようになります。二段目のヘリコイドを見一杯まで繰り出したのが右の写真ですが、この状態で撮影倍率は1.4倍に達しています。光学系をこれだけ繰り出した状態でも偏芯を起こさず光学性能を一定水準に保てるわけですから、レンズの製造工程には非常に高い工作精度や精密な組み立て、品質管理が要求されたに違いありません。マクロ・ヴィノンは当時の技術の粋を集めて作られた最高のマクロ撮影用レンズだったのです。

参考文献
[1]STEINHEIL MUNCHNER OPTIK MIT TRADITION
[2]公式カタログ:MACRO OBJECTIVE für EXAKTA, STEINHEIL OPTIK (1966)

左は1段目のヘリコイドを目いっぱい繰り出した状態です。このとき内部でロックがはずれ2段目のヘリコイドが出せるようになります。2段目を目いっぱい出した状態(右)で撮影倍率は1.4に達しています




入手の経緯
本品は2009年の11月にeBayを介して米国LAのカメラ業者から僅か375㌦の即決価格(送料込みの総額は400㌦)にて落札購入しました。出品者は誤ってレンズ名をマクロ・テレキナーと記して販売していたのです。しかも、レンズは希少価値の極めて高いM42マウント版です。中古市場に出回っている製品個体は殆どがEXAKTAマウントのモデルですから、M42マウントを実際に目にするのはこの時が初めてでした。これはラッキーと思い二度と訪れないチャンスを逃がすまいと「即決購入(Buy it now)」のボタンを押したところ「あなたがこの商品のページを表示している間に誰か他のバイヤーが購入しようとしている。その購入者は現在、価格交渉中なので早く支払った人のものになる(和訳)」とeBayのエージェントが緊急性を示してきました。一刻を争う事態なので、即決価格で落札しサッサと支払ってしまいました。購入当時の国内相場はexaktaマウントのモデルで10万円、eBayでは700㌦前後です。M42マウント用ともなればもっと高いでしょう。商品の解説は「長い間人気のマクロテレキナー。カビなし、へこみ傷もなし。僅かにチリが混入しているが清掃すれば除去は容易だ。レンズは凄く凄く良い状態で8.5/10ポイント。フードと純正キャップ、ケースが付く」とのこと。解説文で「凄く」を連呼していたので出品者の商品に対する自信を感じました。しかし、届いた品は傷やクモリなど大きな問題こそないものの、レンズ内にチリやゴミの混入が激しく、ホコリまみれの空き家みたいに酷い状態。清掃しなければ撮影はできないため、自宅近くの専門店に持ち込んでオーバーホールしてもらうことになったのでした。
オーバーホールから帰ってきたレンズはクリーンでクリアな状態に蘇りました。レンズを綺麗にして初めて分かったことですが、前玉の中央に点状の小さな打撲傷がみつかりました。レンズというものは清掃して綺麗になると、逆に様々な粗が見えるようになります。もちろん、写りには全く関係のないものです。
このレンズは6年間所持し、ブログ用の作例を撮った後に手放しました。私はコレクターではありませんので、ブログで使用したレンズは基本的に手放します。今所持しているレンズを絶滅させブログをやめるつもりです。レンズはeBayにて入手額400ドルのスタート価格で出品しましたが入札が殺到、途中で「いくらなら売るつもりだ?」とか、「1000ドルで売ってくれないか」など直接交渉のオファーが絶えない大変な人気ぶりでしたが、最後は1300ドルの高値で落札され、次のオーナーの元に旅立ちました。
重量(実測)494g, マウント形状 M42, フィルター径 54mm, 最大撮影倍率1.4倍(ワーキングディスタンス:4cm), 絞り羽 5枚, 絞り値 F1.9-F22, 光学系 4群6枚ダブルガウス型, 2段ヘリコイド仕様, M42, Exakta, Nikon Fマウントが存在する。シリアル番号から1965年前後に製造された製品であることがわかる


 
シュタインハイルのマクロシリーズ純正フード。2段構成になっており、1段目で35mmのQuinaron, 2段で55mmのQuinonに対応する。フィルター径(内径)は54mmの特殊な規格である

撮影テスト
マクロ撮影用レンズとは言っても口径比がこれだけ明るければポートレート用にも使用できるし、風景撮影にも対応できる広い画角をもっています。画質はやはり近接域でも十分に安定しており、開放からスッキリとヌケがよく解像力やコントラストは十分です。遠方撮影時にもフレアは出ず、とてもよく写るレンズです。
背後のボケはマクロ撮影に特化したことによる反動のため、ポートレート域で硬く、ザワザワと形をとどめた特徴のあるボケ味になっています。一方でターゲットとなる近接域では柔らかい綺麗な拡散に変わります。前ボケは距離によらず柔らかく、きれいに拡散しています。発色はとてもよく、現代のデジカメで用いても色鮮やかな写真が撮れます。さすがに、手持ちで近接域を開放F1.9で狙うのは被写界深度が薄すぎるため困難です。近接撮影の場合は三脚を立てて使うことになります。
F5.6, sony A7(AWB) これは、素晴らしくよく写るレンズである



F5.6, sony A7(AWB) 発色は良好だ




F5.6, eos kiss x3(AWB)三脚使用 : これだけ寄ってこの解像力はたいしたもの。フローティング機構のない古典的なマクロレンズとは言え、性能の高さには驚かされる



F5.6, sony A7(AWB)





F8, eos kiss x3 (AWB) 解像力、コントラストは十分






F5.6, sony A7(AWB)


続けて銀塩撮影による結果

F8, 銀塩撮影(Fujifilm C200カラーネガ)

F4, 銀塩撮影(Kodak Ultramax 400カラーネガ)






F4, 銀塩撮影(Kodak Ultramax 400): 
F5.6,銀塩撮影(Kodak Ultramax 400)
F1.9(開放), 銀塩撮影(Kodak UltraMax 400)
F4, 銀塩撮影(Rollei Retro80S モノクロネガ)
F4, 銀塩撮影(Rollei Retro80S モノクロネガ)

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