おしらせ


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2018/10/22

試写記録:Schneider Kreuznach REOMAR 45mm F2.8 改Leica-L

F2.8(開放)sosny A7R2(WB:auto)  開放ではピント部全体を薄いフレアが纏い、柔らかい描写傾向となります

F4  sony A7R2(WB:auto) 1段絞ればフレアは消え、スッキリとヌケがよく、コントラストは素晴らしいレベルで





F5.6 sony A7R2(WB:日光)  やや青みののったクールトーンな色味で、美しく仕上がります

F2.8(開放) sony A7R2(WB:日光) 再び開放。やはりピント部を薄いベールの様なフレアを纏いますが、中央はしっかりと解像しており線の細い繊細な描写です

F4  sony A7R2(WB:日光)もう一度絞ったショット。シャープでスッキリと写るレンズです


Camera SONY A7R2
Lens Schneider Kreuznach REOMAR 45mm F2.8







知人に代わってオークションで購入(代行落札)したレンズが数日間だけ我が家に転がり込んできましたので、軽く試写結果をリポートしてみたいともいます。ドイツのSchneider(シュナイダー)社がKodak(コダック)社のRetinette IA/IBというレンジファインダーカメラに搭載する固定式レンズとして1958年頃から1966年まで供給したReomar(レオマー)です。Reomarにはこれ以前の旧式のRetinetteに搭載されたモデルもありますが、開放F値がF4.5やF3.5とやや暗かったり、焦点距離が50mmであったりと、少し仕様が異なります。
今回紹介するReomar(後期型)にはSchneider社製の個体に加え、Rodenstock(ローデンストック)社製の個体があります。大衆機のRetinettiがヒットしたことで生産供給が追い付かず、Rodenstock社にOEM供給を依頼したためだという話を誰かに教えてもらったことがありますが、確かな情報ではありません。どなたか信ぴょう性の高い情報をお持ちの方は教えていただけると幸いです。


レンズのデザインが面白く、シャッターの部分に人物の上半身のイラストや集合写真、風景などが刻まれています。一体何だろうとよく見てみると、何とシャッターユニットにヘリコイドを内蔵しておりピント合わせができます。レンズシャッターなので、これにはビックリ。レンズ構成は3群3枚のトリプレットです。
絞り羽 5枚構成, 絞り指標 F2.8-F22,  設計 3群3枚(トリプレット), フィルター径 29.5mm, PRONTOR 250Sシャターに搭載, ヘリコイド内蔵



オークションに出品されていた段階で既にカメラから取り出され、ライカLマウントに改造されていましたので、アダプターを介してSONY A7R2で使用することにしました。スッキリとヌケのよいクリアな写りで、開放からコントラストの高いレンズです。細部に目を向けると写真の中央は開放で線の細い繊細な描写となり、滲みをまといながらもしっかりと解像しています。1段絞れば滲みは消えシャープネスが向上、カリッとした解像感の強い仕上がりとなります。カラーバランスはやや青みが強くなる傾向があり、白が引き立つクールトーンな描写です。クリアでヌケの良い性質と相まって、とても清楚で品のある味付けになります。

2017/07/09

Schneider-Kreuznach XENOGON (Robot Royal 36) 35mm F2.8



二兎追うものは一兎をも得ず
潔く四隅を捨て中央を活かしたクセノゴン
Schneider-Kreuznach XENOGON (Robot Royal 36) 35mm F2.8
画質のことについて誰も口にしないレンズが、このロボット版クセノゴン(Xenogon)である。レンズについて取り上げた記事は文献や国内外のウェブサイトでチラホラ目にするが、写真作例もなければ描写に対する解説もみあたらない。これはもう自分の目で確かめるしかないと使ってみたところ、その理由は概ね分かった。写真の中央は目を疑いたくなるほど高画質だが、ある画角を境に画質が急変し、周辺にむかって転がり落ちている。一枚の写真の中での画質的なギャップ(不均一性)が大きく、杓子定規で評価することができないのである。もう少しバランスをとるという選択もあったに違いないが、シュナイダー社の製品規格をクリアすることができなかったのであろう。四隅と中央をバランスさせた中庸なレンズを目指すことが唯一の正解ではない。四隅を捨ててこそ浮かぶ瀬もあるということなのだ。
さて、今回取り上げるクセノゴンのはドイツのシュナイダー社(現Schneider Optics)が一眼レフカメラのロボット・ロイヤル36 (Robot Royal 36, 1955-1976年)に搭載する広角レンズとして1955年から1960年代前半まで供給した製品である。時代的にはコマ収差の補正に苦悩しながらも、これから発展期を迎えようとしていたレトロフォーカスタイプの第一世代に属している。クセノゴンには本品よりも前の1950年代初頭に作られたライカ版クセノゴン35mmf2.8もあるが、こちらの設計構成は本品とは異なるガウスタイプ(4群6枚)で、個体数もずいぶんと多い。
レンズの設計は公開されていないものの、光の反射面からは明らかに5群7枚構成であることがわかる。鏡胴は真鍮製クロームメッキ仕上げで造りがよく、大きさの割に重量があるので、手に取るとズシリとした感触が伝わってくるが、そうした武骨さを感じさせないカラフルな配色は、いかにもロボット用レンズらしい洒落たデザインで、手にする者を魅了してやまない。レンズの製造個体数は100本と極端に少ないため、コレクターズアイテムとなっている[参考文献:Großes Fabrikationsbuch,  Schneider-Kreuznach band I-II, Hartmut Thiele 2008]。
Schneider-Kreuznach Xenogon 35mm F2.8(Robot Royal 36): 重量(実測)292g,フィルター径 58mm, 絞り F2.8-F22, 絞り羽枚数 8枚, 最短撮影距離2.5ft(76cm), Robot Royal 36マウント(取り付け部はM30ネジ,フランジバックは31mm), 設計構成 5群7枚レトロフォーカス型

ソニーEマウントで使用するアダプター
クセノゴンはフルサイズセンサーをカバーできるレンズである。フランジバックは31mmなので、デジカメで用いるにはアダプターを介してLeicaまたはSONY Eマウントのフルサイズ機で使用するのがベストマッチであろう。Robot Royal 36のM30スクリューマウントをSONY Eマウントに変換するアダプターとしては日本の三晃精機が唯一の市販品を供給していたが、残念なことにここ最近になって受注を休止しており、アダプターを手に入れるルートがない。これには困る人も多いと思うので、本記事では市販で手に入る部品を使ったアダプターの自作方法を公開しておく。必要な部品は以下の通り。
  • Robot Lens(M30) to M42 step up ring adapter  16ドル(eBay)
  • High-Quality M42 Helicoid(12-17mm) 38ドル(eBay)
  • M42-sony E(NEX) mount Slim adapter(1mm厚)1.5ドル(eBay)
これらを組み合わせると最短13mm丈のヘリコイドアダプターになり、SONY Eマウント(フランジバック18mm)のカメラに装着するとRobot Royal 36マウントのフランジバック31mmにピタリとハマる。1mmも余裕がないのが不安点なので、使用したM42ヘリコイドはこのクラスでは少し値の張るものを採用してある。安物(25ドル位からある)を選ぶと精度が曖昧なため、無限遠のピントを拾えない可能性がでてくるためだ。ダブルヘリコイドを同時に繰り出す時の最短撮影距離は約20cmと短く、近接での草花の撮影にも難なく対応できる。





入手の経緯
今回のクセノゴンは知人からお借りしたと言ったらよいのか、実のところは使ってくれと一方的に手渡されたレンズだ。はじめアダプターをどうしたらよいのかと相談され、前述のようなヘリコイドアダプターのアイデアを提案したところ、気づいたらレンズが手元にあり、ブログで書いてもよいぞと・・・。まぁそんな調子で我が家に転がり込んできた迷える白兎ちゃんなのであるが、やはりマウントアダプターの問題からか市場では人気がなく、製造本数が100本と少ないにもかかわらずeBayには常時何本か出回っている。取引相場は700ドル~800ドル程度である。





撮影テスト
冒頭でも述べたが中心解像力が高く、非常にシャープでスッキリとヌケが良いなど一見すると非常に高性能なレンズだが、開放では写真の四隅においてモヤモヤとしたフレア(コマフレア)が多くみられ、解像力も低い。写真の中央と四隅の画質的なギャップが大きく、ある画角を境に画質の変化が急激に進むため、高画質な領域と収差の豊富な領域の境界部がハッキリと区別できるのが、このレンズの開放における描写の特徴である。ポートレートや近接撮影で使う限りは四隅の大部分がアウトフォーカス部に入ってしまうので、至ってシャープで高性能なレンズという印象を抱くが、風景などの引き画になると開放では収差が顕著に目立つようになる。一段絞れば良像域は四隅に向かって広がり、二段絞ればメインの被写体を四隅で捉えても、力不足を感じることは無い。色ノリがよく階調描写は適度にマイルドで、とても使いやすいレンズだ。

F2.8(開放), SONY A7RII(WB:晴天)   中心部は解像力があり、シャープネスも充分。このようなポートレート域では四隅の収差が目立たないので、至って高性能なレンズにみえる。ちなみに現場で撮影中の私を偶然にも知人がBausch & Lomb Super Baltar 75mm F2.3+sony A7で撮影していた(こちら)。

F4, SONY A7RII(WB:晴天)   上の男の子はこれを覗いていた。発色のいいレンズだ

F2.8(開放), sony A7RII(WB:曇り)  少し引いて中距離を撮ると途端に四隅での収差が目立ち始める。中心部は依然として解像力、シャープネスとも素晴らしい。中心を拡大クロップした写真を下に示そう
ひとつ前の写真の中心部を大きく拡大したもの。緻密でシャープ、高画質だ
F2.8(開放), sony A7(S.Shiojima) こういう撮り方が性能を余すところなく引き出せる一番オイシイ使い方になる

F8, sony A7Rii(WB:晴天) このように隅にメインの被写体を入れる時には、F5.6以上に絞って撮る必要がある


F8, SONY A7RII(WB:日陰) 逆光でもハレーションは出にくく、コントラストや発色はとてもいい
F5.6 SONY A7RII(WB:AWB)

F2.8(開放), SONY A7RII(WB:auto, iso6400) こういう被写体なら開放でもOKだ

四隅の開放描写を見ておく
1950年代に設計されたレトロフォーカス型レンズを評価するとき、私はいつもCarl Zeiss Jenaのフレクトゴン(Flektogon) 35mmを基準に考えている。クセノゴンはどうかと言えば、中心部は明らかにフレクトゴンよりも高解像でシャープであるが、四隅はフレクトゴンよりもフレアが激しく、解像力も低い。クセノゴンはポートレートや近接撮影など中央を使う写真には向いているレンズだが、風景などの引き画でメインの被写体を四隅に据える場合には、F5.6よりも深く絞って使う必要がある。粗さがしをするのは性に合わないが記事のタイトルがああなだけに、やはり、どれ程のものかを提示しておこう。
上段F5.6/ 下段F2.8(開放) SONY A7Rii(WB:晴天) 開放では四隅の画質がかなり厳しいことがわかる

2015/09/25

Schneider Kreuznach Curatgon 35mm F2.8 (M42/ Exakta)* Rev.2










初期のレトロフォーカス型広角レンズはテッサーやトリプレットなど既存のレンズ構成の前方に大きな凹メニスカスを据える単純な設計形態であったが、収差が多く、特にコマフレアの抑制に大きな課題を抱えていた。これを改善させる方法がニコンの脇本善司氏によるNIKKOR-H Auto 2.8cm F3.5(1960年登場)の開発時に発見され、後群のレンズ配置を正正負正から正負正正に入れ替えるだけで劇的な改善がみられることが明らかになった[文献1]。この発見による波及効果は大きく、1960年代中期になると各社一斉にこの配置を導入しシャープネスやコントラストを向上させた第2世代のレトロフォーカス型レンズを発売している[文献2]。今回取り上げるSchneider(シュナイダー) 社のCurtagon(クルタゴン) 35mmにも前期モデルと後期モデルの構成の違いに第2世代への変遷がみられる。

コントラストとヌケの良さを向上させた
シュナイダー社の第2世代レトロフォーカス型レンズ
Curtagon (2nd version) 35mm F2.8
Curtagonは旧西ドイツのSchneider社が1950年代後期から市場投入した一眼レフカメラ用のレトロフォーカス型広角レンズである。同社の広角レンズとしてはライカのレンジファインダー機にOEM供給されたLeitz Super-Angulon (スーパー・アンギュロン)やXenogon (クセノゴン)とXenagon (クセナゴン)が有名であるが、このCurtagonも性能には定評があり、特に今回紹介する焦点距離35mmのモデルは高級一眼レフカメラとして名高いPignons(ピニオン)社のAlpaflex(アルパフレックス)に採用された実績をもつ。スチル用のレトロフォーカス型レンズとしてはフランスのAngenieux(アンジェニュー)が第1世代を象徴するパイオニアでありコマフレアを纏う繊細な開放描写を特徴としているが、一方で今回取り上げるCurtagon(第2世代)は開放からスッキリとヌケの良い描写で、初代Curtagon(ゼブラ柄)と比べてもシャープネスやコントラストが明らかに向上している。
鏡胴は同じ35mm F2.8の他社製品より一回り小さいうえ重量は他社製品と同程度なので、手にするとズシリと重くギッシリ詰まっているという印象をうける。クルタゴンというブランド名の由来はラテン語のCURTO(短くする)とギリシャ語系接尾語のGON(角)の合成である。いかにも広角レンズらしい名称で響きも可愛らしい。
Curtagon 35mm F2.8の設計は上図に示すようなレトロフォーカス型と呼ばれるもので、光学系の最前部に大きな凹レンズを据えているのが特徴である。これによりバックフォーカスを延長させミラーの可動域を確保し、一眼レフカメラに適合できるようになっている。また凹レンズの後方には広い空気間隔が設けられているのも特徴で、この空気間隔には広角レンズで問題となる像の歪み(樽型歪曲)を軽減させる効果がある。上図のいちばん左は1950年代後期に発売された第一世代のゼブラ柄モデルでレンズ構成は5群5枚となっている[文献3]。中央はゼブラ柄のアルパフレックス用であるがレンズ構成は1枚多い5群6枚となっている[文献4]。アルパは高級カメラなので、このモデルのみ差別化がはかられたのであろう。上図の右は1965年のモデルチェンジから登場した第2世代の設計である[文献5]。レンズ構成は6群6枚へと変更され、これ以降はアルパ用であるかを問わず全てのモデルで共通の設計となっている。旧モデルとの大きな違いは後群の凹レンズの直ぐ後ろに正の凸レンズが一枚加わり、後側4枚の並びが正正負正から正負正正に変更された点である。この並び順はレトロフォーカス型レンズにおいてコマフレアを減少させる特効薬として導入された新配列であり、これ以降のレトロフォーカスレンズの多くがこれと同等の配列を採用している[文献1,2]。なお、これ以降の後継製品(Electric Cultagon等)およびレチナ用の設計構成については資料がないため詳細は不明である。
製品ラインナップ
Curtagonが登場したのは1950年代後期からで、35mmフォーマット用と中判フォーマット用の2種のモデルが存在している。35mmフォーマット用としてはエキザクタ, M42, コダック・レチナ(DKL), アルパフレックスなど少なくとも4種類のカメラに対応しており、28mm F4, 35mm F2.8, 35mm F4の3種類のバージョンがモデルチェンジを繰り返しながら1980年代前半まで生産されていた。また、シフト機構を備えたPA(PC)-Curtagon 35mm F4も1960年代後期から追加投入され、ライカR、アルパフレックス、コンタレックス、M42など少なくとも4種類のカメラに対応している。一方、中判カメラ用としてはCurtagon 60mm F3.5があり、Exakta 66用とRolleiflex6000シリーズ用が1980年代から2000年頃まで生産された。
初期のモデルはコダック・レチナ用を除き全モデルがゼブラ柄のデザインで1950年代後期に登場、1965年頃まで市場供給されていた。1965年になると一斉にモデルチェンジがおこなわれ、デザインと設計が一新、レチナを除く全モデルが今回のブログエントリーで取り上げる新しいデザインへと変更されている。カラーバリエーションはブラックとブラウン/真鍮ゴールドの2種類が用意された。またシフト機構を持つPA Curtagon 35mm F4が新製品としてラインナップに加わり、少なくともライカR, コンタレックス, アルパフレックスに対応していた。レンズ名の前方につく"PA"とはPerspective  Adjustment (パースペクティブ調整)の意味である[文献5]。1970年になると鏡胴のデザインが若干見直され、ヘリコイドリングが従来の窄んだ形状からストレートな形状に変更されている。おそらく窄んだ形状は加工が難しく製造コストがかかるためであろう。1972年になると再びモデルチェンジがおこなわれ、ブラックカラーのスッキリとした現代風のデザインでマウント部に電子接点をもつElectric CurtgonがM42マウントで登場、またPA-Curtagonの後継製品としてPC-Curtagon(Leica R用)も登場している。さらに1970年代後半にはブラックカラーでよりシンプルな鏡胴デザインとなったC-Curtagonが登場している。C-Curtagonは35mm判としての最後のモデルであり、1980年代前半まで生産されていた。
Curtagon(2ndバージョン): 重量(実測)210g,  絞り F2.8-F22, 最短撮影距離 30cm, フィルター径 49mm, 構成 6群6枚レトロフォーカス型(第2世代),  発売は1965年頃, 対応マウントはExakta/M42/Alpa (Retina DKL用は詳細不明)

参考文献
文献1 ニッコール千夜一夜物語 第12夜 Nikon-H 2.8cm F3.5 大下孝一
文献2 「写真レンズの基礎と発展」小倉敏布 朝日ソノラマ (P174に記載)
文献3 シュナイダー公式レンズカタログ: Schneider Edixa-Objective
文献4 アルパフレックス公式レンズカタログ
文献5 Australian Photography Nov. 1967, P28-P32

入手の経緯
ゴールドカラーのモデルは2010年3月にeBayを介してポーランドの大手中古カメラ業者から値切り交渉の末に総額160㌦で入手した。商品の状態に対するセラーの評価はMINT-(美品に近い状態)とのことであったが、届いた品はヘリコイドリングにガタがあり、内部のガラスにも描写には影響のないレベルであるがメンテ傷があった。返品しようか迷ったが、限定カラーのレアなレンズなので悩んだ末にキープすることにした。その後、ヘリコイドリングのガタはどうにか自分で修理できた。
ブラックカラーのモデルは2014年6月に都内のカメラ屋にてジャンク品として売られていたものを6000円で手に入れた。絞りが動かずガラスにはクモリがみられたが、分解して清掃したところクリアになった。分解したついでに光学系の構成を正しく把握することができた。絞りに関しては内部で制御棒が根元から折れていることが判明、別途入手した拡張ばねを取り付け自分で改善させた。絞りの開閉は快調である。
現在のeBayでの中古相場はExaktaマウントのモデルが200ドル弱、M42マウントのモデルでは300ドル程度である。
 
デジタル撮影
1950年代に製造された第1世代のレトロフォーカス型レンズはコマフレアが出やすくコントラストが低いうえ、逆光になると激しいゴーストやシャワーのようなハレーションに見舞われるのが特徴であった。それに比べ、本レンズは描写性能が格段に進歩し現代的になっている。開放からシャープでスッキリとヌケがよく、発色は鮮やかでコントラストも良好である。コマは少ないとは言えないが良く抑えられており、むしろ少しコマフレアを残しているためか後ボケが綺麗で柔らかいボケ味となっている。レトロフォーカス型レンズは前玉に据えた負の凹レンズの作用によりグルグルボケや放射ボケなどがあまり見られず、周辺光量落ちも少ないなど四隅の画質に安定感のあるものが多い。この点についてはCurtagonも同じであるが、一方で少し気になったのは階調がコンディションに左右されやすく不安定なところである。屋外での逆光撮影時にはこれが特に顕著で、黒潰れや白とびを起こしやすいなど露出制御のみではコントロールしきれないことがよくあった。中でも気になったのは緑の階調で、照度が高いとハイライト側の階調に粘りがなく黄色方向に白とびを起こしやすい。シュナイダーのレンズにはこの手の白とび(黄色とび)が時々みられる。この場合、デジカメの画像処理エンジンはシアンが不足していると判断し加色するため、全体に青味がかったような撮影結果になることがしばしばある。これを抑えるため露出を少しアンダーに引っ張ると、本レンズの場合、今度はシャドー部がストンと黒潰れを起こしてしまうのだ。このようにCurtagonは階調描写のコントロールが難しく、真夏日に用いるとうまい着地点を見つけるのが時々困難になる。逆に言えばこの不安定さがCurtagonらしいエネルギッシュな描写表現につながっているように思える。解像力はレトロフォーカス型レンズ相応である。
Photo 0, F2.8(開放), Sony A7(AWB): 

Photo 1, F5.6, Sony A7(AWB):


Photo 2, F8, Sony A7(AWB): 


Photo 3, F8, Sony A7(AWB)

Photo 4, F5.6, Sony A7(AWB): 

Photo 5, F5.6, Sony A7(AWB):

Photo 6, F2.8(開放), Sony A7(AWB): 
Photo 7, F8, Sony A7(AWB):
Photo 8, F11, Sony A7(AWB): 

Photo 9, F8, Sony A7(AWB): 

Photo 10, F2.8(開放), Sony A7(AWB): 





Photo 11, F2.8(開放),Sony A7


Photo 12, F5.6, Sony A7(AWB)

銀塩撮影
このレンズは後ろ玉が飛び出しているので一眼レフカメラで使用する場合には注意が必要だ。カメラの機種によっては遠方撮影時ミラーを跳ね上げる際に、後玉がミラーにぶつかる。MINOLTA X-700やPENTAX LXでは問題なく使用できた。
Photo 13, F2.8(銀塩Fujicolor S400) 



Photo 14, F4(銀塩Fujicolor S400) 
Photo 15, F4(銀塩Kodak GOLD100)



2015/07/08

Schneider Kreuznach Cine-Xenon 25mm F1.4 Arriflex Standard mount

駆け足でプチ・レポート 1 Schneider Kreuznach Cine-Xenon 25mm F1.4
オールドレンズ写真学校の生徒さんに頼まれeBayでお買い物・・・。購入したのはドイツのSchneider(シュナイダー)社が生産したシネマ用レンズのCine-Xenon(シネ・クセノン)である。入札を代行し購入を手伝ったご褒美に1日だけ試写させてもらえる事になった。Xenonにはスチル撮影用からプロジェクター用まで実に様々なモデルが存在するが、今回紹介するのは映画(シネマ)撮影用レンズでドイツのARRI社が生産した16mm映画用カメラのArriflex(アリフレックス)に搭載する交換レンズとして供給されていたモデルである。撮影した映像は大画面のスクリーンに投影されるため、この種のレンズにはスチル撮影用を遥かに凌ぐ高い性能が求められていた。シリアル番号をたどると本品は1960年頃に製造された個体であることが判る。レンズ構成は4群7枚でダブルガウスからの発展型である[文献2]。
Arriflex Cine-Xenon F1.4の光学系。構成は4群7枚のズミタール型で、前玉が色消しの張り合わせ(たぶん旧色消し)になっている。分厚い前玉の第1レンズのおかげで、かなりの明るさを稼いでいるようだ。絞りに接する両側のガラス面の曲率差(曲がり具合の差)でコマ収差を補正している。文献2からのトレーススケッチである
最短撮影距離 0.35m, 重量(実測) 147g, フィルター径 49.5mm前後, 絞り値 F1.4-F22, レンズ構成 4群7枚(文献1,2参照), 絞り羽 5枚構成(形状は6角形), Arriflexスタンダードマウント。本品はシリアル番号6144888(1960年前後製造)の前期モデルである。1000万番あたりから後ろの後期モデルではM4/3機での使用時にケラれが顕著に目立つそうである
参考
入手の経緯
レンズは2015年6月5日にデンマークの個人出品者から落札購入した。この出品者は写真機材ばかりを取り引きしており205件の取引でポジティブ・フィードバック100%の優秀な成績を残していた。オークションの解説は「中古だが、とてもよいコンディションで、フォーカス機構、絞り機構は良好に機能している。アダプターを用いてデジカメで使用可能」とのこと。スマートフォンの自動スナイプソフトにて最大額を約40000円に設定し放置したところ30500円+送料3000円で落札することができた。届いたレンズは外観がパーフェクトでガラスも小さなクリーニングマークが1本あるのみと経年品にしては良好な状態であった。

撮影テスト
シネマ用に設計されたモデルと言うだけのことはあり、少し絞ってからの解像力は圧倒的で、スチル撮影用レンズとは別次元の高密度な描写を体感することができる。イメージサークルは16mmシネマ用フィルムを想定したサイズにデザインされているが、少し余裕がありマイクロフォーサーズ機で用いても四隅が僅かにケラれる程度で、実用性に大きな支障はない。解像力は非常に高く、コントラストや発色は良好で、とてもシャープな像が得られるレンズである。収差設計はやや過剰気味で、その反動のためポートレート域で人物などを撮ると背後のボケがやや硬くザワザワと騒がしくなり2線ボケも出る。一方、前ボケは柔らかく、近接域で草花を撮影する場合には背後のボケも柔らかい。開放付近ではややグルグルボケも発生するが、これはイメージサークルを目一杯まで活用しているためである。少し絞れば全く目立たなくなる。
F4, Pen E-PL6(AWB): 解像力が高く緻密な描写である。中央部を拡大したのが下の写真



上の写真の一部を大きく拡大し切り出しているにも関わらず依然としてギッシリとした密度感が保たれている。スチル撮影用レンズとは別世界の圧倒的な解像力に開いた口が塞がらない・・・

F2.8, Pen E-PL6(AWB): コントラストや発色は良好でXenonらしい清楚な写りだ。マクロ域でのボケ味は柔らかい


F2.8, Pen E-PL6(AWB): 開放から2段絞るだけでかなりシャープな像である。やはり解像力はとても高い。ポートレート域になると背後のボケはザワザワと騒がしく、被写体の種類によっては2線ボケ傾向もみられる。中央を拡大したものが下の写真である


上の写真の拡大。高解像だ。怖いもの見たさの真剣な眼差しに将来は大物になる予感のするワンショットだ



絞りは不明, Olympus Pen (AWB): 最近は多重露光にも少しハマりだした。この写真はオールドレンズ写真学校の撮影会での1コマ。作例が不足していたので現所有者からも提供していただいた

F1.4(開放), Olympus Pen(AWB):  これもオールドレンズ写真学校の撮影会での1コマで、レンズの現所有者から頂いた写真だ。ちなみに被写体は