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オールドレンズ女子部
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オールドレンズ写真学校12月ワークショップ
今月は12月17日(日)の予定です。まもなく正式な発表と申し込みの開始が始まります。

2010/05/31

シュナイダーとイスコ 第2弾: Schneider-Kreuznach EDIXA-XENON 50mm/F1.9 (M42) エディクサ・クセノン


ピント面は鋭いのにボケ味は柔らかい!
名門シュナイダーのエース級レンズ

後ボケ味の柔らかさは残存球面収差によって生み出されている。球面収差の残存(補正不足)はピント面のシャープネスを損ねる原因にもなるので、柔と硬はトレードオフの関係にある。レンズの柔らかさはボケ味の美しさやムードを作り出すとても大切な描写力。この部分を捨てシャープな結像を徹底追求すれば、製版や航空写真、マクロ撮影などの用途で活躍できるものの、ボケ味はザワザワと硬く2線ボケも発生する。両者のバランス配分を保ちながら、これらを高いレベルで両立させることができれば、ある意味において理想的な描写力を持つレンズと言える。興味深いことにXenonにはそれを実現しているとの噂だ。どんなもんかと物欲魂がメラメラとこみ上げ、気付いたらもう手元にレンズが届いていた。あれ?
 Xenonはシュナイダー・クロイツナッハ社の高速標準レンズにつけられるブランド名で、原子番号54のキセノン原子、あるいはこの原子の語源となったギリシャ語の「未知の」を意味するXenosを由来としている。今回入手したモデルはEdixaと呼ばれる普及価格帯のドイツ製一眼レフカメラのために1963年に製造されたEdixa-Xenon(クセノン)50mm/F1.9という製品である。光学系は4群6枚のガウス型で、仕様や設計が統一されていないXenonファミリーの中では最も典型的な構成である。Xenonファミリーの中で特に有名なのはディッケルマウント用に供給されたRetina-Xenon 50mm/F2であり、同マウントでは有名なフォクトレンダー社の銘玉SEPTON(ULTRONの発展型レンズ)と並ぶ高い人気を誇るそうだ。名門シュナイダーを代表する主力ブランドというだけのことはあり、鏡胴の造りは実に素晴らしい。
絞り機構のMANUAL/AUTO切り替えスイッチに連動して丸枠内の表示がAとMに切り替わる。また、絞り冠に連動して被写界深度のゲージ表示が変化する

 フォーカスリングを回しても鏡胴の伸縮はない。よく見ると光学系全体が前玉枠の内側でせり出すようにスライドしながら出て来るという凝った仕掛けになっている
マウント面から突き出たキャスター式の絞り連動ピンと鏡胴側面にある絞り機構のMANUAL/AUTO切り替えスイッチ。単なる押し込みピンではないところに拘りを感じる

フィルター径49mm,光学系:4群6枚ガウス型, 重量(実測):242g, シュナイダー社のHPにあるシリアル番号票をみると、本品は1963年に製造されたことになっている。傷の入りやすいマウント部には高硬度の真鍮鋼材が用いられるなど細部までよく考えられた造りだ。詳しい仕様についてはシュナイダーのホームページのこちらから当時の製品カタログを参照できる

入手の経緯
 本品は2009年12月にeBayにてポーランドの中古カメラ業者WWWカメラメイトCOMが180㌦の即決価格を設け出品していた。出品業者に値切りの交渉をし、最後は150㌦(総額180㌦)で落札、安く購入することができた。eBayでは200㌦を超えるのが当たり前のレンズだ。届いたレンズには僅かにホコリの混入があったが、ガラス面に傷はなく実用品としては何ら問題の無い良品であった。この業者は商品の解説文がいつも同じで「クリーンな光学系、スムーズな(ヘリコイドリングの)回転」が決まり文句だ。eBayの中では比較的優良な業者のようであるが、過去に1度ヘリコイドリングがカッチンコッチンに硬いレンズを買わされたことがある。

試写テスト
どんなにシャープなレンズでも近接撮影では球面収差の増大によって結像が柔らかくなる。この時、ピント面の緻密さは平凡化するもののレンズは綺麗なボケ味を生み出すようになる。これに対しピント面を無限遠にとる場合には、そのレンズが最もシャープな結像を示すようになる。これは収差の補正が無限遠方を基準に調整されているためだ(ただし意図的に柔らかさを残す場合もある)。では、ピント面を近接から無限遠に向けて遠ざけてゆくと、どうなるだろうか?レンズのもつ柔らかさは次第に薄れ、硬質で緻密な描写に変化してゆくに違いない(収差変動)。この性質変化の様子は製品ごとに異なり、カメラマンが最も多用する撮影距離(中間距離)においてレンズの個性を決めている。シャープな描写を印象づけるもう一つの大切な要素はコントラストである。高いコントラストを持つレンズは濃淡のメリハリがはっきりし、描写に硬質な印象を与える。高いコントラストと柔らかさを上手く両立させれば、良質な描写を演出できるというわけだ。ただし、結像の柔らかさが引き出せる開放絞り値付近では様々な原因により一般にはコントラストが低下してしまう。
 Xenonは絞り開放からピント面がシャープに結像するレンズとして知られている。一段絞れば更に周辺部までシャープになる。後ボケは大変柔らかく、輪郭部がフワッと綺麗に見える。ボケ味の柔らかさはピント面の残存球面収差によって生み出されているが、この収差はピント面のシャープネスを損ねる原因にもなるので、ここは設計者の腕の見せ所でもある。作例を見る限りEdixa-Xenonの描写はコントラストは絞り開放から高く[注1]、シャープなピント面と柔らかいボケ味をかなり高いレベルで両立させているようだ。ただし、残念な事はボケ味の滑らかさが今ひとつ良くないこと。撮影距離によっては2線ボケやグルグルボケが発生し、結像が崩れたり煩くなるなど質の悪いクセが露呈する事がある。また、光量の多い晴天時に中距離で撮影すると、ピント面に近い領域でハイライト部の輪郭あたりが妙に硬いボケ味を示すことがある。輪郭部が薄いハロでも纏うのだろうか?発色はシュナイダー独特のクールトーン調で、青が栄えるのが特徴だ。木々の緑が清涼感を帯びて映し出される。以下作例。

[注1]・・・開放絞りにおけるXenonのコントラストの高さについては、「ISCO WESTROCOLOR 50/1.9」のブログにおける比較結果を見ていただきたい。

F1.9(EOS Kiss x3, ISO 1600) 近接撮影時の後ボケはフワッと柔らかく良質だ。開放絞りにもかかわらず中央部の結像は充分にシャープ

f1.9(銀塩 FUJI ISO100) コントラストは充分に高い。ピント面はシャープで臨場感に溢れ、ボケ味は柔らかくハイライト部の滲みが綺麗だ。トーンの変化が丁寧で、階調変化が幻灯機に照らし出された影絵のようにフワフワとし、味わい深い結果になっている。EDIXA-XENONの凄さを知ってしまった一枚だ

f1.9(銀塩 FUJI ISO100) 後ボケはフワッと柔らかいが、2線ボケが出ており滑らかさがない

f2.8(銀塩 FUJI ISO100) 深く濃い青が出ている。こちらも背景に滑らかさがない。だんだん怪しくなってきた・・・エヘヘ。背景の電柱は2線ボケかな?衣服や木々の青・緑に清涼感が溢れている

f1.9(銀塩 FUJI ISO100)左:背景にガサガサしたものがあると、このようにボケ味が煩くなる。ややグルグルと回っているようだ。 f1.9(銀塩 FUJI ISO100)右:こういう構図ならば問題ない

F1.9(銀塩 FUJI ISO100) こちらもアウトフォーカス部にボケ味のグセの悪さが露呈した一枚。柔らかいが滑らかさを欠いたボケ味で像もやや流れている。開放絞りからシャープなので調子に乗って絞り開放のままでいると、このように火傷をする

F1.9(銀塩 FUJI ISO100) 背景の人物の肩の輪郭部あたりに注目してほしい。晴天下に屋外で撮影するとハイライト部だけが妙に硬くなることがある。直ぐ横の顔の輪郭のボケ具合は大変柔らかいのに・・・。

F2.8(EOS kiss x3, ISO 1600) 明暗差の大きな場面で雰囲気の良い写真がとれるレンズだ

★撮影機材
銀塩:PENTAX MZ-3+Fuji ISO100
デジタル:EOS Kiss x3
PENTACON metal hood(49mm径) + Schneider EDIXA-XENON 50/1.9



柔らかさと緻密さを高いレベルで両立させたレンズはやはり実在した。中距離で撮影する際にピント面に近いアウトフォーカス部にガサガサしたものが入る時には要注意。滑らかさを欠いたボケ癖が露呈するので、少し絞った方がよい。その点にさえ注意を払えば、高い表現力を備えた良いレンズだ。

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