おしらせ


2009/06/03

ENNA München Lithagon 35mm/F3.5(M42)
エナ・ミュンヘン リサゴン


小さくて軽くて、お洒落なレンズ!
メーカー名も素敵
エナ(ENNA)はドイツ・ミュンヘンの中堅光学機器メーカーである。この社名は創設者のAppelt博士が彼の娘アンネ(ANNE)の名前を反転し銘々してしまったことに由来する。エナにはENNALYTという名のレンズまであるくらいだから、相当な溺愛だったのではないか。リサゴンというレンズ名もどこか女性の名前を連想させるようで可愛らしさがある。本レンズはトリプレット型レンズをレトロフォーカス化した4群4枚という変わった光学系を持つレンズであり、軽くコンパクトな鏡胴に3枚のゼブラリングを持つお洒落れで存在感のあるデザインが特徴である。バックフォーカスの長いレトロフォーカス型の設計としては、最も小粒なレンズの一つではないだろうか。絞りリングがヘリコイドリングと一緒に回転する特殊な構造のため、慣れるまでは少々扱いにくいのが難点だ。M42マウント用とエギザクタマウント用が流通している。後玉が飛び出しているので、EOS 5Dのミラーには干渉するようだ(海外のWEB談)。製造時期は不明だが、WEB上で調べる限り1960年代のようである。
フィルター径:52mm 重量:141g 絞り羽数:8枚 焦点距離/開放絞: 35mm/F3.5 最短撮影距離:50cm 光学系は4群4枚でトリプレットをレトロフォーカス化した構成

入手の経緯M42マウント用の場合、相場は国内のショップでは2万円から3万円位で売られている。エグザクタマウントからM42マウントへの改造品が多く流通し、80~100㌦くらいで売られていることがある。本品は2009年2月に本場ドイツ版のeBayにて150ドルで落札した。相場が100~130㌦くらいなので送料や関税までいれると少々割高な気がしたが、"新品に近い"という触れ込みから、状態はかなり良さそうに思えたので即決価格で落札したわけだ。しかし、届いた商品はフィルター取り付け部の塗装に僅かに擦れがあった。ガラス面と他の部分は美品レベル。まぁeBayなのでこんなもんでしょう。



小さなMZ-3との組み合わせがよく似合う
試写テスト
屋外での撮影の場合、フードをつけても暗部が明るく浮き上がりコントラストが弱くなる。発色は目に見えて淡いし、白とびを起こしやすく明部の諧調表現に粘りがない。開放では距離によって2線ボケが出る事がある。避けたいならば1段絞ったほうが無難だ。本品は間違いなく癖玉であるが、高い画質補正能力を持った一眼デジカメが普及した今、このレンズの良さをもう一度見直してもよい。

まずは露出補正無しでの試写結果 Without adjusting exposure逆光でもないのに暗部が明るく浮いてしまった。コントラストはかなり低めになる傾向だ。明部には美しいハロが出ている。 (F3.5露出無補正)

発色はだいぶ淡くなる。本来もっと青っぽく写るはずのアジサイが淡い水色になってしまった!(露出無補正)
      淡く写るため、本来赤いはずの車がオレンジ色に変色してしまう 


お地蔵様の顔や白い花などのハイライト部が白とびしている。明部の諧調表現に粘りがない
こちらは屋内での写真 。開放では2線ボケがでていた。近景を開放絞りで写す場合には1段絞ったほうが無難だろう。F5.6
撮影環境: Lithagon 35mm/F3.5 + EOS Kiss x3 + PETRI Metal Hood


次に露出を2~3段マイナス側に補正した場合のサンプル(横浜・浅間神社祭)                 暗部がだいぶ改善された

             発色はまだ淡く、赤はオレンジ色気味だ
もやっとしているのはフレアではなく煙がモコモコ出ているため。この焼鳥屋はいつもすごい
こちらはミドリガメすくいのできる変りダネの出店
こちらが本家の金魚すくい。他にもウナギつりがあった・・・。へんなお祭りだ
1段絞れば収差が減り、ボケも悪くない
おもちゃが流れてくるプール
アジサイの撮影にてリベンジ。カメラの設定で発色を濃いめにした。うん。今度はまぁまぁいい発色じゃないか!


青や赤の発色が本来よりも淡くなるのがこのレンズの癖といえる。この点についてはハレ切りや露出補正だけでは改善しきれなかったので、デジタルカメラの画質設定で色を濃くするなど工夫してみた。お洒落な上にレンズの持っている癖が把握しやすいので、これからクラシックレンズで撮影を始める人には学べる点が多く、オススメの一本といえる。


撮影環境: Lithagon 35mm/F3.5 + EOS Kiss x3 +CENTI EA55 メタルフード with step-up ring
CENTI EA55と銘打たれた年代物のメタルフード

2009/05/28

Isco-Göttingen WESTAGON 50mm/F2(M42)
イスコ・ゲッチンゲン ウエスタゴン`


 
癖玉なんだろうけれど
かっこいいから許します。ハイ。

 イスコ社はドイツの古都ゲッチンゲンにあり、名門光学機器メーカーのシュナイダー(正式名称:シュナイダー・クロイツナッハ社)を親会社とするレンズの製造メーカーだ。日本では知名度がいまひとつ低い。本品はシュナイダーが1937年に設計したダブルガウス型のレンズ構造をそのまま採用し、イスコ社によって1950年代前半に製造された。この設計はカールツァイスのウルトロンやタクマー55mm/F1.8にも採用されている。大口径化と像面の平坦化が容易で、高画質が得られる反面、レンズの構成枚数が多く、レンズ内の光の反射によりフレアが発生しやすいのが難点のようだ。何事もトレードオフなのだろうか・・・色々改良が施され、現在はこうした問題はほぼ克服されている。構造的に後玉が大きく飛び出すので、フルサイズセンサーのEOSではミラーが後玉に干渉してしまう。今回取り上げるイスコ社のウェスタゴン50mm/F2は大きな鏡胴から突き出たヘリコイドリングを持つ無骨なデザインが印象的である。鏡胴にはアルミ合金を採用し、どこか民用品ではない、お高い顕微鏡にでも使われていそうな立派なつくりだ。開放F値が2.8のタイプはよく見かけるものの、F値2.0の製品は極めてレアで、eBayでも見かけることは大変稀である。ここまで明るければ、さぞかしボケ味も面白いだろうに・・・・欲すぃ~。
 
     最短撮影距離: 55cm, フィルター径:52mm, 焦点距離/開放F値:50mm/2.0, 5群6枚ガウスタイプ

入手の経緯
2008年末頃、eBayに新品同様(MINT状態)のものが出品されていた。入札〆切の数分前からスナイプ入札による落札を企てたが、90ドル前後をつけていた値はぐんぐん上昇し、220ドルになっても最高入札者になれなかった。結局諦めることに。ところがその直後、なんとヤフオクで即決価格2万円にて出品されていたので反射的にポチッと購入してしまった。
試写テスト
海外の幾つかのブログに描写についての評価が掲載されていた。それらによるとコントラストは低く、逆光下ではフレアが発生する。開放での描写はたいへんあまい。ハイライト部にはハロが発生しまくり、まるで夢の世界のような描写となる。1~2段絞るとハロが消失し、コントラストが向上してシャープな写りになる。ハロやフレアを表現の1つのするならば、本品は表現力の豊かな面白いレンズである。

近景/開放絞りでは描写が甘い。ピントを合わせたDVD盤面の解像感が乏しい。ボケはたいへん柔らかい

緑の部分にハロが出て綺麗だがボケは煩い。奥の植栽の辺りにグルグルボケの発生が確認できる。気になるならば一段絞れば収差が減りボケ味は素直になる。東京都新宿区戸山公園
フードを装着して順光で撮影してもコントラストはこのとうり低く暗部の輝度が上がってしまう。これを個性とみなすなら味のある素晴らしいレンズということになる。 東京都新宿区戸山公園

モノコート仕様のレンズのため逆光に弱く直ぐにフレアが発生する。朝の眩しさを表現するには持ってこいのレンズだと思う。東京都新宿区・戸山公園

都営副都心線

渋谷駅前

渋谷駅前

現代のレンズの基準から考えると、やはり癖玉なんだろうけれど、このレンズ・・・・かっこいいから許します。ハイ。

撮影環境:Canon EOS Kiss x3 + ISCO + ELMOねじ込み式メタルフード

ELMOのねじ込み式クラッシックフードを装着した様子です。APS-Cセンサーの場合、もう少し深めの80mm用のフードがよい。このレンズの存在感に負けないかっこいいフード、どこかにないものだろうか・・・
子供をハイビジョン動画で撮りたいと妻を説得し、ついにEOS Kiss x3を購入してしまった。ウホホ。その代りにペンタックスのistDS2は手放すことに。はじめはペンタのNEW K-7とどちらにしようか迷ったのだが、決め手は重量が軽いことであった。レンズはいくら買っても家族には絶対にバレない(我が家の法則)。きっと、興味の無い人には皆同じに見えるからなのだろう。でもカメラ本体は不思議と直ぐにバレてしまう。結果、デジタル一眼レフの所有は現在2台のみ。