lomographic fantasy! |
トイ・レンズの奏でるプラスティックのファンタジー!
DIANA+用交換レンズを絞り羽内蔵アダプターにマウントして遊ぶ
今回はオーストリアに生まれウィーンに拠点を置くLomographic Society(ロモグラフィー社)が販売するトイカメラのDIANA+(ダイアナ・プラス)に装着する2種の交換レンズ、20mm Fish-eyeと38mm Super-wideを取り上げる。このカメラの起源は香港のグレートウォール・プラスティック・カンパニーが生産していた伝説のトイカメラ「DIANA」である。米国のスーパーマーケットにて僅か50セントで入手できたDIANAは多くの写真家や芸術家によって、その類い稀な描写力が見出され、1960年代から1970年代に数多くの創造的な写真作品を生み出していた。このカメラにマウントされていたプラスティック素材のレンズからは泡沫のように色彩溢れ、時に薄汚れ、幻覚にも似た素晴らしい写真効果が得られたのだ。DIANAはHOLGAの元祖とも言われており、トイカメラの先駆的な存在とされている。最近再び巻き起こったトイカメラブームの波に乗り、2007年にLomography社が復刻モデルのDIANA+を発売、4種類の交換レンズ群(焦点距離20mm/ 38mm/ 55mm/ 110mm)とともに現代に甦らせた。また、これら交換レンズ群をNIKONとCANON(EOS)に装着するためのマウントアダプター(SLR Adapter)も発売され、トイカメラならではの素晴らしい描写をデジタル一眼カメラでも楽しめるようになった。
DIANA+用SLR Adapter (Lomography社製) CANON-EOS用(左)とNIKON-F用(右)が市販されている。市販価格は両方ともたったの1260円だ
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左: Diana+ 38mm Super-wide; 焦点距離38mm 最短撮影距離 約1m 重量(実測)42g
右: Diana+ 20mm Fisheye; 焦点距離20mm 最短撮影距離 約0.3m 重量(実測)49g
本品にはフィルターを装着するためのネジきりがなく、絞り機構も付いていない
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このレンズはヘリコイドの繰り出し機構こそあるものの、絞り羽が内蔵されておらず、カメラマンによる高度な描写コントロールはこれまで不可能であった。ところが最近になって香港のKipon社から絞り羽を内蔵した全く新しい類いのマウントアダプターが発売され、このレンズに絞り羽の開閉機構を補う事が可能になった。Kipon社から発売されたのはCANON EOSのレンズをsony NEX、またはマイクロフォーサーズ規格のカメラに装着するため2種のアダプターだ。DIANA+ → EOS →NEXと2つのアダプターでブリッジすれば、ハロや周辺光量などの絶妙なコントロールを可能とする本レンズの新しい撮影スタイルが生まれるのだ。
絞り羽内蔵アダプター
下の写真は最近マニアの間で話題が沸騰している絞り羽内蔵マウントアダプター(KIPON社製)だ。側面には制御ダイヤルがついており、絞り羽根を2段毎のステップ間隔で開閉させることができる。
私が入手したのは香港Kipon社製絞り羽内蔵マウントアダプター「EOS-NEX A」で、キャノンEOSマウント用レンズをSONY NEXにマウントするというもの。現在、eBayやヤフオクで入手できる。eBayでの価格は送料込みで120㌦程度であった。他にもEOSのレンズをマイクロフォーサーズ機にマウントする同種のアダプターが発売されている
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ある日突然、このアダプターをDIANA+用交換レンズに用いるというアイデアを思いつき、さっそく実践してみることにした。DIANA+用レンズのイメージサークルは元々6×6の中判カメラに対応した広い規格だ。35mm判以下の一眼カメラに装着した場合には画像周辺部が写らないので、トイカメラの象徴的な描写である周辺減光の効果は失われてしまう。しかし、本アダプターを用いれば深く絞る際に四隅がケラれて周辺部の減光効果が蘇る。さらには減光具合の微妙なコントロールも可能になり、表現の自由度が増すというオマケまで付いてくる。ナイスフォロー!
★入手の経緯
DIANA+用交換レンズとマウントアダプターはこちらのロモグラフィー・ジャパンのWEBサイトで通信販売されている。2011年1月に私が購入した時点での販売価格は20mm Fisheyeが5040円、38mm Super-wideが4620円、これらをEOSまたはNIKONにマウントするアダプターが、それぞれ1260円であった。同製品は国内の一部の写真店やデパートでも購入できる。知り合いの写真屋いわく、ロモグラフィー社の製品はどこも店でも取り扱えるわけでなく、同社の厳格な審査をパスした店のみ仕入れることができるとのこと。厳しい価格統制がおこなわ、安売りは厳禁。新品を安く購入することは不可能らしい。何と店に置く値札までロモグラフィー・ジャパンが用意するという徹底ぶりだ。
★撮影テスト
DIANA+用交換レンズ群はソフトでゆる~い描写、高い彩度、ドリーミーなイメージを宣伝文句にしている。早速レンズをデジタルカメラにマウントし、ライブニューによるピントを合わせを試みた。ところが困ったことに、どんなに目を凝らしてもピントの芯が掴めない。どうやらこのレンズは目測で距離を決め、ヘリコイドリングに記された指標のみでピントを合わせを行うようだ。
★20mm Fisheyeと38mm Super-wideの画質比較★
下の写真は今回入手した2本のレンズを同じ被写体に対して撮り比べたものだ。2本のレンズは全く異なる性格を示している。ご覧のように20mm Fisheyeはシャープで風景撮りに向いている。対する38mm Super-wideは球面収差を生かしたソフトフォーカス気味の描写が特徴で、ハイライト部に美しいハロを纏いドリーミーな撮影効果が生まれている。人物を撮るのに向いていそうだ。以下では個々のレンズの描写力について、もう少し詳しく踏み込んでみる。
DIANA+ 20mm Fisheye
20mm FisheyeはDIANA+用レンズ群の中でもシャープネスとカラー彩度が特に高く、画像周辺部に歪みと色滲みを生じさせるのを特徴としている。同シリーズの中では最も「まとも」に写る製品と言われている。こういう噂話を耳にしてしまうと、トイレンズとしてはいまいち面白味に欠けるという印象を抱いてしまう。しかし、そうした先入観はこのレンズが真価を発揮するにつれて、いつの間にか消し飛んでしまった。以下作例。
20mm Fisheye / NIKON D3 digital(AWB): こちらは絞り開放での撮影結果。このとうりに解像力(緻密さ)は低いが、ごく普通に写る。最短撮影距離が0.3mと短いので、花などの近接撮影も可能だ。フルサイズセンサー機で用いると、周辺部にフィシュアイレンズ特有の歪みが生じる
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20mm Fisheye, digital / sony NEX-5 digital(AWB):こちらはAPS-Cセンサー機での撮影結果だ。画像中央部しか写らないので、歪みはほぼ無くなってしまう。こういう作例ではトイカメラらしさが全く表れない。しかし、次の作例をご覧いただきたい。
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DIANA+ 20mm Fisheye / sony NEX-5 digital (AWB):曇り空の夕刻における作例だ。光量が少ないと性格がガラッと変わり、薄汚れた雰囲気のある描写を示すようになる。どうやらこのレンズの真価を引き出すには光量を落とし、シンプルで絵画的な被写体をターゲットにするのがコツのようだ。ソフトな結像がボケ味に似た効果を生み、背景の樹木の描写に独特な雰囲気を与えている。なお、本作例では絞り羽内蔵アダプターを用いて画像周辺部をやや減光させている
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DIANA+ 20mm Fisheye / sony NEX-5 digital(AWB):絞り内蔵アダプターを用いて深く絞り込むと、日中でも減光され、先の作例と同様に薄汚れたアートな空間が生みだされる。実に面白いレンズだ
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このレンズが真価を発揮するには少しばかりコツを要することがわかった。光量の少ない条件下において、絵画的な被写体をターゲットにすると独特な描写を示すようになる。絞り羽で周辺部を減光させると雰囲気が更に増すであろう。
★20mm Fisheyeと絞り羽内蔵アダプター★
絞り内蔵アダプターを用いた被写界深度の制御が本レンズにおいて、どれほど有効に機能するのか調べてみた。下の写真は絞り開放による撮影結果(上段)と適度に絞った状態における撮影結果(下段)だ。瓦のあたりにピントを合わせているが、ご覧のとうりに絞ってみてもアウトフォーカス部の鮮明さに明確な変化は見出せない。被写界深度が極めて深く、パンフォーカス気味に設計されたレンズなのだろう。
20mm Fisheye / sont NEX-5 digital(AWB):上段 絞り開放, 下段 絞り込んだ結果
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38mm super-wide
先の作例にもあるように、こちらのレンズではソフトフォーカス効果が強く働き、ポワーンと甘い雰囲気が漂っている。また、ハイライト部にハロが発生し、その輪郭が薄い光のオーラを纏う。カラー彩度が高くジューシーな色ノリとなり、いかにもトイカメラらしい表現が可能である。
DIANA+ 38mm Super-wide / NIKON D3(AWB):噂どうりにソフトで甘く、高彩度な描写が得られる。気のせいか、このプラスティックレンズを介すると写るものまでプラスティックに見えてくる。面白いレンズだ
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DIANA+ 38mm Super-wide / NIKON D3 (AWB):このソフトな描写は人を撮ることに特化していると言い切っても良さそうだ
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DIANA+ 38mm Super-wide /sony NEX-5 digital(AWB):こちらは屋外での撮影結果(SPIRALの近影)である。ハイライト部のハロがやや強く出過ぎている印象だ。こういうケースは絞って撮った方がよい。絞り羽内蔵アダプターの出番か!?
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★38mm Supe-wideと絞り羽内蔵アダプター★
38mm Super-wide / sony NEX-5 digital(AWB):上段 絞り開放, 下段 絞り込んだ結果
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いや~ 興味深い!
返信削除絞り羽部分で起こっている、収差の微調整と階調表現の微調整の一元化、つまり光学的”縮退”というか、むしろ表現的”縮退”とでも言うべきか・・・を、もう一度2つの要素にばらしてしまうという試み。
この着眼点、素晴らしいですね~!
こぎとさん
返信削除こんにちは。レンズ本体の羽とアダプター側の
外部羽によるダブル絞り機構の有効性を少し
探ってみたいと思います。
ダブル羽の効果を顕著に拾うために、
光学系が複雑で内面反射がそれなりにある
(こぎとさんのアンジェニューズームみたいな)
レンズの候補を思案中です。
絞った時のコントラストの向上が顕著な
レンズなんだと思いますので、レンズ本体の
内蔵羽が前方にあるほうがいいのかもしれません。
こんばんは SPIRALさん
返信削除この外部羽根による絞り、ジツハ野鳥撮影でも使用される場合があります。
これです。
http://www.tomytec.co.jp/borg/products/partsDetail/summary/81
この場合は、対物レンズのすぐ後ろのカメラ側に置いて、被写体深度のコントロールに使います。
対物レンズを絞り開放で(絞りが無いから)使っていると、描写がやや甘くなることがあって、この改善に外部絞りの導入を検討しています。
この絞りによる被写体深度変化を最大にするにはレンズのすぐ後ろに置くのが望ましく、レンズから離れるほど被写体深度変化が少なくなります。
この被写体深度変化がもっとも少なくなった場合が、この絞りつきアダプターなんでしょうね。
この外部絞りを後ろに設置して被写体深度変化をチェックしたレポートがこれです。
http://destiny.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/m57-a080.html
なんか、色々と繋がっていますね~
こぎとさん
返信削除こんばんは
>なんか、色々と繋がっていますね~
そうですね。M57なる製品が既にあったのですね。
> この被写体深度変化がもっとも少なくなった場合が、
> この絞りつきアダプターなんでしょうね。
確かに外部絞りで絞っても被写界深度、
大きくは変化してくれませんでした。そのようですね。
私の場合、ケラレるところまで深く絞って、
ようやく深い被写界深度が得られる始末でした。
(絞り羽根内蔵アダプターは指標を超えて、更に
深く絞れるようにできています。)
> この外部絞りを後ろに設置して被写体深度変化をチ
> ェックしたレポートがこれです。
なるほど、良く分かりました。
ありがとうございます。こちらにもつい最近アップされた
同様のレポートがありましたのでご覧ください。
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/dressup/20110203_424426.html
絞り羽根の無いロシア製のM42マウント中望遠レンズに
Cyclop-M 85mmF1.2
といレアなレンズがあります。絞り羽根が無いせいか
値段も手ごろで、最近までCameraMateで
販売していたのですが購入しようと思い立ったところ
タッチの差で売れてしまいました(残念無念・・・)