おしらせ

2026/01/01


ミノックスもどきの国産カメラから摘出した

ミノタールもどきの広角テッサー

RICOH COLOR RIKENON 35mm F2.8(Converted to Leica L39)

大晦日に家で大掃除をしていたら、コンパクトカメラのRICOH FF-1が出てきました。シャッターの切れないジャンク品です。家族が紅白歌合戦を見ている間に内蔵レンズを取り出し、デジカメで使えるよう改造してみました。搭載されているCOLOR RIKENON 35mm F2.8は広角レンズとしては珍しいテッサータイプで、しかもイメージサークルはフルサイズセンサーを余裕でカバーする設計です[1,2]。これは試さずにはいられません。直進ヘリコイドに換装し、ライカL39マウントにしました。

このカメラ自体は数年前、ヤフオクで何か別の機材を落札した際にオマケとして付いてきたものです。外観がドイツのMINOX 35EL(レンズはColor-minotar)に酷似していると指摘された歴史がありますが、実際にはRICOH側の設計・試作の方が早かったため、単なる偶然の一致として落ち着いたという経緯があります。こういう一致はKONICA EYEとロシアのMicron 1などにも見られますが、どうして似てしまうのか不思議でなりません。

レンズのCOLOR RIKENONは前玉回転式のフォーカス機構を採用し、絞りはシャッター羽根が兼用するというコストダウン方式て作られたモデルでした[2]。カメラから取り外すと絞りの制御はできなくなるため、開放固定での運用となります。外部ヘリコイドに載せるとダブルヘリコイド構成になりますが、レンズ側のヘリコイドを操作すると前・後群の間隔が変化し、それに伴って描写も変わります。遠距離側では過剰補正、近距離側では補正不足となり、ボケ味やコントラストを意図的に変化させることができます。こうした“可変描写”を楽しめるレンズは貴重で、使いこなし甲斐があります。

L39マウントへの改造方法は至って単純で、冒頭の写真のようにM32-M42変換リングを鏡胴に嵌めエポキシ接着剤で固定、そのままM42-M39直進ヘリコイド(10-15mm)にマウントするだけです。翌日に元旦の北鎌倉を撮ってきました。

[1] RICOH FF-1 instruction manual
[2] RICOH公式ホームページ フィルムカメラ全機種リスト

 

撮影テスト

コントラストは良好で、中央部のシャープネスも十分に確保されています。一方で四隅の描写はやや甘く、総じて解像力・シャープネスともに中庸といった印象です。本来、中間階調の豊かさを前提としたフィルム用途のレンズであるため、デジタル環境では中間調の情報量がもう一段欲しく、トーンの拾い方に物足りなさを感じる場面もあります。

周辺部の最外縁では像面湾曲が大きく、ピントの甘さが目立ちます。背景ボケはややザワつきがあり、硬質な表情を見せる傾向です。発色はカラーフィルム時代のレンズらしくニュートラルで癖がなく、扱いやすい色再現といえます。屋内ではわずかに光量落ちが気になることもありました。逆光耐性は良好で、ゴーストやフレアが目立つことはありません。

総じて、可もなく不可もなく、中庸な描写を示すレンズという印象です。フィルム写真のほうがこのレンズには合っていると思います。

F2.8(開放) Nikon Zf


F2.8(開放) Nikon Zf
F2.8(開放) Nikon Zf


F2.8(開放) Nikon Zf


F2.8(開放) Nikon Zf

F2.8(開放) Nikon Zf
F2.8(開放) Nikon Zf

F2.8(開放) Nikon Zf
F2.8(開放) Nikon Zf
F2.8(開放) Nikon Zf

Zeiss-Opton Biogon 35mm F2.8 T (Contax-RF mount)


 

洗練を極めた戦後型ビオゴン:その長所と短所

Zeiss-Opton Biogon 35mm F2.8 T (Contax-RF mount)

だいぶ前の記事となりますが、旧東ドイツ製 Carl Zeiss Jena BIOGON 35mm F2.8 をデジタルミラーレス機に装着して使用した際、周辺部につよい画質劣化を感じました。具体的には非点収差と像面湾曲が顕著に現れ、四隅の最端部で像が流れ、同時に急激に甘くなるというもので、広角レンズとしてやや許容できないレベルでした。BIOGONの別の個体を試写する機会もありましましたが、この性質は個体差という見解で解決できるものではありませんでした。

一時はレンズ構成に原因があるのかとも考えましたが、興味深いことにBIOGON を祖とするロシア製コピーのJUPITER-12 では、ここまで強いクセはなく、設計の新しさを反映しているためなのか、四隅でも安定した描写が得られました。ただし、JUPITER-12が優れたクローンであるとはいえ「本家を凌ぐ」とまでは納得しがたい事でもあります。

設計構成の観点から見れば、BIOGONの基盤となったゾナー型は広角化に不向きな設計で、画角を広げすぎると非点収差が急激に増大するという性質を持ちます。また、バックフォーカスの極端に短いこの種のレンズをデジタルカメラで使用する場合、センサー端部に浅い角度で入射する光線が、センサーのカバーガラスやローパスフィルターと相互作用し、像面湾曲を増大させてしまうとも言われています。また、同様の原理でサジタル像面が影響を受け、非点収差が増大してしまうという事も考えられます。

一方で、この種の設計には明確な長所もあります。前群にパワーが集中しているためバックフォーカスが短く、レンズ全体をコンパクトにまとめることが可能なのです。BIOGONもまた、この利点を保持しつつ広角モデルとして成立させるため、さまざまな工夫が盛り込まれています。

画質的な側面からみてもオールドレンズレンズ評論家から高く評価されているレンズですので、やはり納得がいきません。

とはいえ、日本の光学メーカーは戦後、この設計を模倣することなく、BIOGON 35mmを手本とした製品を一切生み出しませんでした。なぜ日本のメーカーがここまで徹底して、このレンズから距離を置いたのか、その理由は今なお興味深い謎です。

こうした疑問を整理し、自分なりの答えを見出すために、今回は戦後に旧西ドイツの Zeiss-Opton 社 が設計したBIOGON(オプトン・ビオゴン)35mm F2.8に注目することにしました。その描写性能を検証することで、過去に抱いた違和感を再考し、より前向きに BIOGON の魅力を理解したいと考えたわけです。

BIOGON は、もともとカール・ツァイスが1936年に同社の高級レンジファインダー機 CONTAX IIIII型 用として発売した広角レンズです。先代の CONTAX I型(19321936年) には間に合わず、I型には暗めの広角レンズ TESSAR 28mm F8 が供給されていました。そのため、F2.8という明るさを備えたBIOGONの登場は、手持ち撮影を可能にする画期的な存在としてCONTAXユーザーに大いに歓迎されました。同時期のLeicaには Hektor 2.8cm F6.3ELMAR 3.5 F3.5などが供給されていた事かわもわかるように、F2.8というスペックは他社を圧倒する異次元の明るさであり、BIOGONは当時世界で最も明るい広角レンズとして位置づけられました。

戦後には旧西ドイツの Zeiss-Opton社からも、通称オプトン・ビオゴンと呼ばれる新設計の後継モデルが登場します。今回取り上げるのはこのモデルで、設計は下図のような46枚構成です。戦前からのBiogonを改良し、より洗練された設計へと変化を遂げています。後群に使われている極厚のレンズエレメントが、とてもよく写りそうな強いインパクトを与えます。

レンズの設計を担ったのは、SONNARの生みの親として知られる ルートヴィヒ・ベルテレ(L. Bertele) です。BIOGONはゾナー型を起点に開発され、その描写特性にはゾナー由来の性格が色濃く受け継がれています。これらのレンズに共通する普遍的な描写傾向は、写真画質に対するベルテレの揺るぎない理念を体現しているといえるでしょう。

設計構成は4群6枚のBIOGONタイプ(ゾナー変形型)。後群の極厚エレメントが目を引きますが、このモデルの大きな特徴といえるでしょう



中古市場におけるレンズの相場

旧西ドイツ製であるオプトン・ビオゴンの現在の中古市場での相場は、クモリのある個体で250300ドル、健全なコンディションの個体で500ドル程度からです。ちなみに、東側で製造されたツァイス・ビオゴンの中古相場も同程度です。レンズは国内・海外の中古市場で豊富に流通していますので、入手は比較的容易です。現在は円安の影響からか、国内市場の方が安値で取引されている印象です。コンディションの良い個体を5万円くらいで探すのが狙い目でしょう。

Zeiss-Opton BIOGON 35㎜F2.8: フィルター径 40.5mm, 最短撮影距離 3feet,   絞り F2.8-F22, 絞り羽 8枚構成,  設計構成 4群6枚BIOGON戦後型, CONTAX RFマウント, 重量(実測) 238g



 








 

撮影テスト

シャープネスとコントラストは明らかに良くなっており、戦前設計の先代 Jena BIOGON  Jupiter-12 を明確に上回っています。開放から抜けの良いクリアな描写を見せ、ピント面中央には鋭いキレがあります。発色も鮮やかで被写体を力強く描写します。設計の成熟度が一段と高まっており、1950年代のレンズとは到底思えない、信じがたい性能です。

一方で、中央と四隅の画質差は大きく、像面湾曲の影響で四隅では像が大きく崩れ、光量落ちもやや目立ちます。四隅のボケは接線方向と同心方向で大きく分離し、非点収差の存在がはっきりと確認できます。この傾向は Jena BIOGON とも共通しており、デジタルカメラとの組み合わせでは使いこなし方に注意が必要なレンズといえるでしょう。

F2.8(開放) Nikon Zf(WB:日光) 開放からコントラストは高く、中央部のシャープネスは素晴らしい水準ですが・・・。四隅はこの通りに、広い領域で急激にピンボケしてしまいます









F2.8(開放) Nikon Zf(WB:曇り空) 今度は遠景を開放で。中央はとても良いのですが、やはりある一定の画角から急激に画質の低下が起こります






F5.6 Zikon Zf(WB:曇空)もちろん、絞れば何でもないことではあります







F2.8(開放) Nikon Zf(WB:日陰) こういう構図なら開放でも何ら問題はないです

F5.6 Nikon Zf(WB:日陰) 絞れば弱点なし

F4 Nikon Zf(WB:日光) 
F5.6 Nikon Zf(WB:曇空)先ほどの空撮は、ここの上空からでした
F5.6 Nikon Zf(WB:日光)コントラストだけ見ると現代レンズとあまり変わらないレベルです






















































































































































 

BIOGON 35mmは少し絞って使うか、もしくは旧CONTAXなどフィルム機で使うのが正解のようです。今のところデジタルフルサイズ機との相性は良くありません。