1960年登場、時代を先取りした世田谷光機の大口径標準レンズ part 2
YASHICA (SETAGAYA Koki OEM Product) YASHINON 5.8cm F1.7 PENTAMATIC mount
前回の記事で取り上げたSEKOR 58mm F1.7は世田谷光機がマミヤの一眼レフカメラPrismat NP(1960年発売)と、Prismat WP(1961年発売)に搭載する交換レンズとして供給したマミヤブラントのOEM製品です。じつは、これとほぼ同時期に中身の同じ覆面レンズが、YASHINONの名称でヤシカにもOEM供給されました。ヤシカが1961年に発売したPENTAMATIC IIという一眼レフカメラに搭載する交換レンズのYASHICA YASHINON 5.8cm F1.7です[1]。光学系は同一なので写りもSEKORと全く同じですが、こちらのレンズで一つ残念なのはPentamaticマウントが特殊なため市販品のマウントアダプターが存在しないことです。レンズを現代のデジタルカメラで使用するにはマウント部分を改造するか、このマウント規格に対応したアダプターを自作する必要があります。レンズの設計構成は下図にしめすような、オーソドックスな4群6枚のガウスタイプで、開放F値1.7を実現するために分厚い正レンズを用いて屈折力を稼いでいます。このクラスのレンズであれば張り合わせ面を外し空気層を入れる構成が多いと思いますが、このレンズにはそれがありません。
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設計構成は4群6枚のオーソドックスなガウスタイプです。左が被写体側で右がカメラの側となります.構成図はPentamatic II instruction manualからのトレーススケッチです |
★入手の経緯
レンズは特殊なマウント規格ですので、レンズ単体での流通は少なく、カメラ本体とセットで売られているケースが大半です。カメラは国内の中古店やネットオークションに常に流通しており、取引額は1~2万円程度です。私はメルカリで故障したカメラとコンディション不明のレンズがセットになった商品を4500円で入手しました。カメラからはマウント部を取り出し、アダプターづくりの材料としました。レンズの方は幸いにもコンディションがよくガラスが綺麗でしたので、ヘリコイドグリスのみ交換して使うことにしました。レンズはずしりと重く、アルミなどの軽金属がまだあまり使われていない印象です。ヘリコイドを分解清掃しグリスを交換したのですが、ピントリングには依然としてトルク感があります。この時代のレンズは、こんなものなのでしょう。
★撮影テスト
前回取り上げたMAMIYA SEKOR F.C. と同一設計のレンズですので、解説はそちらと同じです。開放では写真の中心部のみシャープでスッキリと写り、中心から外れたところでは微かなフレアが被写体の表面を覆っています。オールドレンズならではの柔らかい質感表現です。ただし、ピント部の像は四隅まで緻密に解像されており、線の細い繊細な描写となっています。開放でフレアが出るぶんコントラストは控えめで、トーンは緩くなだらかなため、味のある美しい描写を楽しむことができます。ボケはやや硬めで、輪郭を残したザワザワとしたボケ味です。反対に前ボケはフレアに覆われ非常に柔らかいボケ味です。過剰補正気味の設定にして解像力を優先させている事がボケ味から間接的に確認できます。後のカラー時代のレンズではコントラストを重視していますので、通常ここまで過剰補正にはしません。近距離では背後にグルグルボケが出ます。絞りはよく効き、絞り込むとキリっとしたメリハリのあるトーンとすっきりとした描写に変わります。
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F1.7(開放) Nikon Zf(WB:日陰) |
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F1.7(開放) Nikon Zf(WB: 日陰) |
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F1.7(開放) Nikon Zf(WB: 曇空) |
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F1.7(開放) Nikon Zf(WB: 曇空) |
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F1.7(開放) Nikon Zf(WB: 曇空) |
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F1.7(開放) Nikon Zf(WB: 日陰) |
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F1.7(開放) Nikon Zf(WB: 曇空) |
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F1.7(開放) Nikon Zf(WB: 曇空) |
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F1.7(開放) Nikon Zf(WB: 曇空) |
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F1.7(開放) Nikon Zf(WB: 曇空) |
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