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2020/11/11

赤いコニカと緑のロッコール:プロローグ

赤いコニカ緑のロッコール プロローグ
6枚構成でF1.4に到達した
国産大口径レンズ
コニカとミノルタは、それぞれHEXANONとROKKORのブランドで数多くのレンズを市場供給した光学機器メーカーで、2003年に経営統合しコニカミノルタとなっています。コニカのレンズは赤褐色に輝くマゼンダ系コーティングとアンバー系コーティングの混合、ミノルタはグリーンに輝くアクロマチックコーティングが特徴で、特にミノルタのロッコールは「緑のロッコール」の愛称で親しまれてきました。

両社のレンズの中でいま特に注目したい製品は、F1.4の明るさをシンプルな6枚のレンズ構成で実現したHEXANON AR 57mm F1.4とROKKOR-PF 58mm F1.4の2本です。画質的な観点からみれば、F1.4の明るさのレンズは7枚や8枚で設計されているものが多く、現代レンズにより近い性能になります。事実、F1.4の明るさを実現した高速標準レンズは多くが、かつては7枚で設計され、今は8枚が主流です。一方、オールドレンズらしい個性溢れる描写に価値基準を置くならば、6枚で設計されている方が断然魅力的で、収差の魔力を求める事ができます。ところがF1.4の明るさで6枚構成のレンズは実は数えるほどしかありません。それだけに、このヘキサノンとロッコールはプレミアム・オールドレンズなのです。海外の製品では有名なAngenieux Type S21 50mm F1.5がやはり6枚玉です。

photographer: どあ*, model: 莉樺 & Re:Say(リセ),  赤と緑のカップ麺の元祖どん兵衛の「赤いうどん、緑のうどん」です。ロッコールユーザの写真家どあ*さんには緑のロッコールの使い手ですので、一活躍していただく予定です

2018/01/19

オールドレンズ専用のフィルムカメラ

おすすめのフィルムカメラをご紹介します
もちろんオールドレンズ専用機です
MINOLTA X-700 and YASHICA FX-3 Super 2000
昨年あたりから日本の10代~20代の若者の間でフィルムカメラが流行していることを知りました。インスタグラムが火付け役になっているそうで、知人が企画しているフィルム散歩会には男女を問わず多くの若者が集まります。しかも、参加者らは古くて安いマニュアルフォーカスカメラにオールドレンズをつけて使っているのです。最近はいろいろなコミュニティで「オールドレンズ用におすすめのフィルムカメラはありますか?」と尋ねられる機会も増えてきました。そこで、おすすめのカメラを2台ご紹介しますが、1台目はミノルタのX-700です。まずは、どんなカメラなのか写真でご覧ください。

MINOLTA X-700: 1981-1999年製造, MINOLTA SRマウント(フランジバック43.5mm < M42, EXAKTA, etc...) (GOOD!) ,  最高シャッタースピード 1/1000 (tough! 残念), 露出計: TTL開放中央重点測光/瞬間絞り込み測光, ミラーアップ方式:スイングバック(Great!), 明るさとピントの合わせ安さを両立させたアキュートマットスクリーンを採用(Great!), ファインダー視野率95%(GOOD!), ファインダー倍率0.9(GOOD!), フォーカッシングスクリーン: スプリットマイクロプリズム(中央)アキュートマット(周辺) (GOOD!),  重量 505g, カラーバリエーションはブラックおよびブラック/シルバーのツートン


一眼レフカメラの中ではフランジバックが比較的短いため、アダプターを使えばM42マウント、エキザクタマウント、デッケルマウントなどのユニバーサルマウントに対応でき、オールドレンズの選択肢が豊富にあります。中古市場では5000円以内で手に入るリーズナブルな価格帯にありますが、侮ってはいけません。このカメラには他にはないユニークな特徴が備わっており、私が手元に残した一眼レフカメラの中では最も使い出のある一台になっています。
まず、何と言っても重要な特徴は、ミラーアップの方式がスイングバックになっている点です。これは、ミラーが後退しながらはね上がるという仕組みです。シャッターを切る際にミラーがレンズの後玉に引っかかるトラブル(ミラー干渉)を未然に防ぐことができます。大方の一眼レフカメラはシャッターをきるとミラーが単純にはね上がるクイックリターン方式を採用しているのに対し、スイングバック方式はごく限られた高級機のみに採用されました。後玉が飛び出したレンズでも、このカメラなら使用できたという報告例が相次いでおり、後玉の飛び出し具合が特に著しいキルフィット製レンズでも使用できました。このカメラなら、数多くのオールドレンズが問題なく使用できます。そして、X-700のもう一つの特徴はピントの合わせやすさを極限まで高めた非常に明るく見やすいファインダーです。ここにはミノルタが独自開発したアキューマットスクリーンが使われており、これが実に素晴らしい。アキューマットスクリーンはあのハッセルブラッドにも採用されました。ピントの合わせすさでX-700の右にでるフィルムカメラは無いと言ってもよいでしょう。スクリーンの中央部はスプリットマイクロプリズムになっており、厳密なピント合わせを行う際に重宝します。また、ファインダー倍率が約0.9、視野率が約95%と高いのも魅力です。残念なのは最高シャッタースピードが1/1000までとごく平凡な点と、カメラの心臓部が電子式なので、半永久的に使える機械式とは異なり、いずれ寿命がくる点ですが、その分を差し引いても十分に魅力のあるカメラです。

詳しい事情はわかりませんが、m42-minoltaアダプターには無限遠のフォーカスを拾えない製品がかなりの割合で流通しています。記載文にハッキリと無限が出ないと書いてありますので、入手時には注意してください。無限遠のフォーカスが拾えることを保証している製品もありますので、探してみるとよいでしょう。

Minolta X-700 + Kilfit Tele-Kilar 105mm F4

続く2台目は、コシナがOEM生産しヤシカブランドで1993年に発売されたYASHICA FX-3 Super 2000です。シンプルな操作系と軽くて小さなボディ、壊れにくい構造が特徴で、中古市場では5000円以内で手に入ります。このカメラはヤシカブランドの国内最終モデルですが、なんとZeissとの提携により実現したコンタックス・ヤシカマウントが採用されており、名玉の宝庫、ヤシコンのカールツァイスレンズ群が使用できます。また、アダプターを使い数あるM42レンズ群を使用することもできます。ヤシカ・コンタックスマウントはフランジバックがM42マウントより極僅かに長いので、M42レンズが使用できるのは意外と思われる方も多いでしょう。無限のフォーカスを拾えるよう、アダプターの側でマウントを僅かに沈胴させているのです。

YASHICA FX-3 Super 2000: 1993発売, C/Y(コンタックス/ヤシカ)マウント:フランジバック45.5mm,  最高シャッタースピード 1/2000 , 露出計: 中央部重点 平均測光, ミラーアップ方式:クリックリターン, ファインダー視野率92%(GOOD!), ファインダー倍率0.91(GOOD!), フォーカッシングスクリーン: スプリットマイクロプリズム(中央),  重量 445g(Good!), カラーバリエーションはブラックおよび北米向け輸出モデルのみに供給されたブラック/シルバーのツートン

カメラの機能としての特徴は、露出計を除くカメラの心臓部が機械式のため、オーバーホールさえ続ければ半永久的に使用できる点、そして、最高シャッタースピードが1/2000と機械式にしては高速な点でしょう。X-700が弱点としていた箇所が見事に補完されています。外観はプラスティック感が漂っていますが、アルミダイキャストボディを採用しており、見かけによらず頑丈なつくりです。ファインダーの明るさはごく平凡でX-700には及ばないものの、ファインダー倍率0.91、視野率92%は立派なスペックです。スクリーン中央にはスプリットマイクロプリズムがついており、厳密なピント合わせを行う際に重宝します。

YASHICA Fx-3 super 2000 + Carl Zeiss Contarex Planar 85mm F2

2014/09/12

Spiral-733 ( 放射温度計MINOLTA IR630用レンズ ) converted M42

放射温度計とは物体から出ている熱放射(赤外光や可視光)の強度を測定し、そこから物体の温度を求める非接触型の温度計です。温度を求める原理には物理学のシュテファン=ボルツマンの法則とプランクの法則を利用しています
ミラーレス機があれば
何だって写真用レンズになる
Minolta放射温度計IR-630用レンズ Spiral-733 2.8/85
研究棟のごみ置き場で壊れた放射温度計のMINOLTA IR-630を拾いました。見るとレンズがついています。一応は大学のプロフェッサーの身分ですから、ゴミあさりなんて品格のない行為はいけません。キョロキョロとまわりを見回しサッと回収。ゴキブリ並みの行動力で獲物を確保しダッシュで立ち去りました。部屋に戻りこの子に電池を入れ自分の体温を測定してみると、何と733℃と表示されます。本体が完全にイカれているか、私がイカれた赤外発光体であるかのどちらかです。このまま墓場送りにするのはもったいないので、レンズのみを救出することにしました。分解すると綺麗なレンズではありませんか。構成はトリプレットで、イメージサークルはフルサイズセンサーを余裕でカバーしています。焦点距離は85mm前後で、絞りはついていませんが、口径比はF2.8あたりです。フランジバックは一眼レフでも十分に使える長さになっており、ヘリコイドもついています。M42マウントに変換し写真用レンズとして第二の人生を歩ませることにしました。この手のレンズを改造し流用することについてはミラーレス機が登場したおかげで、ずいぶんと度胸がつきました。
ヘリコイドを近接側いっぱいまで回し軽く力をいれると、カチッという音がして光学ユニットがヘリコイドから外れます。マウント部は3本のビスでネジ止めされており、これを外せばヘリコイドがマウントごと本体から外れます






放射温度計の本体からレンズをとりはずしたところ。本体は故障しているのでこのまま廃棄しました

レンズを外すには上の写真のようにマウント部のビス3本をマイクロドライバーで外します。すると、マウント部がヘリコイドごと本体から取り外せます。続いてM42マウントへの変換ですが、M42リバースリングとステップアップリングを用意します。リバースリングはeBayで9ドル(送料込み)、ステップアップリングはヤフオクにて500円程度で手に入ります。今回は43.5mm-49mmのステップアップリングを用いて解説していますが、据え付けがきついので、ひとつ上のサイズ(43.5mm-52mm)の方がよいでしょう。また、リバースリングもこれにあわせ、M42-52mmとなります。
 
M42リバースリング(左)とステップアップリング(右)。どちらも市販品として手に入れることができます


ンズのマウント部に鏡胴側からステップアップリングを逆さに被せ、反対側(カメラ側)からM42リバースリングをはめ、ネジで合体させます。マウント部に対し2枚のリングで包み込むように固定するのです。あとは光学ユニットを取り付け、下方からフランジ調整用のM42マクロチューブ(2.7cm丈)を取り付ければ完成となります
の写真のようにステップアップリングをレンズのマウントに対して鏡胴側から逆さに被せ、その反対側(カメラの側)からリバースリングを据え付け固定します。マウント部を包み込むように2枚のリングを前後からはめるのです。こうして無改造のままマウント部をM42ネジに変換することができました。あとはフランジバックの調整ですが、M42レンズとして使用する場合には27mm丈のM42マクロチューブを継ぎ足せばピタリと無限遠のフォーカスを拾うことができます。簡単な改造ですがこれで完成です。無名のレンズなのでSpiral-733と命名することにしました。
焦点距離(推定) 85mm, 口径比(推定) F2.8, フィルター径 40.5mm, 構成 3群3枚トリプレット(推定), MINOLTA IR-630専用レンズ, ガラス表面にはコーティングが施されています

ヘリコイドを近接側に繰り出すと、中からレンズ名とスペックが表れるようにしました.

撮影テスト
camera SONY A7
Spiral-733の写りに何を期待したらよいのでしょうか。愚問かもしれませんが、勿論それはシュールな世界を描き出す破綻した描写特性です。このレンズは写真撮影用ではないので、その期待に応える可能性は大いにあると考えられます。
イメージサークルはかなり大きく設計されており、中判カメラの6x6フォーマットにもケラれることなく対応できます。ただし、画質的な破綻が大きいので、おすすめはできません。今回はフルサイズセンサーを搭載したSONY A7で使用することにしました。しかし、それでも四隅における画質的な破綻は大きなものです。
Spiral-733はトリプレット型レンズですので写真中央部の解像力は高く、ハロやコマの少ないスッキリとヌケの良い写りとなります。コーティングの性能がよいためかゴーストやハレーションは出ず、階調こそ軟調ですが発色が濁ることはありません。像面が四隅に向かって近接寄りに大きく曲がっており、画面中央でピントを拾いながら画面いっぱいに被写体を捉えると、四隅ではピンボケを起こします。この手の像面湾曲レンズの特徴は後ボケが柔らかく綺麗に拡散することとフォーカス部の近くで放射ボケがみられることです。また、近接側ではグルグルボケもみられます。被写界深度が浅く見えるのも大きな特徴で、これは言わば写真の四隅に向かってティルトシフト(アオリ効果)が効いているのと同じことです。以下作例。
Sony A7(AWB)やりました!激しい像面湾曲と放射ボケが発生し、なんだか凄い写りです




Sony A7(AWB): 基本的に日の丸構図になります。周辺部の像の流れを活かせば迫力のある演出効果が得られます

Sony A7(AWB): ピントは中央にとっています。像面が大きく曲がっているため、中央から外れると直ぐにピンボケを起こします

Sony A7(AWB): さすがにトリプレット。ピント部中央には高い解像力があります









Sony A7(AWB): 後ボケは柔らかくとろけるように拡散しています

Sony A7(AWB): このレンズの手にかかれば、玉ボケも放射状に流れてゆきます














Sony A7(AWB): 収差設計の基準点が近接域なのかと思っていたら、遠方でもご覧のとおり高解像です



 
酔いそうになるような激しい作例たちでしたが、最後までご覧いただきありがとうございました。レンズは写真仲間の「ぽんちゃん」にプレゼントしました。ぽんちゃんによる写真もこちらに掲示しましたので、ご覧ください。カメラはオリンパスPen(デジタル)です。