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2020/03/02

Ichizuka Opt. Professional KINOTAR 50mm F1.4(C mount)



市塚光学の16mmシネマムービーレンズ
Ichizuka Opt. Professional KINOTAR 50mm F1.4
市塚光学工業株式会社(Ichizuka Opt.)は1951年より東京都新宿区下落合2丁目にてシネマムービー/CCTV用レンズを生産していた光学機器メーカーです[1]。主力製品は8mm/16mmフォーマット用レンズで、主に米国と日本に市場供給されました。OEM生産にも積極的に取り組む傍ら自社ブランドのCosmicarやミモザ社の登録商標であるKinotar/Kinotelでもレンズを製造[2]、広角から望遠、明るい大口径レンズまであらゆる種類のシネレンズを手掛けていました[3]。同ブランドには広角のWide-Angle KINOTAR、標準レンズのKINOTAR、望遠のKINOTEL、明るいハイエンドモデルのProfessional KINOTARなどがあります。同社は1967年にCosmicar Optical Co.に改称、COSMICARブランドやIZUKARブランドで産業用CCTVレンズを供給しますが、その後は経営不振に陥り旭光学(後のPENTAX / RICOHイメージング)の子会社となっています。旭光学の傘下ではCOSMICARブランドでCCTVレンズを生産し、現在もRICOHイメージングの傘下で生産を続けています。雑誌や広告に掲載されている情報をたよりに、中古市場に出回っているKINOTARブランドのレンズを列記しておきましょう[1,3]。これが全てではないかもしれませんので、もし他にもありましたら、お知らせいただければ追加してゆきたいと思います。

Wide-angle Kinotar
1.9/6mm(Dマウント); 1.5/15mm(Cマウント)

Kinotar
1.9/13mm(D); 2.5/7mm(D); 1.9/38mm(D); 1.4/38mm(D); 1.9/25mm(C); 1.9/12.7(C); 1.9/75mm(C) ; 1.9/15mm(C)

Kinotel
 1.5/75mm(C); 2.5/75mm(C); 3.5/75mm(C); 1.9/25mm(C) ; 1.5/38mm(D); 1.9/38mm(D); 2.5/38mm(D); 3.2/38mm(D); 3.5/38mm(D)

Professional Kinotar
1.4/12.5(C); 1.4/25mm(C); 1.9/50mm(C); 1.4/50mm(C); 2.5/75mm(C);  1.4/75mm(C)

今回は最近ヤフオクで手に入れたProfessional KINOTAR(プロフェッショナル・キノター) 50mm F1.4を取り上げます。設計構成は光の反射を見る限り4群6枚のガウスタイプと推測でき、同社のレンズの中では75mm F1.4に次ぐボケ量の大きなレンズです。イメージサークルはフルサイズセンサーこそカバーしていませんが、APS-Cフォーマットは充分にカバーしており、暗角(ダークコーナー)は全く出ません。


Professional KINOTAR 50mm F1.4: 重量(実測) 274g , フィルター径 40.5mm, 絞り羽 10枚, 絞り f1.4-f22, 最短撮影距離 1.5m強, cマウント, 定格イメージフォーマット 16mmシネマフォーマット
 
参考文献・資料
[1]アサヒカメラ 1958年10月広告
[2] United States Patent and Trademark Office
[3]Popular Photography ND 1957 4月; 1957 1月(米国)

入手の経緯
普通のKinotarはどれも安く手に入りますが、Professional KinotarF1.4クラスは別格で、日本よりも海外での評価が高く、eBayでは高値で取引されています。75mm F1.450mm F1.4は特に珍しいモデルでコレクターズアイテムとなっています。マイクロフォーサーズユーザーならProfessional Kinotar 25mm F1.4はまだ安くてオススメです。

本レンズは201912月にヤフオクに出品されていたものを競買の末に落札しました。オークションの記載はではレンズにクモリがあるとのことでしたが、ただの汚れで軽く拭いたところ完全にクリアになりました。

撮影テスト
本来は16mmシネマフォーマットに準拠した設計のレンズですが、今回はAPS-Cフォーマットで試写しまた。本来は写らない写真の四隅を拾うので画質的に乱れるのは当然ですが、ガウスタイプのためか、このレンズは開放でも四隅まで安定感があります。開放ではピント部ハイライトが微かに滲む適度に柔らかい些細な描写ですが、解像感は充分にあります。トーンはとてもなだらかで繋ぎ目がなく、開放付近ではオールドレンズらしい軟調な描写を堪能できます。発色は開放でやや淡くなるものの濁るほどではありません。絞ればフレアは消えスッキリとした透明感のある描写で、発色も鮮やかになります。グルグルボケや放射ボケはなくボケは安定しており、やや硬めの歯応えのあるボケ味で、なだらかなトーンを纏い良い味を出しています。逆光では簡単に虹が出ますので、活かすもよし、フードをつけて抑えるのもよし。フルサイズセンサーこそカバーしませんが、これだけ明るければAPS-Cセンサーでもフルサイズ換算で75mm F2相当の画作りができます。魅力的なレンズだと思います。
 
モデル 彩夏子さん
sony A7R2(APS-C mode)
F1.4(開放) sony A7R2(APS-C mode, WB:曇天)
F1.4(開放) sony A7R2(APS-C mode, WB:曇天)
F1.4(開放) sony A7R2(APS-C mode, WB:曇天)

 
ここまでかなり優等生ですが、逆光での写りはどうでしょう。最初の1枚目(下の写真)はフードをつけた場合ですが、ピント部をフレアが纏い、キラキラとした素晴らしい描写となります。続いてがフードをとった場合の写真です。ハレーションが盛大に発生し、なかなかの面白い画になります。虹が出ることもありました。このレンズはハマります。
 
F1.4(開放) sony A7R2(APS-C mode, WB:日光)
F1.4(開放) sony A7R2(APS-C mode, WB:日光)逆光ではこの通りに虹ありハレーションありの面白い画になります







FUJIFILM X-T20

最後にフジフィルムのX-T20での写真です。コントラストの高い描写であることがわかるとおもいます。四隅での光量の落ち具合がなだらかで、雰囲気ありますね。
 
F1.4(開放) FUJIFILM X-T20(WB:曇空) APS-Cは完全にカバーします。コントラストがいいですね




F1.4(開放) FUJIFILM X-T20(WB:曇空)縦写真を2枚貼り合わせました。ボケには安定感があります
   

2020/02/29

Showa-koki PIOTAR CINE Tele lens 75mm F1.8 (c-mount)






昭和光機の大口径シネレンズ
Showa-koki PIOTAR Cine Tele lens 75mm F1.8

昭和光機製造株式会社(現・昭和オプトロニクス株式会社)は1954年に東京の世田谷で創業した光学機器メーカーです[1]。創業時からカメラ用レンズや双眼鏡を生産し、1950年代にはアイレス写真機製作所の傘下でCORALレンズを供給しました[2]。1959年に日本電気(NEC)の関連会社となり、赤外線用レンズ、顕微鏡器機、レーザ用光学機器、高出力レーザ用コーティング技術の開発などを手掛け、現在は昭和オプトロニクス株式会社の名称で精密光学部品、精密光学機器、固体レーザ発振器の製造と販売を行っています。
今回紹介するレンズは同社が1950年代に生産したシネマ用レンズのPIOTAR(ピオター)75mm F1.8です。設計は3群4枚構成のゾナー型で、Cマウントを採用していますので16mmムービーカメラに搭載する望遠レンズとして使われました。レンズ名の語源は先駆者を意味するPIONEER(パイオニア)であろうと思われます。F1.8の明るさを僅か4枚のレンズ構成で実現するというかなりの無茶をしでかしていますが、パイオニア精神の生み出した意欲作であったに違いありません。収差レンズとして捉えるなら、これはもう面白いレンズであること間違いなしです。
 
Showa-Koki PIOTAR Cine Tele lens 75mm F1.8(C-mount): 清掃時に中を空けた際の見取り図(スケッチ)で、設計構成は3群4枚のゾナー型です。分厚いガラスと大きな曲率面で屈折力を稼ぎ、F1.8の明るさを実現しています

参考文献・資料
[1] SOC 昭和オプトロニクス株式会社沿革
[2] クラシックカメラ専科 No.22 朝日ソノラマ
 
SHOWA-KOKI PIOTAR 75mm F1.8(C-mount): フィルター径  約47.5mm, 絞り羽 12枚, 最短撮影距離 4feet(1.25m), 絞り値 F1/8-F22, 構成 3群4枚ゾナー型, コーティング付き, Cマウント

入手の経緯
レンズは2020年2月にヤフオク!で見つけ落札しました。出品者は古物商でカメラやレンズは専門外とのことなので、「ジャンク品」であることを宣言していました。この場合、状態がどんなに悪くてもクレームはできません。写真を見る限りクモリはなさそうでしたがレンズにはカビが多く発生しており、そのままの状態では使い物にはなりませんでした。久々の博打買いです。
さて、届いたレンズをバラしてクリーニングしてみたとこと、コーティングにはカビによるダメージが若干残りました。ただし、クモリやバルサム剥離などはなくカビ自体も完全に除去でき、ほぼクリアな状態まで持ってゆくことができました。ヘリコイドグリスを入れ替え各部スムーズに動くようになり、実用的には問題のないコンディションとなっています。
あまりに珍しいレンズなので中古市場での取引相場は定まっていません。イーベイに出せば高値が付くでしょうが、行き先はほぼ間違いなく中国人コレクターです。


出品者から化粧箱に入った状態で送られてきました。永い眠りから叩き起こすような感覚です。これからいっぱい活躍してもらいましょう

ライカマウントへの変換
レンズはもともとCマウントですが、マウント部を外すとイメージサークルが拡大し、フルサイズセンサーをカバーすることができます。せっかくですので特性アダプター(自作)を用意しマウント部をライカL/Mマウントに変換、フルサイズ機で使用することにしました。Cマウントのマウント部はイモネジを緩めるだけで簡単に取り外すことができます。 








後玉周りの鏡胴径は32mmあります。ゆるみ止めを塗れば32.5-M39アダプターリング(ポルトガル製)がピタリとジャストサイズで装着でき、マウント部を汎用性の高いM39ネジに変換することができます。続いてM39マクロエクステンションリング(光路長1cm)をとりつけます。ヘリコイドリングの内側に無限調整用のカムがありましたので、これを微調整し、ライカLスクリューマウント(フランジバック28.8mm)のレンズとして無限遠のフォーカスをピタリと拾えるようにします。下の写真は更にライカL→M変換アダプターを取り付けライカMにしたものです。ほぼ非侵襲の改造ですのでCマウントのオリジナル状態に戻すことは容易ですが、戻さないと思います。
特性アダプターを使いマウント部をCマウントからライカMマウントに変換しました。デザインにマッチするシルバーカラーのM39マクロリングをどうにかみつけて使用しています

ライカマウントに変換したことでイメージサークルは大きくなり、フルサイズセンサーをカバーできるようになりました。写真の四隅は本来は捨てていた部分ですので、かなり妖しい画質になりますが中央はマトモです。
 
撮影テスト
開放ではフレアが多めのソフトな描写ですが、中央はしっかり解像しており繊細な描写です。フォトショップの階調(レベル)を見てみるとビックリ。中間部の階調が驚くほど豊富に出ており、あまり見ないリッチなトーンです。写真の四隅は本来は捨てていた部分ですので画質的に乱れるのは当然で、フルサイズ機で用いると像面が大きく湾曲しピントは手前に来ます。また、ピント部背後はグルグルボケ、手前は放射ボケが発生します。歪みはほとんど見られず、画面の四隅でも真っすぐなものが真っすぐに写ります。
このレンズはピントの位置(像が最もシャープに写る位置)が像が最も緻密に写る位置からズレているため、緻密さを求める場合の「ピント合わせ」には技術がいります。フォーカスピーキングは役に立ちませんので、デジタルカメラのピント部拡大機能を使い、像が最も緻密に写る位置を自分の目で探り当てます。


F1.8(開放) sony A7R2(WB:日陰)まずはポートレート域での一枚ですが、開放ではかなりクラシックな写りです。2段も絞ればスッキリとした透明感のある画になります(こちら



F1.8(開放) sony A7R2(WB:曇天)続いて遠景。こちらも開放ではフレアが多めに出ます。被写体の前方には放射ボケが表れています。この場面、F4まで絞れば中央はスッキリと写ります(こちら
F4 sony A7R2(WB:曇天): 2段絞ればスッキリと写りますが、四隅には依然として放射ボケが残っています


F1.8(開放) sony A7R2(WB:曇天)開放ではボンヤリとしますが、それがこのレンズの持ち味です。雰囲気勝負のレンズです。F4まで絞るとまた違った印象ですが、放射ボケは残っています(こちら
 
絞り3段(F4→F2.8→F1.8)で画質の変化を見てみましょう。

F4 sony A7R2(WB:auto) 初めにF4dです。開放から2段絞ればピント部はスッキリと写ります。発色があっさりしているのはホワイトバランスをオートにしているためで、SONYのオートはこういう味付けで、ある意味で正直です
F2.8 sony A7R2(WB: auto)  絞りを1段開けます。ピント部はフレアに沈み、背後にグルグルボケが目立つようになります


F1.8(開放) sony A7R2(WB: auto)  開放です。ピント部はギリギリで解像しています。フレアは更に激しくなります

F1.8(開放)sony A7R2(WB:auto) 


F1.8(開放) sony A7R2(AWB) 中間部の階調が驚くほどよく出ており、フォトショップの階調(レベル)では、あまり見た事のないとてもリッチなトーンが出ています
F1.8(開放)sony A7R2(WB:auto)しかし、このレンズはよく回ります。お見事としか言いようがありません












2019/08/01

Hugo Meyer Görlitz PRIMOPLAN 2.5cm F1.5(C mount)





写真レンズの本来の使命は、被写体の真の姿を忠実に写し撮ることです。記録写真や報道写真の分野ではこの考え方が最も重視され、出来る限り無収差に近いレンズが追及されてきました。しかし、このようなレンズがあらゆる分野に歓迎されるわけではありません。例えば写真を表現の一手段と捉える創作活動の分野では、表現者の意図を汲み取ることのできるレンズが選ばれます。女性を被写体とするポートレート写真やある種の風景写真では、シャープな描写が時には欠点にもなります。カメラ女子の人口が急伸している現在、忠実な描写よりも美しい描写、レトロでお洒落な写真を望む声が以前にもまして大きくなっています。 

女子力向上レンズ part 4
プリモプランの原型と言える
エルノスター型プリモプラン
Hugo Meyer PRIMOPLAN 2.5cm F1.5(C mount)

ふんわり、ぼんやり、でもシッカリと緻密に写るオールドレンズ女子の嗜好にストライクなレンズ、そのひとつが戦前にドイツのMeyer-Optik(マイヤー・オプテーク)が16mm用ムービーカメラ用として供給したPrimoplan(プリモプラン) 25mm F1.5です。カメラ女子から圧倒的な支持を得ているオリンパスのマイクロフォーサーズ機との相性も良く、明るい標準レンズとして大活躍すること間違いなしでしょう。

プリモプランと言えばスチル撮影用につくられた口径比F1.9のモデルが有名で復刻版まででていますが、今回紹介するのは1935年に登場した16mmムービーカメラのBOLEX 16H Leaderに搭載する交換レンズとして供給されたシネマ用のモデルで、口径比は明るいF1.5です。ピント部はよく滲み、前ボケは崩壊気味なので、写真家というよりはアーティストが使いそうな類の魔力系レンズです。

設計構成は良く知られているスチル撮影用のモデルとは異なり、その原型ともいえる4群4枚のエルノスターI型です(下図)。スチル撮影用に供給されたプリモプランがエルノスタータイプやその始祖であるトリプレットタイプ(TORIOPLAN)から派生したレンズであることを示す決定的な証拠といえます。レンズを設計したのは第二次世界大戦前にMeyer-Optik社の主任レンズ設計士としてプリモプランシリーズの設計を統括したポール・シェーファーという人物です。
F1.5のプリモプランには希少性の高い焦点距離5cmのモデルもあり、こちらは極めて数が少ないため、コレクターズアイテムとなっています。米国ではB&H EXTOLという製品名でも販売されました。
Primoplan 25mm F1.5と同型のエルノスターI型(エルネマン社)の設計。構成は4群4枚で、トリプレットの前方に正の凸レンズを据えることで大口径化を実現している
レンズには純正フードとBOLEXの保証書(シリアル番号入り)がついていました
 
入手の経緯
レンズはeBayにてドイツのおじいちゃんコレクターから購入しました。この方は本レンズ以外にもカメラやアクセサリーのコレクションを大量に売り出していました。自己紹介欄に写真があり80~90歳あたりの高齢者のようで、使わなくなったので身の回りの物を整理しているとのことです。終活中なのでしょうか。
レンズにはシリアル番号入りの保証書が付いていました。メイヤーの台帳を見るとレンズの製造年は1937年前後ですが、保証書の刻印は1941年になっています。当時は大戦中なので人の手に渡るまでに時間を要したみたいです。スナイプ入札を試みたところ2万円台(送料込でも3万円)であっさりと落札することができました。eBayでの取引相場は350ドル~400ドル(4万円前後)あたりで、日本国内でもほぼ同じ相場(4~5万円あたり)で取引されています。届いたレンズはとても状態が良く、長い間ずーっと大切にのしてきたのでしょう。
重量(実測)149.7g,  絞り羽 12枚, 絞り値F1.5-F16, 最短撮影距離 0.45m, S/N: 829040(1937年製), 構成 4群4枚(エルノスター I型), Cマウント(Bolex 16H用), ノンコート






撮影テスト
とても軟調なレンズで発色は淡く、オールドレンズっぽい落ち着いた雰囲気になります。開放ではピント部全体に僅かにフレアが入り、しっとり感の漂う柔らかい描写傾向です。またハイライト部に適度な滲みが入り、ファンタジックな画作りができます。中心部は開放からシャープで、絞るほど良像域が四隅に向かって広がります。2段も絞ればスッキリとしたヌケの良い描写になります。グルグルボケは背後ではなく前ボケに発生します。これは活かし方次第で面白い写真が撮れるとおもいます。背後のボケは四隅まで乱れることなく距離によらずに安定しています。定格イメージサークルを超えるマイクロフォーサーズセンサーで写真を撮るとコマ収差が顕著に目立ち、周辺部で玉ボケが三角形の形状に変形します。典型的な球面収差の過剰補正型レンズですが、滲みが入るため背後のボケがうるさい感じにはなりません。最短撮影距離は0.45mなので、不満な場合はCマントレンズ用の接写リングをポケットに用意しておくとよいと思います。また、四隅のケラレを避けたい場合は下の写真のようにフードを外してしまうか、カメラの設定でアスペクト比を16:9に変えるとよいでしょう。
マイクロフォーサーズ機で使用する場合には、四隅が僅かにけられますので、避けたい場合には上の写真のようにフードを外します。これで、ケラレは全く生じません。逆に光量落ちを残したい場合は、フードをつけたままカメラの設定メニューでアスペクト比を16:9に変えるとよいとおもいます。
 
Lens: Primoplan 1.5/25 (フード付き
Camera: Olympus PEN E-PL6 
(Micro 4/3 sensor, Aspect ratio 16:9)
F1.5(開放)フード付き,  Olympus E-PL6(AWB, Aspect Ratio 16:9) 前ボケは独特でグルグルボケが面白い感じに出ます。軟調な描写のためか発色はやや淡い感じで、お洒落に仕上がります
F1.5(開放)フード付き,  Olympus E-PL6(AWB, Aspect Ratio 16:9) 薄いフレアに覆われ、しっとりとした柔らかい描写です
F1.5(開放)フード付き,  Olympus E-PL6(AWB, Aspect Ratio 16:9) フレアに覆われ、背後のボケがはじけています
F1.5(開放) フード付き, Olympus E-PL6(AWB, Aspect Ratio 16:9) 

F1.5(開放)フード付き,  Olympus E-PL6(AWB, Aspect Ratio 16:9) アスペクト比16:9なら引き画でもケラレは出ません。深く絞ればケラれますが









F1.5(開放)フード付き,  Olympus E-PL6(AWB, Aspect Ratio 16:9) 

 


Lens: Primoplan 1.5/25 (フード外し
Camera: Olympus PEN E-PL6
(Micro 4/3 sensor, Aspect ratio 4:3)
モデル 菅 彩夏子さん
F1.5(開放)  フード外し,  Olympus E-PL6(AWB, Aspect Ratio 4:3) アスペクト比は4:3に戻しました。フードを外すと四隅のケラレは全くでなくなります
F1.5(開放)  フード外し,  Olympus E-PL6(AWB, Aspect Ratio 4:3) 開放での後ボケはかなり独特です








Camera: Fujifilm X-T20 
(APS-C sensor / Aspect ratio 1:1)
Lens: Primoplan 1.5/25 (フード付き
F1.5(開放)フード付き,   Fujifilm X-T20(AWB:Aspect ratio 1:1)

F1.5(開放)フード付き,   Fujifilm X-T20(AWB:Aspect ratio 1:1)







  
続いてうらりん(@kaori_urarin)さんにご提供していただいた写真作品をご覧いただきます。このレンズ独特のボケ味が活かされていますうらりんさんのインスタグラムにも是非お立ち寄りください。こちらです。


Photographer: うらりん
Camera: Olympus PEN-F
フード装着


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Masako Hondaさんからはフードを外しケラレを除外した写真をご提供いただきました。屋内(すみだ博物館)での写真ですので、プリモプランらしさはあまり出せなかったとのこと。オリンパスPEN E-PL8(アスペクト比4:3)でケラレは出ていません。
 
Photographer: Masako Honda
Camera: Olympus PEN E-PL8
フード外し
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2019/05/14

Kern-Paillard SWITAR RX 25mm F1.4(c-mount)



フンワリ、ボンヤリ、でもシッカリ写るレンズはオールドレンズ女子の強い味方。スイスのKern社から1956年に登場したスイターRXシリーズもその手のレンズです。スイターといえばマニアもたじろぐ高級ブランドですが、Cマウント版なら実用主義のカメラ女子にも無理なく買える手頃な値段なのでオススメです。
 
特集:女子力向上レンズ PART 3
寄ればフワトロ、引き画でスッキリの変化系レンズ
Kern-Paillard SWITAR H16 RX 25mm F1.4 
Kern(ケルン)社のSwitar(スイター)シリーズには搭載するBolex(ボレックス)というカメラの仕様に応じてARRXという2種の姉妹レンズがあり、これらをデジタル一眼カメラで使用する場合には全く異なる性格の描写を楽しむことができます。いずれのタイプもイメージサークルはマイクロフォーサーズセンサーをギリギリでカバーでき、鏡胴もコンパクトなためカメラ女子の多くが愛用するオリンパスPENOM-Dにはピッタリのオールドレンズです。ARRXの画質についてはホームページ[1]にとても詳しい比較・検証記事があり参考になります。ザックリと言ってしまえば、ARは開放からシャープでスッキリとしたヌケの良い描写が特徴の「完全補正型」と呼ばれる性格のレンズで、もう一方のRXはピント部の像が滲みを伴いながらトロトロととろけ、背後の滑らかなボケへと沈んでゆく典型的な「補正不足型」です[7]。背後のボケ量は大きく、柔らかく美しい描写が特徴ですが、こうなるにはコントラストや解像感が多少は犠牲になります。でも、どういうわけかこのレンズは例外的にコントラストがよく発色も鮮やかなのです。まぁ、程度の問題なのでしょうけれど。
開放からキッチリとシャープに写るARと、滲み系フワトロレンズのRX。皆さんはどちらが好みですか。たぶんAR好きは比較的男性に多く、RX好きは女性に多いような気がしています。
SWITAR RXの描写がソフトなのは、このレンズを搭載して用いたムービーカメラの特殊な機構に由来しています。カメラには分光プリズムによって光の25%をファインダーに導く仕組みが備わっていました[参考文献2-3]。ところが、レンズとフィルムの間にプリズムを1枚入れると光学系全体では球面収差が補正不足(アンダーコレクション)になり、完全補正を実現するには再度補正しなければなりません。Switar RXにははじめからプリズムの影響を考慮した設計が施されており、球面収差をレンズとプリズムが協力して補正するようにつくられました。つまり、プリズムを省きレンズ単体になると補正不足型に戻ってしまうのです[3]。球面収差を意図的に補正不足にする手法はソフトフォーカスレンズに施されているものとほぼ同じで、違いは程度の問題だけです。ただし、SWITAR RXの場合は意図的にこうなったわけではなく、プリズムの省略による副作用以外の何もでもありません。でも、おかげでフツーによく写るレンズとは一線を画す特別な描写設計(常用もできるやや補正不足の使いやすいレンズ)となったわけで、これはもう嬉しいアクシデントと考える方が幸せです。
 
Kern Switar 25mm F1.4:[文献4]に掲載されていた構成図のトレーススケッチ(見取り図);  左が前方(被写体側)で右が後方(カメラ側)。設計構成は4群6枚のプリモプラン発展型(Advanced -PRIMOPLAN type)。絞りが4群の手前にあるのは、第4群の前後移動でピントの位置を変えるインナーフォーカス機構のためです[参考5]

SWITAR RXシリーズは1956年に登場したBolex H-16 Reflexという映画用カメラの交換レンズとして、カメラとともに発売されました[6]。ケルンといえばライカを凌ぐ高級ブランドでしたので鏡胴のつくりは感心するほど良く、下の写真のように非写界深度のレンジを示したオレンジ色の帯が絞りリングの回転に連動して伸縮する凝った仕掛けになっています。また、この時代としては革新的なインナーフォーカス機構が導入されており、後玉の前後移動でピントが拾える仕組みになっています[5]。マニアやコレクターが好んで所有するのもよくわかります。タイプRXには今回紹介する25mm F1.4以外にも10mm F1.6, 16mm F1.8, 50mm F1.4があり、Pizar 25mm F1.5Pizar 50mm F1.8にもRX版が用意されました[6]。ちなみに焦点距離が長いほどプリズムの影響は小さく、75mm以上のモデルにRX版はありません[3]。レンズの設計は上の図に示すようなプリモプランからの発展型で、ユニークかつ豪華な構成形態です[4]。小さいくせに手に取るとズシリと重く、存在感たっぷりのレンズです。

 
参考文献・資料
[1] hubbll's Photo Leaf: Kern-Phillandの25mm F1.4のARとRXの写りはどう違うのか?
[2] Bolex Product News From Paillard," No. 5, (New York: Paillard Incorporated, June 25, 1974).
[3] BOLEX COLLECTOR: Lenses for Bolex 16mm Cameras
[4]Photographica Cabinett 30, Das Magazin für Sammler Dezember 2003
[5] 出品者のひとりごと・・: Kern-Paillard Switzerland
[6] BOLEX COLLECTOR: Kern-Paillad lenses
[7] 日本ではSWITAR RXが過剰補正型であるという誤った情報が広く流布していますが、この誤解は文献[2,3]の記載が紛らわしいために起こったものであると推測されます。よく読めばRXが補正不足であることはわかりますし、レンズの描写はそもそも典型的な補正不足型です。文献[3]の中の他の図は無視しFigure 4とFigure 7のみを見てください。RXを見立てたFigure 7のレンズが再び単玉に戻っている点を見落としてはいけません

入手の経緯
レンズは中古市場に数多く流通しています。ここ最近のCマウント系レンズは世界の相場よりも日本国内の相場の方が安く、本レンズもeBayでの中古相場は35000円~40000円あたりであるのに対し日本国内での相場は20000円~25000円程度、今買うなら国内だと思います。私は20195月にヤフオクで状態の特に良い個体を2本みつけ、25000円と30000円で購入しました。ちなみにSWITAR ARの方が10000円程度安く取引されており、まともに写るレンズの方が人気が低いという逆転現象が起こっています。届いたレンズは両方とも完璧に近いコンデイションで、一方はマウント部のネジにも全くスレがみられませんでした。未使用(オールドストック)の保管品だったのではないかとおもいます。

Kern SWITAR 25mm F1.4 H16 RX: フィルター径 31.5mm, 最短撮影距離 1.5feet(約45cm), 絞り値 F1.4-F22, 重量(実測)136g, 絞り羽根 9枚, 設計構成 4群6枚プリモプラン発展型, フォーカス機構 インナーフォーカス, イメージフォーマット 16mmシネマフォーマット, Cマウント, 深く絞るとケラれますが開放からF2.8あたりまでは問題なし。アスペクト比16:9で用いるなら、開放からF4までケラレなく使えます


 
撮影テスト
開放でのコントラストはARシリーズよりも、むしとRXの方が良好です。
近接撮影時にはピント部を薄いフレアが覆い、ソフトフォーカスレンズに近い柔らかい描写傾向になります。これは近接時に補正不足型レンズとしての性質が一層強まるためで、この性質変化のことを収差変動といいます。フレアはポートレート域から遠景を撮影する場合には収まり、スッキリとしたヌケの良い像、クッキリとした鮮やかな発色など、コントラストの高いシャープな描写になります。解像力は平凡ですが、そもそも感覚と印象で勝負するカメラ女子達に現代レンズのような高い解像力は要りません。近接撮影では気になりませんが、引き画では像面湾曲と非点収差が目立ち、四隅の像が放射気味に流れます。気になる場合にはカメラの設定で写真のアスペクト比を16:9に変更すると良いでしょう。四隅が切り取られ像の乱れがだいぶ緩和されますので、おすすめです。背後のボケはこのクラスにしては大きく、ピントが外れたところから急激にボケてゆきます。ボケ味は素直で美しく、滲みを纏いながらトロトロととろけるようにボケてゆき、少し絞っても画質の変化があまりありません。マイクロフォーサーズ機でも大きな後ボケの得られる、有難いレンズだと思います。
今回もオールドレンズ女子のお力添えをいただくことになりました。

Photographer: spiral
Camera: Olympus PEN E-PL6(Aspect ratio 16:9)

F1.4(開放) Olympus E-PL6(AWB, Aspect ratio 16:9) ピントが外れたところから急激にボケてゆきます。背後のボケが大きく滲むのもこのレンズの近接撮影時の特徴です
F1.4(開放) Olympus E-PL6(AWB, Aspect ratio 16:9) 近接撮影時はピント部も滲み、柔らかい像になります

F1.4(開放) Olympus E-PL6(AWB, Aspect ratio 16:9) 

F1.4(開放) Olympus E-PL6(AWB, Aspect ratio 16:9) コマ収差が強めにでています











F1.4(開放) Olympus E-PL6(AWB, Aspect ratio 16:9) 引き画になると急にヌケがよくなります。撮りますよ!




F1.4(開放) Olympus E-PL6(AWB, Aspect ratio 16:9) 撮りました!。コントラストは良好。四隅で像の流れが顕著に目立ちます


F1.4(開放) Olympus E-PL6(AWB, Aspect ratio 16:9)

今回、登場していただのは我が家のご近所にお住いのMinako Sugaiさんです。イングリッシュガーデンで撮ったお写真とのこと。

Photographer: Minako Sugai
Camera: Olympus PEN-F
 
Olympus Pen-F, Photo by Minako Sugai


Olympus Pen-F, Photo by Minako Sugai