おしらせ


2023/04/21

DALLMEYER 38mm(1.5 inch) F1.9 TV lens


ダルマイヤーのテレビジョンレンズ
DALLMEYER 1.5 inch (38mm) F1.9 TV lens
converted to Leica M mount

ダルマイヤーの明るいレンズはどれも恐ろしい値段で取引されているので手が出せませんが、Dマウントのこのレンズならどうにか気軽に買えるので手に入れてみました。英国Dallmeyer社がTV撮影用に市場供給した8mmのシネマムービー用レンズです。ネット上には焦点距離の異なる4種類のモデル 1inch(25mm) F1.9,  1.5inch(38mm)F1.9, 2inch(51mm)F1.9,  3inch(76mm)F1.9の存在を確認することができます。Dマウントでは使えるカメラが限られてしまいますので、CマウントやライカMマウントに改造されている事例を多く見ます。焦点距離が38mmあれば、レンズのイメージサークルはAPS-Cセンサーを包括できるかもしれませんし、汎用性の高いライカMマウントに改造できるかもしれません。あれこれ甘い期待を抱きながらレンズを入手し、さっそくライカMに改造するための試行錯誤に取りかかりました。
レンズの設計や製造年代など製品に関する情報はなかなか見つかりませんが、光の反射から判断すると、設計構成は3枚玉のトリプレットのようです。

入手の経緯
2019年の夏にeBayを介して英国の個人出品者から153ポンドで入手しました。eBayでの取引相場はよくわかりませんが、しばらく売買の様子をウォッチして2万円以内なら良いだろうという感触をつかんでいたので、おそらくその辺りが相場ではないかと思います。傷、カビ、クモリ等のないコンディションの良い個体が届きました。
 
Dallmeyer 1.5 inch F1.9: 最短撮影距離 0.9m(3 feet), 絞り F1.9-F16, 重量(実測)67g, 絞り羽 10枚, もともとはD-mountだったモデルだが改造でライカMに変換されている


今回はレンズをマイクロフォーサーズ機やAPS-C機で使いたいので、ケラレの原因となるDマウントのマウント部分を取り外し、ライカMマウントに改造しています。改造にはCマウント to M39アダプターとライカL-M変換アダプターを組み合わせて使いましたが、このレンズはピントリングがマウント側にある仕様のため、改造の結果、ピントリングの取り回しが窮屈になってしまいました。はじめから本体のヘリコイドは捨て、外部ヘリコイドに載せてライカL39あたりにするのが正解だったと思います。このままミラーレス機用のヘリコイド付きアダプターで使うこととしました。
 
撮影テスト
イメージサークルは広くマイクロフォーサーズセンサーを充分に包括できますが、像面湾曲が大きく出るので、被写体の平面性が最も高くなる遠景を開放で撮影すると、四隅の画質がピンボケを起こします。近距離撮影時ならば平らな被写体を取ることがほぼ皆無なので、像面湾曲はあまり目立たなくなります。ちなみに一回り大きなAPS-Cセンサーでは四隅がハッキリとケラれてしまいましたので、アスペクト比を1:1にする必要があります。開放からコントラストとシャープネスは高く、スッキリと抜けの良いレンズです。もう少しセンサーサイズの小さなデジタルカメラ(Nikon 1やPentax Qなど)で用いる方が画質は安定しますので、人によってはこの方が使いやすいかもしれません。
 
マイクロフォーサーズ機(Olympus E-PM1)での作例
F1.9(開放) Olympus PEN E-PM1 (WB:auto) 遠景撮影は被写体の平面性が最も高いので、像面湾曲が大きく、絞らないと四隅のピンボケが目立ちます

F5.6  Olympus PEN E-PM1(WB:auto) 絞れば少しは被写界深度の広がりでピンボケが改善します。この画像は開放だとこちらのようになります。

F1.9(開放)  Olympus PEN E-PM1(WB:auto) マイクロフォーサーズ機で8mmレンズはハードルが高いということが、よくわかりました。
APS-C機(Fujifilm X-T20)での写真作例
APS-C機では写真の四隅に大きなダークコーナーが発生しますので、カメラの設定を変え、写真のアスペクト比を1:1にする必要があります。何枚か写真を御覧ください。
F1.9(開放) Fujifilm X-T20(Aspect ratio 1:1, WB:auto, Film simulation: CC)

F5.6 Fujifilm X-T20(Aspect ratio 1:1, WB:auto, Film simulation: CC)

F1.9(開放) Fujifilm X-T20(Aspect ratio 1:1, WB:auto, Film simulation: CC)


2023/04/11

Taylor & Taylor Hobson / BELL & HOWELL Super Comat 1inch(25mm) F1.9, c-mount

小さくて丸っこい樽型レンズ
TAYLOR, TAYLOR & HOBSON / BELL & HOWELL 
SUPER COMAT 1inch 25mm F1.9 c-mount
樽みたいな丸みのある形状に、ほぼ一目惚れ状態で購入してしまいました。設計構成なんてどうでもいい。あなたじゃなきゃダメなんです。英国Taylor, Taylor & Hobson(T&H)社と米国Bell&Howell(B&H)社がB&H製16mmシネマカメラのFILMO AUTO LAODFILMO AUTO MASTER搭載する交換レンズとして同時供給した、Super Comat(スーパー・コマート)です。中古市場にはT&H製(Made in England)B&H製(Made in USA)の同一個体が流通しており、さらにB&H Super Comat made by T&H, Englandの表記個体まで存在します。どちらが作ったのか、もはや全くわかりません。レンズの設計構成は不明ですが、光の反射から推測すると前群3枚、後群1枚の4群4枚エルノスター型で間違いなさそうです。ならば、線が太く、コントラスト重視の力強い描写設計が期待できます。どんなもんでしょう。

左がBell&Howell製、右がTaylor&Hobson製の個体。同一個体です


中古市場での取引価格
eBayでは10000円から15000円程度で取引されているレンズで、Taylor HobsonブランドとBell Howellブランドでの価格差はありません。ヘリコイドグリスが劣化し、ピントリングが硬い個体が多いので、グリスを交換する必要がありますが、一般的なレンズよりもヘリコイドの構造が単純で、グリスの交換は簡単でした。

Super Comat 1inch(25.4mm) F1.9: 最短撮影距離 46cm, 絞り F1.9(T2.1)-F22, 絞り羽 6枚構成, フィルター径 23mm前後, 設計構成 4群4枚, 重量(実測)67g, Cマウント




撮影テスト
解像力よりはコントラストで押す線の太いタイプのレンズで、中央はシャープなイメ―ジが得られ、発色も鮮やかです。16mmシネマ用のレンズにしてはイメージサークルに余裕があり、マイクロフォーサーズセンサーでも四隅が僅かに暗くなる程度で充分に実用的です。ただし、四隅は本来は写らない領域ですので、樽型の歪みやグルグルボケが目立つことがあります。気になるようでしたらイメージフォーマットを16:9に変えてしまえばよいでしょう。映画に近いアスペクト比ですので、これはこれでおススメの設定です。近接撮影時には背後にグルグルボケが目立つことがありました。F2.8からF5.6の間で絞り羽の形状が星形になり星ボケが出ました。うまく利用すれば面白い写真がとれます。

マイクロフォーサーズ機(Olympus PEN)での写真作例

F1.9(開放) Olympus PEN E-PM1(WB:日光)
F1.9(開放) Olympus PEN E-PM1(WB:日光)近接ではグルグルボケが出ます
F1.9(開放) Olympus PEN E-PM1(WB:日光)

F1.9(開放) Olympus PEN E-PM1(WB:日光)
F1.9(開放) Olympus PEN E-PM3(Aspect Ratio 3:2) カメラの設定でアスペクト比を変えればダークコーナーは全く出ません


APS-C機(Fujifilm X-T20)での写真作例
センサーサイズが一回り大きなAPS-C機ではカメラの設定を変え、アスペクト比を1:1に変更すればマイクロフォーサーズセンサーとほぼ同等の対角線画角になりますので、ダークコーナーの発生は僅かです。

F5.6 Fujifilm X-T20(Aspec ratio 1:1, WB:Auto, Film Simuration: CC)

F1.9(開放) Fujifilm X-T20(Aspec ratio 1:1, WB:Auto)


F1.9(開放) Fujifilm X-T20(Aspec ratio 1:1, WB:Auto, FS:Standard)

F1.9(開放) Fujifilm X-T20(Aspec ratio 1:1, WB:Auto, FS:CC)

F1.9(開放) Fujifilm X-T20(Aspec ratio 1:1, WB:Auto, FS:Standard)

F5.6 Fujifilm X-T20(Aspec ratio 1:1, WB:Auto, FS:Stndard)
F1.9(開放) Fujifilm X-T20(Aspec ratio 1:1, WB:Auto,FS:CC)

F1.9(開放) Fujifilm X-T20(Aspec ratio 1:1, WB:Auto, FS:CC)
F2.8 Fujifilm X-T20(Aspec ratio 1:1, WB:Auto, FS:CC)
F1.9(開放) Fujifilm X-T20(Aspec ratio 1:1, WB:Auto, FS:CC)