おしらせ


2011/11/17

Dallmeyer Dallon Tele-Anastigmat
6 inch(152.4mm) F5.6 (改M42)



戦前に生産されたダルマイヤーを
現代のカメラにマウントする!!
世の中には戦前のレンズを愛し、改造して現代のカメラで用いる猛者が国内外を問わずウヨウヨといる。戦前のレンズはシャキッとは写らないものが多いし、発色は淡白になりやすい。ピントは来ているのか来ていないのか定かでない時があり、開放絞りで良く写るのは中央部だけ。彼らはいったい何を望んで、そこまで古いレンズに走るのだろうか。彼らのブログをチラッと覗き見る限りでは、内容は至って真面目。特に変態というわけでもなく自虐プレーを楽しんでいるわけでもない。猛者達に共通しているのは、コントラストやシャープネスといった現代のレンズが得意としている描写性能への執着を捨て、画質的に厳しいはずの古いレンズから特別な何かを得ているようなのである。もしかしたら、彼らは画質として破たんするギリギリの境界線上にオールドレンズ遊びの「究極」を追い求めているのではないだろうか。今回の一本は英国の老舗レンズメーカーDallmeyer(ダルマイヤー)社が戦前の1930年代に製造したテレポートレンズのDallon(ダロン) 152㎜ F5.6である。
Dallonの鏡胴は真鍮でできており耐久性が高くズシリとした重量感がある。ガラスにはコーティング(光の反射防止膜)がないため逆光撮影ではフレアが盛大に発生する。屋外での使用時はコントラストが低下気味になる
このレンズはイギリスから入手した時点で、既に前のユーザーがM42マウントに改造を施していた。イメージサークルは35㎜フォーマットをカバーし、バックフォーカスが長いので、一眼レフカメラでも支障なく使用することができる。ダルマイヤーの製品はシリアル番号から製造年代を照合するためのデータベースが整っていないようで、現在ネットに公開されている情報から追跡調査ができるのは1910年以前に生産された最も古い製品のみとなる。本品の製造時期も正確には知ることができない。ただし、1935年~1938年に製造されたたExaktaやNacht-Exaktaというカメラの多くにシリアル番号の近いダルマイヤー製レンズが搭載されているので、そのあたりの時期なのであろう。Dallonのブランド自体は1927年に刊行された浅沼商会のカタログ「Catalogue Photo Supplies 1927:写真機械材料目録」で確認できるので、光学系が設計・開発されたのはそれよりも前となる。
Dallonの光学系は2群4枚で古典的なBis-Telar型(1905年)の望遠基本形である
絞り値 F5.6-F32, 最短撮影距離 約2.5m, 重量(実測) 435g, 絞り羽数 14枚,フィルター径 21.5mm前後。レンズには真鍮素材の純正フードとキャップがついていた。レンズが生産されたのは、おそらく1930年代半ばから1939年頃にかけてであろう

★創設者J.H.Dallmeyer
John Henry Dallmeyer(1830-1883)は1830年にドイツWestphaliaのLoxtenに地主の息子(次男)として生まれたドイツ系英国人である。幼いころから科学の才能に恵まれ、1951年に英国ロンドンに来ると、Andrew Rossが1830年に設立したレンズと望遠鏡の会社で職を得た。DallmeyerはRossから優秀な部下として一目置かれていたが同社における待遇に満足することができず、また英語が堪能ではなかったことや控えめな性格が原因で、同僚達からは「紳士」と呼ばれ揶揄されていた。結局、組織に馴染むことができずフランスとドイツに拠点を持つコーヒー輸入業者に転職してしまう。しかし、一年後にRossがDallmeyerを連れ戻すため説得、一般労働者ではなく技術顧問として再びRossの会社に迎え入れた。その後、Rossの深い信頼を得たDallmeyerは彼の次女ハンナ・ロスと結婚する。1859年にRossが死去すると、その遺産の1/3と望遠鏡工場を相続、1860年にDallmeyer社(英国ロンドンが拠点)を創設し写真レンズの製造に着手した。彼はレンズの研究と改良に熱心で、1862年に色消しトリプレット、1866年には広角レクチニリアとラピッド・レクチリニアを開発し、風景撮影用レンズと人物撮影用レンズの分野に大きな功績を残した。ロシア政府は彼にORDER of St STANISLAUS賞を、フランス政府はCHEVALIER of the LEGION of HONOUR 賞を与えている。晩年のDallmeyerは病気の療養に専念し、会社は次男のトーマス(Thomas Rudolphus Dallmeyer)が引き継いでいる。その後、1883年に療養のための船旅の途上、ニュージーランド沿岸の船上で死去している。


★入手の経緯
今回紹介するDallonは2010年9月にeBayを通じて英国ロンドンの個人から入手した。出品時の商品の解説は「M42マウントに改造されたDallmeyer Dallon。ドリーミーなボケが得られ。ビデオワークにも適している。ヘリコイドリングはスムーズ、絞り羽にオイル染みはなく、目視できるクモリやカビはない。クリーニングマークもない。レンズは現在、コレクターが所持しており、コレクターは資金調達のために手放そうとしている。」とある。戦前のレンズにそんなきれいな品が残っているはずはなく、この解説には初めから半信半疑であったが、出品者は返品に応じるサインをだしていたので入札してみることにした。商品は200ドルの値からスタートし、これに4人が入札した。締切日の前日に390ドル(3万円)で入札し放置したところ、次の日に353ドル(2.7万円)で落札されていた。Dallmeyerのレンズは希少性が高く流通量が少ないため、Dallonについても正確な相場は不明だが、状態の良いものには800ドルの値がつき売られている。人間でいえば75歳を超えるお爺さんであり、経年劣化のシミやしわが出ていてあたりまえ。ピチピチでプリプリの爺さんを期待するのは大間違いであろう。かなりの痛みがあることは覚悟していたが、2週間後に届いた品は驚いたことに実用レベルの品であった。もちろん、強い光を通してチェックすれば、いくらでも粗はある。前玉表面にスポット上の薄い汚れ(多分、過去にカビを除去したあとであろう)があり、経年によるヤケもでていた。クリーニングマークも少々、ホコリの混入も当然あった。しかし、バルサムが切れておらずクモリも出ていない。イメージクオリティを大きく損ねる末期的な劣化症状がなく、まだ現役のスーパー爺さんである。

こんなフードの留め金具にまで特許申請がおこなわれているとは・・・。権利の国・英国の気質が伝わってくる


★実写テスト
私のような戦前レンズのビギナーには画質的に優位なテレポートレンズで正解だったのかもしれない。Dellonは設計に無理がなく口径比も開放絞りでF5.6と控えめであることから、周辺部まで安定した画質を維持し、戦前のレンズにしてはなかなかよく写る描写力を実現している。開放絞りでもピント部にはしっかりとした芯と解像力があり、戦前のDallmeyer製レンズによくみられる像の滲みやハロなどは全く出ない。階調表現が柔らかくコントラストが低いため、淡白で古めかしい発色になるなど、古いレンズらしい、ゆる~い特徴がしっかりと出る。ただし、赤や黄色の原色が入ると、その部分だけが急に鮮やかな色づきをみせ、ある種のメリハリを生むカラーバランスはハイライト部でやや赤みを帯びる点が特徴で、全体としては温調。古いレンズならではの異質な雰囲気を漂わせる癒し系レンズといえるであろう。ただし、ガラス面にコーティング(反射防止膜)がないことから逆光撮影にはきわめて弱く、屋外では常にフレアを気にしながら撮影することになる。F5.6の口径比には不満を抱く人もいるかもしれないが、考えてみれば焦点距離は152mmもあるので、有効口径は50mmの標準レンズに換算した場合にF1.82となり、ボケを堪能するには充分だ。ボケ味は硬く、時々ザワザワと煩くなることがあるが、2線ボケやグルグルボケなどが目立つようなことはない。以下にフィルム撮影とデジタル撮影による無修正・無加工の作例を示す。

★フィルムによる撮影による作例★
F5.6(開放) 銀塩(Fuji S400)  こちらは最短撮影距離での作例だ。ピントがキッチリ合えばこのとおりにキレのある撮影結果が得られる。 発色はやや赤みを帯びる傾向がある
F5.6(開放) 銀塩(Kodak SG400) コントラストが低く古めかしい発色だ。現代のレンズではこの色味はだせない。肌の色がやや赤みがかっている

F5.6(開放) 銀塩(Kodak SG400) ボケ味に不思議な魅力があり、形が崩れず、まるで絵画の世界だ
F8 銀塩(Fuji S400) 目に優しい緩やかな階調変化になっている。とても良く写るレンズだ

F5.6 銀塩(Fuji S400) 深いフードを装着しているし太陽光が視野にはいっているわけでもないのだが、逆光になった途端に、このとおりの猛烈なフレアとなる。大判用に設計されたレンズなので、一眼レフカメラで用いた場合にはミラーボックス内の内面反射光が問題になる。おそらくこれが原因なのであろう。回避するにはステップダウンリングでイメージサークルをトリミングしなければならない。ボケ味はザワザワとして硬めだが形が崩れずにユラユラとしている。赤の発色がビビットだ
F5.6(開放)  銀塩(Fuji S400)  フレアを生かした淡い作例を狙うには好都合なレンズといえるだろう

★デジタルカメラによる作例★
F5.6 NEX-5 digital, AWB:
F8 NEX-5 digital, AWB: デジタル撮影においても少し赤みがかった発色が得られている
F8 NEX-5 digital, AWB こちらの作例でも黒潰れが回避されている。階調表現力の高い優れたレンズだ

2011/10/29

ENNA München Edixa Color-Ennalyt 50mm F1.9(M42)

オールドレンズ界のB級グルメ!
ほんのりと赤みを帯びる独特の発色が魅力
古いレンズの描写には現代の万能なレンズにはない個性、あるいは性格のようなものが表れる。この性格を指して世間一般には「レンズの味」と呼ぶことになっている。ただし、一概に「レンズの味」と言っても、ボケ味、結像具合、発色など実際には様々な要因を指しており、これらはレンズの設計や製造時期ごとに少しずつ異なる特徴を示している。しかし、このうちの発色についてはメーカー毎にある程度一定の傾向が表れるようで、レンズの味をカラー特性で区分けしメーカー名を割り当てるといったラフなマッピングができるようなのである。シュナイダーやキャノンFD、ローデンストック等の古いレンズには薄らと青味を帯びる爽やかでクールな発色傾向を持ち味とするものが多く、ツァイスやフォクトレンダー、ロシア系レンズでは黄色味と若干の赤みを帯びる温調で華やかな発色傾向を示すものが多くある。一方、ENNA社の生産したレンズには強い赤みを帯びる独特な発色特性を示すブランドがあるようなのだ。この情報のネタ元であるNocto工房のスタッフM氏によると、Ennalyt 85mm F1.5という1960年代に製造された中望遠レンズの作例にハッキリとした赤みがのり、優雅な発色特性が得られたという。興味深い情報なので自分の目で確かめようとeBayでEnnalytを探したところ、レンズは直ぐに見つかった。しかも、1200~1500ドル以上もする高級品である。Biotar 1.5/75だって800ドルもあれば状態の良い個体が手に入るし、現行品のコシナ製Planar 1.4/85だって1250ドルあれば新品が買える。なぜこんなに高いのか?何か人気の秘密でもあるのか?そんな疑問に対するさまざまな憶測が頭の中に浮かんでは消え、一人で盛り上がっているうちにますます興味が湧いてしまった。しかし、とても私には買えない高価なレンズなので、ここはやや口径比の控えめな姉妹品のColor-Ennalyt 50mm F1.9を狙う事にし、さっそくeBayのサーチアラートに登録して気長に待ってみた。ところが、数週間が過ぎ数カ月が過ぎても一向に出品される気配がない。このレンズは中古市場になかなか流通しないレアなレンズのようである。ようやく見つけた1本は米国カリフォルニアの中古カメラ業者の品であった。チャンスを逃すまいと250ドルで入札を試みたものの、コロッと競り負け、何と405ドルで他者の手に渡っていった。Zeiss Pancolar 1.8/50だって150ドルあれば買えるのに、どうしてこんなに高いのだろう。

かつて不人気だったレンズほど現在は相場高に
カメラの生産部門を持たない中堅レンズメーカーにとって、標準レンズは単体で発売してもさっぱり売れない難しいジャンルであった。標準レンズはカメラとセットで売られることが多く、カメラメーカーやバイヤーズブランドとの連携による販売が交換レンズ市場のシェアの拡大に直結したのだ。戦後のカメラ市場で消費者の多くが好んで手に入れたのはツァイスやシュナイダーなど老舗有力メーカーの高級ブランドや安く性能の良い日本製レンズの組み合わせであり、SCHACHT,ISCO,ENNAなどブランド力のやや弱いドイツの新興中堅メーカー勢が標準レンズでヒット商品を生み出すことは極稀であった。この不人気ぶりは、やがてこの種のレンズが稀少価値を持つ一大要因となった。明るく表現力の豊かな標準レンズは製品としての魅力に富み、デジカメ全盛時代の到来とともに再び萌え上がっているレンズグルメ達の物欲によって、オールドレンズ界のB級グルメとして人気を博するようになったのだ。今回紹介するCOLOR-ENNALYT 50mm F1.9もそうした類の一本で、1950年代後半にドイツカメラの大衆機Edixaに搭載する交換レンズとして発売されたが、当時は全く売れず知らぬ間に消滅していった不人気ブランドの筆頭だった。中堅メーカーは主力商品を広角レンズや望遠レンズに据え、2本目を安価に揃えたいという消費者のニーズをターゲットにしていたため、標準レンズに対してモデルチェンジを活発に繰り返す事はなかった。こうした事情がColor-Ennalytの稀少価値を更に押し上げ、現代になって高値で取引される大きな要因となったのである。

重量(実測) 248g, フィルター径 48g, 絞り値 F1.9-F16, 絞り羽根 7枚, 最短撮影距離 0.5m, 光学系 4群6枚ダブルガウス型, 焦点距離 50mm, 絞り機構は半自動絞りで、マウント面から突き出したピンと鏡銅側面の開放レバーによって制御する。マウント面のピンを予めプッシュしておけば手動絞り機構としても使用できるようになる。対応マウントにはM42とexaktaがある。Color-Ennalytは後玉が大きく飛び出しているため一眼レフカメラではミラーに干渉するモデルがある。APS-C機やミラー駆動がスイングアップ式の銀塩カメラminolta X-700では無限遠でもミラー干渉しなかった。
Color-Ennalytの大きなポイントは、50mmの焦点距離とENNA製レンズとしては珍しい銀鏡銅であろう。1950年代はまだ一眼レフ用ガウス型標準レンズの焦点距離が技術的に55mmや58mmで設計されていた頃であり、いち早く50mmのレンズを登場させたところにENNAの社風がよく表れている。ISCO製レンズにも良く似たデザインのモデルがあるが、この種の銀鏡銅はブラックカラーのカメラに搭載すると、存在感が引き立てられて上品にみえる。絞り開放レバーの指を掛ける部分が小さな赤の革で装飾されているなど、この時代のENNA製レンズは細部までよく造られている印象だ。残念なことに、1960年代以降に登場したENNA製レンズの多くは徹底したコスト削減の影響により、機構的にも機能的にも簡素な造りになってしまった。


入手の経緯
2011年9月にeBayを介して米国アイオワ州の中古カメラ業者リンウェア(取引件数900件ポジティブ99.8%)から即決価格220ドル+送料35ドルにて落札した。商品に対する解説は「外観は素晴らしい状態。フォーカスリングは軽快で適確。絞り羽はマニュアル機構で作動する。ガラスはクリーンでクリアだが、薄いクリーニングマークが2本ある。イメージクオリティには影響ない。前後のキャップがつく」とのことであった。同時に出品されていた他の商品に対する解説も悪いところを具体的に示しているので、この業者を信用することにした。本品はENNA社の製品の中でも稀少価値が高いブランドなので、コレクターの収集対象になっている。状態が良い品には350ドル以上の値がつくこともある。届いた商品には後玉端部のコーティング面にやや染み状のヤケ(経年劣化)がポツポツと見られた。しかし、実用的には申し分なく、安く手に入れることができたので、これで妥協することにした。お約束どうり前玉にはクリーニングマークが数本あったがイメージクオリティには影響なさそうだ。


撮影テスト
使用カメラ minolta X-700
フィルム Kodak Elite Crome 100(ポジフィルム) / Fujicolor Reala 100 and Kodak Super Gold 400(ネガフィルム)
Color-Ennalytには鮮烈な赤の発色を期待していたが、どうやらパワフルな赤というよりは日本の伝統色にあるような雅な赤に近い印象だ。このレンズの撮影結果にはハイライト側が赤みを増しシャドー側が青みを帯びる傾向があるようで、人の肌や白っぽい壁面などがほんのりと赤みを帯びたり、黒髪が茶髪に変色する。一方、照度の強い晴天下では日蔭の部分が青みを帯びる事が多い。面白い発色が得られたのは髪の毛などの黒いものが太陽光をうけるときで、反射によるテカリがハッキリとした紫色に変色した。また、日蔭の中にある白や灰色のものが淡く幻想的な紫色に着色される事もあった。緑は赤と補色の関係にあるためかビビットに再現されるようだ。デジタルカメラ(nex-5)でも撮影を行っているが、どういうわけだかフィルムの時のようには赤みが出ず、ノーマルな発色となるケースが多かった。
 ピント面はスッキリとしており開放絞りでも結像に甘さはない。ボケ味は穏やかで開放絞りでもグルグルボケや2線ボケが顕著に出ることはなかった。よくまとまったレンズだ。以下作例。




    
F2.4銀塩(FujiColor Reala Ace 100 ネガフィルム)  アウトフォーカス部で太陽光の反射がうっすらと赤みがかっている

F8 銀塩(FujiColor Reala Ace 100 ネガフィルム) 深く絞り込むと水面からの太陽の反射光(点光源)が赤く色づいてみえる。このレンズの発色特性の原理を知る手掛かりを含んでいる一枚だ
F1.9 銀塩(Kodak GOLD 400 ネガフィルム) こちらは室内が白色蛍光灯で、背後から日光が入っている。黒髪の変色が目立ち、前髪のテカリが青、後髪は日本の伝統色にあるような雅な紫色になっている。開放絞りでもこれだけスッキリとうつれば合格点だ
F?  銀塩(FujiColor Reala Ace 100 ネガフィルム)  解像力もなかなか高い。背景のボケとの相乗効果によって浮き上がるような立体感が生まれている

F2.8 銀塩(Kodak EBX 100, ポジフィルム)  こちらはポジフィルム。シャドー部が青みがかるのはこの時代の西独製レンズによくある傾向だ。しかもこのレンズの場合にはすこし紫色っぽくて綺麗だ
左F1.9 銀塩(FujiColor Reala Ace 100 ネガフィルム)/ 右F1.9 銀塩(FujiColor Reala Ace 100 ネガフィルム) 左はごくノーマルな発色が得られたケースで、右は肌や石垣が僅かに赤みを帯びたケースだ。ピンボケはいつものこと。髪の毛は茶髪に変色している。Color-Ennalytを用いた作例では、こんな色の肌や髪の毛になることが多かった。どんな条件によってこのような差異が生みだされるのかは、まだよく把握できていない。上品な赤ではないだろうか

F8 銀塩(Kodak GOLD 400 ネガフィルム) うひゃ~。石材の表面や階段のステップが病的な紫色に変色している。人の顔が赤い
F2.8 銀塩(Kodak ポジ EBX 100, daylight)  こんどはポジフィルム。こちらの作例でも髪の毛や背景の葉に紫が出ている。シャドーの青みが赤みと配合するためだろうか。熟れたイチジクのような色だ


F1.9 銀塩(Kodak GOLD 400 ネガフィルム)  ボケ味をテストした作例。ピント面はスッキリとしており、結像に甘さは無い。開放絞りから球面収差をキッチリと補正するフルコレクションタイプのレンズのようだ

F1.9 銀塩(Kodak EBX 100, ポジフィルム) こちらも開放絞りでボケ味をテストした作例。被写体がソフトにみえるのは単なるピンボケ。像の流れもほとんどなく、ボケ味はなかなか良い

左F1.9 銀塩(Fuji Color Reala Ace100ネガフィルム) / 右F2.8 銀塩(Fuji Color Reala Ace100ネガフィルム) このレンズで撮ると緑がとても鮮やかに見えることがある。こちらの作例にも、ほんのりとした微かな赤みがのっている

2011/09/29

PZO/WZFO JANPOL COLOR 80mm F5.6(M42, Enlarging Lens)


カラーフィルターで遊べる
ポーランド生まれの引き伸ばし用レンズ
 今回の一本はポーランドのWarsaw Photo-Optical Plantが1963年に設計し、同国のPZO(WZFO)社が生産したテッサー型の引き延ばし用レンズのJANPOL COLOR(ジャンポール・カラー) 80mm F5.6である。引き伸ばし用レンズとはフィルムの像を拡大して印画紙に焼き付ける行程の中で、引き伸ばし機の先端に装着して用いられるレンズである。焼き付けの際にカラーバランスの補正が必要になると、かつてはレンズの先端にカラーフィルターをあてて調整していた。ところが、暗室内でそれを行うのは大変困難な作業。そこで、本品のように鏡胴内に3色のカラーフィルターを内蔵させ左右のノブを回すだけで手軽にカラー補正を行える便利な機構が登場したのだ。なお、現在の引き伸ばし機にはダイクロイックフィルターを用いた高度な補正機構が普及している。
 初期のモデルは同国のWZFO社がJantar Color(ジャンタール・カラー)という名で生産していたが、1964年にPZO社がWZFO社を吸収合併し名称をJanpol COLORへと変更した。ただし、その後も一部個体にはWZFOの企業名が記されている。これはどういう事なのかと調べていたところ、WZFO製のJanpolにはポーランド語で記されたマニュアルが付属している事に気付いた。恐らくポーランド国内向けの製品には、2社の合併後も引き続きWZFOの企業名が使われたのだろうと思われる。本品には焦点距離の異なる姉妹品JANPOL COLOR 55mm F5.6も存在している。レンズにはヘリコイド機構がついていないので、一眼カメラで使用するにはM42マウントのヘリコイドユニットを別途用意する必要がある。


PZO(Polskie Zakłady Optyczne)社
 同社は1921年に4人 の実業家によってポーランドのワルシャワに設立された光学機器メーカーである。初期の会社名はFabryka Aparatów Optycznychであり、現在のPZOへと改称されたのは1931年からとなる。戦前の主力製品は顕微鏡、双眼鏡、ルーペ、引き伸ばしレンズ、航空撮影用カメラ(軍需向け)などであった。1939年に第二次世界大戦が勃発しポーランドがナチスドイツに併合されると、同社はカールツァイス・イエナによる経営支配をうけた。その間、PZO社の多くの工員はナチス政権への抵抗としてサボタージュ行為を繰り返し生産ラインを破壊、アウシュビッツの死の収容所へと送られた。1944年9月にポーランドはドイツによる支配から開放されるが、工場は終戦前にドイツ軍によって徹底的に破壊され、終戦後しばらくの間は再建の目処が立たなかった。1951年にポーランドの重工業省が発表した工場の再建計画と西側諸国への新製品の輸出拡充計画により同社の生産力は回復し、顕微鏡、双眼鏡、ルーペ、偏光ガラス、インターフェイス、測量用光学機器、レーザー計測装置、光電子機器など手広く生産するようになった。同社は共産主義政権下における産業界の再編によってカメラメーカーのWZFO社と1964年頃に合併、その後は二眼レフカメラやトイカメラの生産にも乗り出している。1989年、PZO社の軍事機器部門に対する国家予算の削減は経営の弱体化を招き、同社は二眼レフカメラSTART 66Sの生産を最後に写真産業から完全撤退している。1997年にドイツのB&Mオプティック社へ2大工場の一つ(Zaczernie工場)を売却して経営の合理化を推し進め、現在は顕微鏡、ルーペ、フィルター、望遠鏡のみに生産を集約させている。

WZFO(Warszawskie Zaklady Foto-optyczne)社
同社は戦後の1951年にポーランドのワルシャワに設立されたカメラメーカーである。戦後初のポーランド製カメラ(二眼レフカメラ)のSTARTシリーズ(1953~1970年代初期)や、中判カメラのDRUH(1956年~)、ポーランド初の35mm版カメラのFENIX(1958年~)、トイカメラ(6cm×6cmフォーマット)のAmi(ALFA)シリーズ(1962年~)などの生産を手掛けた。1964年にPZOと合併するが、その後もPZO傘下でSTARTの後継製品START66シリーズ(1967~1985年)やAmiシリーズの後継製品を世に送り出している。

重量(実測値) 305g, 焦点距離 80mm, 開放絞り値 F5.6-F16, 私が入手したポーランド語の特許書類によると、光学系の構成は鋭い階調表現を特徴とするテッサー型(3群4枚)とのこと。フィルター枠にはネジ切りが無く、装着できるフードは被せ式のタイプのみとなる
BORGのOASYS 7842ヘリコイド(左)を装着すると右のような姿になる。BORGのヘリコイドにはフランジバック微調整用の板が付いており、これを使って無限遠のフォーカスをピッタリと拾う事ができるように調整可能だ
入手の経緯
本品は2011年6月にeBayを介してロシアの大手中古カメラ業者から即決価格35㌦+送料で落札購入した。商品の状態はエクセレントコンディションで、純正のプラスティックケースが付属するとのこと。同じ業者が同時に3本のJANPOLを同一価格で出品していたので、その中で最も状態の良さそうな個体を選んだ。届いた個体にはホコリの混入がみられたが、カビやクモリ等の大きな問題はなく、解説どうりのエクセレントコンディションであった。eBayでの海外相場は30ドル~50ドル程度と大変安く、BORGのヘリコイドユニットの方が高価だ。

JANPOLは鏡銅内に黄、青、赤の3色のカラーフィルターを内臓している。左右に着いている銀色のノブを回すことにより各フィルターをスライドインさせ、色の調整や調合を無段階で行えるというユニークな機能を持つ。上の写真は青、黄、赤のフィルターを50%スライドインさせた状態と、赤75%+黄75%で混色を行った状態(右下)を示している
撮影テスト
本品に限らず引き延ばし用レンズは業務用のプロ仕様ということもあり、一般的には控えめな口径比で無理のない設計を採用している。色収差が小さく解像力が高いなど良く写るものが多い。光学系を設計する際の収差の補正基準点は無限遠でなく近接点なので近距離撮影では高い描写力を示す。アウトフォーカス部の像はザワザワと煩く綺麗なボケ味とは言えないが、2線ボケやグルグルボケなど大きな破綻はみられない。発色については流石にカラーフィルム時代のレンズらしく、癖の無い自然な仕上がりとなる。ただし、逆光にはめっぽう弱く、屋外での使用時はコントラストの低下が顕著なのでフードの装着は必修となる。このレンズにはフィルター用のネジ切りが無いので被せ式フードで合うものを探すしかない。私は黒のボール紙を巻いて、ゴムでパッチンと留める即席フードを用いることにした。内蔵カラーフィルターを上手く利用すれば、雰囲気のある面白い作例を生み出せるであろう。



F5.6, Nikon D3 digital(AWB,/Picture Mode= Standard); イエローフィルターの使用例。上段はColor Balance Neutral(ニュートラル)で下段はYellow filterをスライドインさせた場合の撮影結果だ。イエローフィルターを用いると、ノスタルジックな雰囲気になる
F5.6, Nikon D3 digital(AWB,/Picture Mode= Standard); こんどはブルーフィルターを用いた作例。上段はColor Balance Neutral(ニュートラル)で、下段はBlue filterをスライドインさせた場合の撮影結果だ。青の光はフレアを生みやすい性質があるので、光源の光はポワーンと綺麗に滲んでいる。ブルーフィルターでは不気味な夜の光景を演出できた
F5.6 Nikon D3(AWB,ISO800) フィルターを使わない場合は、普通に良く写るシャープなテッサー型レンズである
F5.6 Nikon D3(AWB, ISO1600) このレンズは安いのに良く写る。ずっと開放絞り値で撮り続けていたが、近接撮影でも像はシャープだ上の作例は料亭厨房の天井付近に糸で吊るされ干されていたヒラメの骨煎餅。暗闇から何かが触手を出しているようにも見え、何ともグロテスクな光景だ
F5.6 Nikon D3(AWB) ISO4000(フォトショップで自動コントラスト補正をかけている)  こういった作例の場合、暗電流ノイズは全く気にならず、むしろ好都合だ
撮影機材
Nikon D3 digital +ゴムパッチンの手製ボール紙フード
じつはレッドフィルターを用いてピンク映画風の作例を狙っていたのだが、被写体にするつもりでいた妻に逃げられてしまった。そこで仕方なく私がモデルになってみたものの、何度試してみても見苦しい作例しか撮れない。被写体選びは重要である事を痛感し、レッドの作例は気持ち悪いので割愛した。JANPOLのみならず、この種の引き延ばしレンズはどれも値段が安いわりによく写るので、そのうちまた流行るかもしれない。

2011/09/14

Rodenstock Eurygon 30mm F2.8(M42) Rev.2 改訂版


クールトーンな西独のレンズ達 3:
無骨なデザインを纏った
青の伝道
私が初めて手に入れたオールドレンズは焦点距離35mmのFlektogonとAngenieuxで、どちらも温調な発色特性を持ち味とするレンズであった。ところが次に手に入れた本レンズの描写は、これらとはまるで異なっていた。はじめて試写した時の印象を今でもはっきりと覚えている。レンズをデジカメにマウントし恵比寿や代官山の町をぶらつきながら家族の姿を撮っていたところ、写るもの全てがクールトーンであっさりと上品に見え、「このレンズには何かあるな」という強い感触を得た。人の肌はやや白っぽく、地面やビルのコンクリートがやや青っぽく変色するのだ。それはツァイスのコッテリとした温調で華やかな色彩とは明らかに異なり、なおかつコントラストが低い事に由来する淡白な発色傾向とも異なっていた。その後、SchneiderやSchachtなど他の西独製レンズにおいても同様の性質があることに気付き、この種のレンズに対する興味はますます高まっていった。ある時、地元横浜市でオールドレンズの改造を手掛けるNOCTO工房でSchneiderのレンズが持つ青の魅力(シュナイダーブルー)の事を聞かされ、西独レンズ達のクールな発色特性に対する認識は揺るぎないものとなった。

今回再び紹介するEurygon(オイリゴン)30mm/F2.8はドイツ・ミュンヘンに拠点を置くG.Rodenstock(ローデンストック)社が35mm一眼レフカメラ用として少量だけ生産した焦点距離30mmの広角レンズだ。レンズ名は「広い」を意味するギリシャ語のEurysと、「角」を意味するGonを組み合わせたのが由来で、そのまま「広角」という意味になる。Rodenstockといえば1877年に行商人のヨーゼフ・ローデンストックが起業し、眼鏡造りで名を馳せた光学機器メーカーである。カメラ用レンズも1890年代に生産を始め、2000年までプロ向けの大判用レンズを造り続けていた。現在は企業活動を眼鏡の生産のみに一本化することで写真用レンズの生産から撤退している。Rodenstock社の製造台帳によるとM42マウントやEXAKTAマウントのEurygonが生産されたのは1956年から1960年にかけてであり、2本のマスターレンズに加えExaktaマウント用が1300本、M42マウント用が1400本製造されたと記録されている。光学系は6群7枚のレトロフォーカス型で、対応マウントは少なくともM42、EXAKTA、DKL(デッケル)の3種が存在していた。鏡胴の造りが良く、ラッパ型の独特な形状と無骨なゼブラ柄のデザインには強いインパクトを受ける。
Eurygonのレンズ構成は6群7枚のレトロフォーカス型である。上記の構成図は1959年の米国向けパンフレットに掲載されていた図をトレースしたものだ。1939年に生みだされた重金属を含む新種ガラスは青の短波長光に対する透過が悪いという欠点を持っており、青と黄のカラーバランスに深刻な影響を及ぼした。この欠点を補うためにアンバー系のコーティングが導入されカラーバランスの適正化が図られた(カメラマンのための写真レンズの科学:吉田 正太郎著)。硝材とコーティングの連携によるカラーバランスの適正化は、どのような撮影条件においても破たんなく安定でいられるのだろうか。おそらく、このあたりにクールトン軍団のレンズ達が持つ個性豊かな色彩の秘密が隠されているのだろう。
最短撮影距離 0.4m, 重量 305g, フィルター径 58mm, 焦点距離 30mm, 開放F値 F2.8, 絞り機構は手動。焦点距離の異なるゼブラ柄の姉妹品には50mm/F1.9の標準レンズHeligon(4群6枚)、100mm/F4(4群5枚)、135mm/F4(4群5枚)、180mm/F4.5(5枚構成)の3種の望遠レンズRotelar(ロテラー)、135mm/F3.5のYonar(イロナー)などがある。1959年当時の米国版カタログとドイツ版カタログには各レンズの価格が掲載されており、Eurygonが179.5ドル(425マルク)、Heligonが169.5ドル(405マルク)、Rotelar3種 144.5/144.5/139.5ドル(340/375/355マルク)、Yonar 285マルクと記されている。レンズの構成枚数から考えればEurygonの製造コストが一番高く、そのぶん値段も高かったのであろう
入手の経緯
私が以前に所持していたEurygonは一度売却してしまったので、今回のEurygonは買い戻した品となる。本品は2009年にeBayを介して米国大手中古カメラ業者のケビンカメラから入手した。商品ははじめ756ドルの即決価格で売り出されていたが、値切り交渉を持ちかけたところ680ドルで私のものとなった。商品の解説はMINTYで状態の良いレンズとの触れ込みだったが、届いた商品はマウント部にガタがあった。仕方なく修理に出して改善したのはいいが、最近になって後玉の外周部に薄いカビの除去跡を発見(カビではなく確かなカビの除去跡)、それを見た瞬間、思わず「しまった!見なければよかった。」とぼやいてしまった。気付かなければ幸せなことだってある。ケビンカメラからは前にも一度、明らかにクモリのあるレンズをMINTYとの触れ込みで購入したことがあった。米国の超有名店とはいえ説明不足は明らかで、この時以来、同店に対する私の信頼はガタ落ちである。なお、カビの除去跡は描写に全く影響の出ないレベルであった。私はコレクターではないので、手に入れたレンズを手放す日もそう遠くないが、このレンズを再び手放すとなれば安くなってしまうんだろうな~。やっぱり売却は無理か・・・。

撮影テスト
西独クールトーン軍団の描写に共通する独特の色彩については、以前から繰り返し紹介してきた。日光照度の高い撮影条件で青とその補色関係にある黄色のバランスが不安定化し、シャドー部が青、ハイライト部が黄色に引っ張られることで素晴らしい色彩が生みだされる。また、やや照度低い状況においても、白い壁や灰色のコンクリートが青に引っ張られて変色することもあり、これらは条件次第でさわやかな青にもなれば、病的な青にもなる。また、緑が照度に応じて青緑に転んだり黄緑に転んだり、コロコロと不連続に変色するのも面白い。Eurygonもこの種のレンズの性質を備えており、簡単に言ってしまえば制御不能なのだ。しかし、辛抱強く付き合っているといいこともある。このレンズでしか撮れない不思議な色彩に出会う事ができる。
Eurygonの撮影結果にはピント面に解像力があり、近接撮影でも開放絞りからスッキリと写る。周辺画質に歪みや像の流れなど大きな破たんはなく、画質の均一さという意味では良くまとまった優秀なレンズといえる。近接撮影時に開放絞りでグルグルボケが発生するが、1段絞れば治まり、2線ボケの無い穏やかで綺麗なボケ味となる。深く絞り込んでもシャドー部がカリカリと焦げ付くことは無く、階調は暗部に向かって緩やかに変化する。焦点距離30mmのレンズともなれば深い被写界深度を利用したパンフォーカス撮影も可能だ。以下では銀塩撮影(ネガフィルム)とデジタル撮影(Sony NEX-5)による作例を示す。
F4 銀塩撮影 FujiColor Reala 100(ISO100): ブルドックの前足や体毛、瞳などが青味がかっている。不思議な色彩が出ている
F2.8 Fujicolor SP400(ISO400): 葉の緑の色が照度に応じて不連続に変化する。日向では黄色に転び、日陰では青に転んでいる

F4 銀塩撮影 FujiColor Reala100(ISO100):   地面のコンクリートや背後のいろいろなものが青味を帯びている
F4 銀塩撮影 FujiColor  Reala100(ISO100): このように近接撮影でもスッキリとシャープに撮れる。多くの作例で画面全体に青の薄いベールがかかったような不思議な色が出る
F5.6 銀塩撮影 FujiColor Reala100(ISO100): そうかと思えば、この作例のようにノーマルな発色の時もある。緑の背景が絵のように綺麗だ
F4 NEX-5 digital, AWB: 写真用レンズとは球面ガラスを使って光線を屈折させ平面像を得る変換機構だ。この変換による画質の破たん(収差)はEurygonのような広い画角を持つレンズになるほど深刻であり、像が流れたり歪んだりと周辺画質に大きな影響が表れる。しかし、このレンズの場合はよく補正されており大きな破たんはないようだ
★撮影機材
銀塩撮影 Canon EOS kiss + M42-EOS adapter(中国製) + 八仙堂広角レンズ用メタルフード
デジタル撮影 Sony NEX-5 +kipon M42-NEX adapter + 八仙堂広角レンズ用メタルフード

Schneiderのレンズにおいて見出されている独特な青の発色はシュナイダーブルー(Schneider Blue)と呼ばれることがある。オールドレンズの描写力が持つ、現代のレンズにはない「味」を明確に指した表現だ。こういう表現が増えてゆけば、オールドレンズに対する価値認識は今よりもずっと向上するのであろう。EurygonやHeligonのようなRodenstockのレンズも、シュナイダーのレンズに良く似た発色傾向を示し、素晴らしい色彩を生み出すことができる。近いうちにシュナイダーブルーの発案者であるNOCTOの岡村代表がシュナイダー製レンズの描写に関する特集記事を発表される予定なので、是非ご覧いただきたい。