独自のスピゴット式ペトリマウントを採用し1961年に登場した一眼レフカメラのPETRI Penta V2には、それ以前のKuribayashi ORIKKOR 50mm F2(M42マウント)からの流れを汲むと考えられるKuribayashi C.C PETRI 50mm F2(上写真・左)と、新設計で焦点距離を55mmとしたKuribayashi C.C PETRI 55mm F2(上写真・右)の2種の標準レンズが供給されました。栗林写真工業社の公式カタログ[1-3]では、これらはいずれもオーソドックスな6枚玉(4群6枚)であると記されており、構成図までついています。一方でインターネット上には前者のPETRI 50mm F2がORIKKORと同一構成の7枚玉(下図)ではないかという噂も出ており、現物を手に入れ確かめる必要がありました。今回、構成を確認する機会がありましたので見てみると、何とORIKKORと同一構成の7枚玉(下図)で噂は本当でした。私の手にした個体が特殊なのでしょうか?それともPETRI 50mm F2は全て7枚玉なのでしょうか。ちなみにペトリマウントの50mm F2には銘板に「ORIKKOR」の名が入った個体「Kuribayashi C.C PETRI ORIKKOR 50mm F2」も存在します。カタログでの表記を擁護すれば、これが6枚玉で、ORIKKORの名がない個体が7枚玉という可能性も考えられます。
真相に迫るには、もう少し事例を集める必要がありそうです。
Kuribayashi Orikkor 50mm F2(Petri Penta)の構成図 |
ペトリレンズはどれも良く写るレンズばかりですが、その割にジャンク品のような不当な扱いをうけ、安値で売り叩かれています。中古カメラ屋のガレージセールではカメラ本体に付いた状態で打ち捨てられるように転がっており、その姿を見るたびに昭和生まれの私としては胸の痛い思いになります。これは市場に供給された数が多すぎた事に加え、独自のマウント規格を採用していた事が大きな原因です。しかし、ここ最近は良い兆しも見え始め、7枚玉のORIKKOR(M42マウント)は独特な構成が再評価され1万円程度の値で取引されるようになりました。オールドレンズ界での「市民権」を得たようです。ペトリマウントのアダプターも全く無いわけではないようで、秋葉原のオールドレンズ専門店2nd BASEにはペトリマウントをライカMに変換する特製アダプターが売られています。焦点距離50mmの栗林製ペトリレンズを見かけましたら、ぜひ拾い上げてやってください。もし7枚玉でしたら(6枚玉でも)、下方の掲示板でお知らせいただけると幸いです。ちなみに私が入手した個体は中古カメラ店のジャンクコーナーで800円でした。カビ、くもりなしです。
7枚玉のKuribayashi C.C PETRI 50mm F2(左)と6枚玉のKuribayashi Petri C.C 55mm F2(右)。どちらもPetri Penta V2用としてカメラとセットで販売されたレンズです |
最後に7枚玉であることの確認方法ですが、上の写真のように絞りを閉じた状態で電球やLEDライトなどの光を後ろ玉の側から当てます。4個の明るい反射に挟まれ2個の暗い反射が見られれば、間違いなく7枚玉(4群7枚)のプレミアムなモデルです。
★参考資料★
OrphanCameras.com / Butkus.us
[1]Petri Penta V Instruction manual
[2]Petri Penta V2 Instruction manual
[3]Petri Flex V Instruction manual
★撮影テスト★