プリモプランの設計者が興した
レンズ専業メーカーの交換レンズ 後編
ビハインドシャッターへの適合が生んだ
ソフトテレポート
Roeschlein Kreuznach TELENAR 90mm F3.8 (Paxette mount)
ロシュライン特集の後編は中望遠レンズのTELENAR(テレナ―)90mm F3.8です。このレンズはBraun社のPAXETTEというレンジファインダー機に搭載する交換レンズとして、1954年に約4000本が供給されました。F3.8とやや口径比が暗いのはPAXETTEに搭載されたビハインドシャッターの狭い光路にどうにか光を通すためで、後玉径を大きくすることができなかったことによります。しかし、高感度特性の良好な現代のデジカメで使う分には、これが弱点になることはありません。ISO感度を高めに設定しておけばシャッタースピードは十分に稼げますし、ボケ量についても焦点距離が長いので50mm F2相当と十分です。デジカメの性能の進化がTELENARを魅力あるレンズに変えたのです。
小さな後玉とは対照的に前玉はかなり大きく、前群側にかなり大きな屈折力の偏りがあるように思えます。レンズ構成を調べてみると4群4枚の変形テレ・ゾナーで、テレ・ゾナーのはり合わせ面をはずし空気間隔を設けた形態なので、構成内容だけでみれは凹レンズをテレゾナー並みに分厚くしたエルノスター型とも言えます。線が太くコントラストの良好な力強い画作りを想像していましたが、これがロシュラインの手にかかると一体どういう味付けになるのか、とくと拝見することにしましょう。
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Braun社のPAXETTEに搭載したTELENAR 90mm F3.8 |
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重量(実測)148g, フィルター径 40.5mm, 絞り羽の構成枚数 10枚, 最短撮影距離(規格) 1.5m, 絞り F3.8-F16, フランジバック44mm, paxette M39マウント
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★入手の経緯
eBayでのレンズの取り引き相場は200~250ユーロあたりです。本品は2018年9月にeBayを介し、ドイツのレンズセラーから落札しました。オークションの記載は「マウント部はライカとは異なる規格のM39スクリューマウントである。コンディションは良好で、動作も問題ない。APS-C機で撮った写真作例もつけるので見てくれ」とのことで問題はなさそう。ところが、届いた品には絞りの直ぐ後ろのガラス面に僅かなクモリ(汚れ)があり、検査落ちでした。ただし、後群全体が鏡胴にねじ込まれているだけの簡単な構造だったので光学系を開けることなく清掃ができ、問題の個所を少し拭いたところクリアになりましたので一件落着です。
★SONY A7へのマウント方法
このレンズの規格であるPAXETTEスクリューマウントはライカと同じM39のスクリューマウント(ネジピッチ1mm)ですが、フランジバックが44mmもありライカとは異なります。SONY A7で使用するためのマウントアダプターの作成方法を一つをご紹介します。
まずM39-M42ステップアップリングを用いてレンズをM42ヘリコイド(25-55mm規格)に搭載します。あとはヘリコイドのカメラ側にM42-SONY Eスリムアダプターをつけるだけです。部品は全て市販品なので、誰でもできる改造でしょう。望遠レンズは伸長率の高いヘリコイドのほうが使いやすいので、伸長率の低いヘリコイドていったんライカマウントにするよりも、ダイレクトにソニーEマウントにするほうがよいとおもいます。
★撮影テスト