おしらせ


2020/03/12

試写記録:SANKYO-KOHKI SUPER-KOMURA 135mm F2.8(M42 mount)

F2.8(開放)sony A7R2(WB:日光)



F2.8(開放)sony A7R2(WB:日光)



F2.8(開放)sony A7R2(WB:日光)

F2.8(開放)sony A7R2(WB:日光)

F4sony A7R2(WB:日光)

F2.8(開放)sony A7R2(WB:日光)

F2.8(開放)sony A7R2(WB:日光)

F2.8(開放)sony A7R2(WB:日光)

F2.8(開放)sony A7R2(WB:日光)取材協力いただきました。

F8(開放)sony A7R2(WB:日光)




レンズ名にSUPERを冠した特別なコムラー
SANKYO KOHKI SUPER-KOMURA 135mm F2.8(M42 mount)
 
三協光機は望遠レンズにとても力を入れていたメーカーで、同社のKOMURA 135mmにはF3.5, F2.8, F2.5, F2.3, F2と5種類ものモデルがあります。lensholicの記事(こちら)にはKOMURAの135mm F3.5がシャープなピント部とザワザワしたボケ味を特徴とするレンズであると紹介されています。そこで、同じ焦点距離135mmで半段明るいF2.8のモデルを試してみたところ、こちらはボケが柔らかく素直で、高性能な、言い換えれば没個性的なレンズでした。ピント部はシャープでコントラストが高く、線の太い力強い描写が特徴です。レンズ名にSUPERがつくだけのことはありますが、私的には廉価で構成枚数が少ない分だけ背伸びをしたF3.5のモデルの方が面白いと感じています。ただし、これらよりも更に明るいF2.3のモデルもあり、こちらはF2.8のモデルと同一構成ながらも口径比が明るいので背伸びをしている可能性があり、一転して面白い描写をみせるのかもしれません。今回取り上げるレンズはレンズ名にSUPERを冠する特別なモデルです。どうしてSUPERが付くのか理由は不明ですが、もしかしたら没個性モデルにはレンズ名にSUPERが付くのかもしれません。
KOMURAには焦点距離105mmのモデルもあり、F3.5, F2.8, F2.5, F2とこちらも4タイプもあります。更に焦点距離100mmのモデルもF1.8, F2.5, F2.8と3タイプあります(多すぎ!)。本ブログでは過去に100mm F1.8を扱いました。それぞれが少しづつ性質の異なるレンズなのだと思います。奥の深いメーカーですね。
設計構成は下図に示すような4群5枚でガウスとトリプレットの折衷なのでしょうか。ありそうであまり見ない形態です。エルノスター型なら第3群をもっと前方に置き第4群(後玉)と距離をとります。
KOMURA 135mm F2.8の光学系
 
入手の経緯
レンズはカメラ店のジャンクコーナーにある定番レンズで、流通量も多いため、中古市場ではとても安い値段で取引されています。私は2020年3月にヤフオクにてフード、ケース、前後キャップが付いたフルセットの個体を980円+送料で落札しました。オークションの解説内ではジャンクを宣言していたので博打買いですが、この値段ならば気にすることはありません。届いたレンズには中玉にカビが少しありましたが、分解し清掃したところ綺麗になりました。
 
SANKYO-KOHKI SUPER-KOMURA UNI AUTO  135mm F2.8(M42 mount): フィルター径 55mm, 重量(実測)469g, 絞り値 f2.8-F22(マニュアル/オート切り替え), 最短撮影距離 1.5m弱, 絞り羽 5枚, 本品はM42マウント

 
KOMURAは明るい望遠レンズが海外では高く評価されており、国内よりも海外で人気があります。珍しいERNOSTARタイプの設計構成を積極的に導入していたこともあり、マニアにも大人気です。これから再評価の進むメーカーの一つでしょうね。



2020/03/08

Bausch and Lomb PHOTOMATON 75mm(3inch) F2





Matonox Night-Camera
レンズを供給したのはボシュ・ロム!!!
Bausch and Lomb PHOTOMATON 75mm(3inch) F2
ドイツのC.P.Goerz(ゲルツ)社が1925年頃に試作したMatonox Night-Cameraという35mm判のカメラに搭載されていたレンズが、今回紹介するPhotomaonフォトマトン)75mm F2です[1]。同社は1926年にIca, Ernemann, Contessa-Nettel社と合併しZeiss Ikon社の設立母体となることで消滅していますので、このカメラが発売されることはありませんでした。実在するMatonox Night-Cameraに搭載されたPHOTOMATONにはメーカー名が記されておらず、レンズはカメラ同様にC.P.Goerz社が開発したものだと思われていましたが、不可解だったのは搭載されいるシャッターを供給したのがドイツのDeckel社ではなく米国のILEX(アイレクス)社であったことと、ゲルツはF2クラスの明るいレンズを自社生産するための特許を保有していなかった事です。カメラとレンズは当時、夜間での手持ち撮影を可能とし報道写真の世界に衝撃を与えたエルネマン社のエルマノックス(レンズはエルノスター)に対抗するために開発されました。
ある時このカメラの謎に対する突破口が開けました。知り合いの方からBausch and Lomb(ボシュ・ロム)社の刻印の入ったPhotomatonの存在を教えてもらい、なんと現物を預かったのです。ILEX社はBausch and Lomb社から派生したシャッター製造メーカーで、言わば生みの親のような存在です。レンズはシャッターと共に米国で開発されていたのです。
    
Bausch and Lomb PHOTOMATON 75mm F2(M42改造済): フィルター径 45mm, 絞り値 F2-F16, 設計構成 4群4枚スピーディック型, ILEX製シャッター, GOERZ Matonox Night Canera(スチル用35mmフォーマット)に供給。前群の鏡胴部側面にPhotomatonの刻印、フィルター部の名板には確かにBausch and Lombのメーカー名が刻印されています
 
今回お借りしたレンズは知り合いの方がレンズ単体の状態でeBayから入手したもので、カメラは付属していませんでした。その後、直進ヘリコイドに載せM42レンズとして使用できるよう改造したとのことです。レンズにカビ、クモリなどなく、直ぐに使用できる良好な状態でした。レンズ構成は3枚玉のトリプレットからの発展形として1924年にLeeが考案した4群4枚構成のspeedicタイプです(下図)。収差的にはあまり良い評価がありませんが明るさと立体感のある画作りを特徴とし、バックフォーカスを長く取れる点が長所で、ドイツのAstro社が高級シネマ用レンズに積極的に採用した設計構成です。たいへん貴重なレンズであることに疑いの余地はありません。
  
典型的な4群4枚のSPEEDIC型の設計構成。左が被写体側で右がカメラの側。絞りは第2レンズの直ぐ後ろに配置されています

参考文献・資料
[1]ドイツのオークションハウス”Auction Team Breker”から2008年にMatonox Night-Cameraが1台出品されています
[2]oldlens.com: Bausch and Lomb 3inch:設計構成のよく似たBausch and Lomb社製のレンズがあるという情報をいただきました。ありがとうございます。本レンズと何か関係がありそうです
 
撮影テスト
近接からポートレート域ではフレアの少ないスッキリとした描写で、コントラストはこの時代のノンコートレンズとしては良好ですが、良像域は中央部のごく限られた領域のみとなります。ボケは若干のグルグルボケが見られピント部間際で放射ボケも出ますので、非点収差がそれなりに残存している様子です。ただし、激しい像の流れには至りません。一方、遠景になるとフレアが多くなり、開放では十分な解像感が得られませんので、通常は絞って使うことになります。ポートレート撮影向きのレンズだと思います。

F2(開放) SONY A7R2(WB:日陰)置きピンで撮りました。この位では少し滲みます(シャツの★印に注目)


F2(開放) SONY A7R2(WB:日陰)近づくほど、スッキリと写るようになり・・・


F2(開放) SONY A7R2(WB:日陰)このくらいのポートレート域が一番シャープに写ります。距離によっては背後に少しグルグルボケが発生しまので、非点収差がまぁまぁ残存しているようです
F11 SONY A7R2(WB:日陰)











F5.6 sony A7R2(WB:日光) こちらも絞ってとった結果ですが、遠方をとる場合、少なくともこの位は絞らないと厳しいです。開放になるとフレアが多く、解像感の得られるのはごく限られた領域だけになります(こちら