おしらせ


2019/06/14

OLD LENS FESTIVAL VOL.3 in TOKYO 2019


OLD LENS FESTIVAL Vol.3 in Harajyuku TOKYO
July 5th to 7th, 2019
Old Lens Festival vol.3 will be held in Harajyuku(Tokyo) from July 5th to 7th, you can find the outline of the festival in the following official web-page:
https://urbansoul00.wixsite.com/oldlensfestival 

会期が近づいてきましたのでお知らせしますが、オールドレンズフェス vol.3 が2019年7月5日-7月7日に開催となります。私も運営スタッフ(主催側)として参加予定です。
 

今回は何と私が東ドイツ製レンズによるグループ写真展を企画しました!
 
企画展DDR WIND!
場所 EAST 204(Old lens festival VOL.3)
開催 7月5日--7月7日
敗戦によるドイツの東西分断でソビエト連邦主導の東側諸国に取り込まれたドイツ民主共和国(DDR)。かつて、この国には世界最高水準の光学技術を擁したカールツァイス人民公社や、現在のオールドレンズブームの火付け役となったメーヤー・オプテークがありました。西側諸国では光学技術の急激な近代化がオールドレンズを無味無臭な現代レンズに変えてしまいましたが、一方で1970年代までのDDR製レンズには大昔のレンズの描写にみられた素朴で牧歌的な叙情、田舎くささが残っており、今もオールドレンズファンを魅了し続けています。

この企画展ではDDR製レンズを愛用する9人の写真家が自身の写真作品を展示しレンズの紹介も行います。フェスにご来場の際にはぜひお立ち寄りください。

出展者
spiral x Primoplan 1.5/25
鈴木啓太/urban x Flektogon 4/20
塩島真吾 x Flektogon 2.8/35
上野由日路 x Pentacon MC 1.8/50
伊藤浩一 x Trioplan 2.9/75
進藤智士 x Tessar 2.8/50
中耶莉佐 × Pancolar 1.8/50
Kuramago x Primoplan 1.9/58
山本航 x Tessar 2.8/50 ?


2019/05/14

Kern-Paillard SWITAR RX 25mm F1.4(c-mount)



フンワリ、ボンヤリ、でもシッカリ写るレンズはオールドレンズ女子の強い味方。スイスのKern社から1956年に登場したスイターRXシリーズもその手のレンズです。スイターといえばマニアもたじろぐ高級ブランドですが、Cマウント版なら実用主義のカメラ女子にも無理なく買える手頃な値段なのでオススメです。
 
特集:女子力向上レンズ PART 3
寄ればフワトロ、引き画でスッキリの変化系レンズ
Kern-Paillard SWITAR H16 RX 25mm F1.4 
Kern(ケルン)社のSwitar(スイター)シリーズには搭載するBolex(ボレックス)というカメラの仕様に応じてARRXという2種の姉妹レンズがあり、これらをデジタル一眼カメラで使用する場合には全く異なる性格の描写を楽しむことができます。いずれのタイプもイメージサークルはマイクロフォーサーズセンサーをギリギリでカバーでき、鏡胴もコンパクトなためカメラ女子の多くが愛用するオリンパスPENOM-Dにはピッタリのオールドレンズです。ARRXの画質についてはホームページ[1]にとても詳しい比較・検証記事があり参考になります。ザックリと言ってしまえば、ARは開放からシャープでスッキリとしたヌケの良い描写が特徴の「完全補正型」と呼ばれる性格のレンズで、もう一方のRXはピント部の像が滲みを伴いながらトロトロととろけ、背後の滑らかなボケへと沈んでゆく典型的な「補正不足型」です[7]。背後のボケ量は大きく、柔らかく美しい描写が特徴ですが、こうなるにはコントラストや解像感が多少は犠牲になります。でも、どういうわけかこのレンズは例外的にコントラストがよく発色も鮮やかなのです。まぁ、程度の問題なのでしょうけれど。
開放からキッチリとシャープに写るARと、滲み系フワトロレンズのRX。皆さんはどちらが好みですか。たぶんAR好きは比較的男性に多く、RX好きは女性に多いような気がしています。
SWITAR RXの描写がソフトなのは、このレンズを搭載して用いたムービーカメラの特殊な機構に由来しています。カメラには分光プリズムによって光の25%をファインダーに導く仕組みが備わっていました[参考文献2-3]。ところが、レンズとフィルムの間にプリズムを1枚入れると光学系全体では球面収差が補正不足(アンダーコレクション)になり、完全補正を実現するには再度補正しなければなりません。Switar RXにははじめからプリズムの影響を考慮した設計が施されており、球面収差をレンズとプリズムが協力して補正するようにつくられました。つまり、プリズムを省きレンズ単体になると補正不足型に戻ってしまうのです[3]。球面収差を意図的に補正不足にする手法はソフトフォーカスレンズに施されているものとほぼ同じで、違いは程度の問題だけです。ただし、SWITAR RXの場合は意図的にこうなったわけではなく、プリズムの省略による副作用以外の何もでもありません。でも、おかげでフツーによく写るレンズとは一線を画す特別な描写設計(常用もできるやや補正不足の使いやすいレンズ)となったわけで、これはもう嬉しいアクシデントと考える方が幸せです。
 
Kern Switar 25mm F1.4:[文献4]に掲載されていた構成図のトレーススケッチ(見取り図);  左が前方(被写体側)で右が後方(カメラ側)。設計構成は4群6枚のプリモプラン発展型(Advanced -PRIMOPLAN type)。絞りが4群の手前にあるのは、第4群の前後移動でピントの位置を変えるインナーフォーカス機構のためです[参考5]

SWITAR RXシリーズは1956年に登場したBolex H-16 Reflexという映画用カメラの交換レンズとして、カメラとともに発売されました[6]。ケルンといえばライカを凌ぐ高級ブランドでしたので鏡胴のつくりは感心するほど良く、下の写真のように非写界深度のレンジを示したオレンジ色の帯が絞りリングの回転に連動して伸縮する凝った仕掛けになっています。また、この時代としては革新的なインナーフォーカス機構が導入されており、後玉の前後移動でピントが拾える仕組みになっています[5]。マニアやコレクターが好んで所有するのもよくわかります。タイプRXには今回紹介する25mm F1.4以外にも10mm F1.6, 16mm F1.8, 50mm F1.4があり、Pizar 25mm F1.5Pizar 50mm F1.8にもRX版が用意されました[6]。ちなみに焦点距離が長いほどプリズムの影響は小さく、75mm以上のモデルにRX版はありません[3]。レンズの設計は上の図に示すようなプリモプランからの発展型で、ユニークかつ豪華な構成形態です[4]。小さいくせに手に取るとズシリと重く、存在感たっぷりのレンズです。

 
参考文献・資料
[1] hubbll's Photo Leaf: Kern-Phillandの25mm F1.4のARとRXの写りはどう違うのか?
[2] Bolex Product News From Paillard," No. 5, (New York: Paillard Incorporated, June 25, 1974).
[3] BOLEX COLLECTOR: Lenses for Bolex 16mm Cameras
[4]Photographica Cabinett 30, Das Magazin für Sammler Dezember 2003
[5] 出品者のひとりごと・・: Kern-Paillard Switzerland
[6] BOLEX COLLECTOR: Kern-Paillad lenses
[7] 日本ではSWITAR RXが過剰補正型であるという誤った情報が広く流布していますが、この誤解は文献[2,3]の記載が紛らわしいために起こったものであると推測されます。よく読めばRXが補正不足であることはわかりますし、レンズの描写はそもそも典型的な補正不足型です。文献[3]の中の他の図は無視しFigure 4とFigure 7のみを見てください。RXを見立てたFigure 7のレンズが再び単玉に戻っている点を見落としてはいけません

入手の経緯
レンズは中古市場に数多く流通しています。ここ最近のCマウント系レンズは世界の相場よりも日本国内の相場の方が安く、本レンズもeBayでの中古相場は35000円~40000円あたりであるのに対し日本国内での相場は20000円~25000円程度、今買うなら国内だと思います。私は20195月にヤフオクで状態の特に良い個体を2本みつけ、25000円と30000円で購入しました。ちなみにSWITAR ARの方が10000円程度安く取引されており、まともに写るレンズの方が人気が低いという逆転現象が起こっています。届いたレンズは両方とも完璧に近いコンデイションで、一方はマウント部のネジにも全くスレがみられませんでした。未使用(オールドストック)の保管品だったのではないかとおもいます。

Kern SWITAR 25mm F1.4 H16 RX: フィルター径 31.5mm, 最短撮影距離 1.5feet(約45cm), 絞り値 F1.4-F22, 重量(実測)136g, 絞り羽根 9枚, 設計構成 4群6枚プリモプラン発展型, フォーカス機構 インナーフォーカス, イメージフォーマット 16mmシネマフォーマット, Cマウント, 深く絞るとケラれますが開放からF2.8あたりまでは問題なし。アスペクト比16:9で用いるなら、開放からF4までケラレなく使えます


 
撮影テスト
開放でのコントラストはARシリーズよりも、むしとRXの方が良好です。
近接撮影時にはピント部を薄いフレアが覆い、ソフトフォーカスレンズに近い柔らかい描写傾向になります。これは近接時に補正不足型レンズとしての性質が一層強まるためで、この性質変化のことを収差変動といいます。フレアはポートレート域から遠景を撮影する場合には収まり、スッキリとしたヌケの良い像、クッキリとした鮮やかな発色など、コントラストの高いシャープな描写になります。解像力は平凡ですが、そもそも感覚と印象で勝負するカメラ女子達に現代レンズのような高い解像力は要りません。近接撮影では気になりませんが、引き画では像面湾曲と非点収差が目立ち、四隅の像が放射気味に流れます。気になる場合にはカメラの設定で写真のアスペクト比を16:9に変更すると良いでしょう。四隅が切り取られ像の乱れがだいぶ緩和されますので、おすすめです。背後のボケはこのクラスにしては大きく、ピントが外れたところから急激にボケてゆきます。ボケ味は素直で美しく、滲みを纏いながらトロトロととろけるようにボケてゆき、少し絞っても画質の変化があまりありません。マイクロフォーサーズ機でも大きな後ボケの得られる、有難いレンズだと思います。
今回もオールドレンズ女子のお力添えをいただくことになりました。

Photographer: spiral
Camera: Olympus PEN E-PL6(Aspect ratio 16:9)

F1.4(開放) Olympus E-PL6(AWB, Aspect ratio 16:9) ピントが外れたところから急激にボケてゆきます。背後のボケが大きく滲むのもこのレンズの近接撮影時の特徴です
F1.4(開放) Olympus E-PL6(AWB, Aspect ratio 16:9) 近接撮影時はピント部も滲み、柔らかい像になります

F1.4(開放) Olympus E-PL6(AWB, Aspect ratio 16:9) 

F1.4(開放) Olympus E-PL6(AWB, Aspect ratio 16:9) コマ収差が強めにでています











F1.4(開放) Olympus E-PL6(AWB, Aspect ratio 16:9) 引き画になると急にヌケがよくなります。撮りますよ!




F1.4(開放) Olympus E-PL6(AWB, Aspect ratio 16:9) 撮りました!。コントラストは良好。四隅で像の流れが顕著に目立ちます


F1.4(開放) Olympus E-PL6(AWB, Aspect ratio 16:9)

今回、登場していただのは我が家のご近所にお住いのMinako Sugaiさんです。イングリッシュガーデンで撮ったお写真とのこと。

Photographer: Minako Sugai
Camera: Olympus PEN-F
 
Olympus Pen-F, Photo by Minako Sugai


Olympus Pen-F, Photo by Minako Sugai