おしらせ


2018/10/22

試写記録:Schneider Kreuznach REOMAR 45mm F2.8 改Leica-L

F2.8(開放)sosny A7R2(WB:auto)  開放ではピント部全体を薄いフレアが纏い、柔らかい描写傾向となります

F4  sony A7R2(WB:auto) 1段絞ればフレアは消え、スッキリとヌケがよく、コントラストは素晴らしいレベルで





F5.6 sony A7R2(WB:日光)  やや青みののったクールトーンな色味で、美しく仕上がります

F2.8(開放) sony A7R2(WB:日光) 再び開放。やはりピント部を薄いベールの様なフレアを纏いますが、中央はしっかりと解像しており線の細い繊細な描写です

F4  sony A7R2(WB:日光)もう一度絞ったショット。シャープでスッキリと写るレンズです


Camera SONY A7R2
Lens Schneider Kreuznach REOMAR 45mm F2.8







知人に代わってオークションで購入(代行落札)したレンズが数日間だけ我が家に転がり込んできましたので、軽く試写結果をリポートしてみたいともいます。ドイツのSchneider(シュナイダー)社がKodak(コダック)社のRetinette IA/IBというレンジファインダーカメラに搭載する固定式レンズとして1958年頃から1966年まで供給したReomar(レオマー)です。Reomarにはこれ以前の旧式のRetinetteに搭載されたモデルもありますが、開放F値がF4.5やF3.5とやや暗かったり、焦点距離が50mmであったりと、少し仕様が異なります。
今回紹介するReomar(後期型)にはSchneider社製の個体に加え、Rodenstock(ローデンストック)社製の個体があります。大衆機のRetinettiがヒットしたことで生産供給が追い付かず、Rodenstock社にOEM供給を依頼したためだという話を誰かに教えてもらったことがありますが、確かな情報ではありません。どなたか信ぴょう性の高い情報をお持ちの方は教えていただけると幸いです。


レンズのデザインが面白く、シャッターの部分に人物の上半身のイラストや集合写真、風景などが刻まれています。一体何だろうとよく見てみると、何とシャッターユニットにヘリコイドを内蔵しておりピント合わせができます。レンズシャッターなので、これにはビックリ。レンズ構成は3群3枚のトリプレットです。
絞り羽 5枚構成, 絞り指標 F2.8-F22,  設計 3群3枚(トリプレット), フィルター径 29.5mm, PRONTOR 250Sシャターに搭載, ヘリコイド内蔵



オークションに出品されていた段階で既にカメラから取り出され、ライカLマウントに改造されていましたので、アダプターを介してSONY A7R2で使用することにしました。スッキリとヌケのよいクリアな写りで、開放からコントラストの高いレンズです。細部に目を向けると写真の中央は開放で線の細い繊細な描写となり、滲みをまといながらもしっかりと解像しています。1段絞れば滲みは消えシャープネスが向上、カリッとした解像感の強い仕上がりとなります。カラーバランスはやや青みが強くなる傾向があり、白が引き立つクールトーンな描写です。クリアでヌケの良い性質と相まって、とても清楚で品のある味付けになります。

2018/10/13

Sankyo Kohki KOMURA 100mm F1.8



ブランド志向の強い日本ではマイナーな存在でありながら、海外で高く評価されている国産オールドレンズがあります。三協光機(株式会社コムラーレンズ)がかつて製造した大口径望遠レンズのKOMURA(コムラー)、タパック・インターナショナルが設計、KOMINE(コミネ)が製造したElicar(エリカ―)、キノ精機のKIRON(キロン)がその代表例です。本ブログではこれら3本のレンズにスポットライトを当ててゆきたいと思います。 

海外で絶賛された国産マイナーレンズ PART 1
キング・エルノスターの称号で知られる
大口径ポートレートレンズ
三協光機(Sankyo Kohki)KOMURA 100mm F1.8
三協光機(コムラーレンズ)は小島満という人物が中心となり東京都台東区に設立した三協光機研究所を前進とするレンズ専業メーカーです[3,5]。文献に記録されている創設年は曖昧で何か事情があったのでしょう。正式には1954年[3](実際には1951年[2])と記されています。設立当初は下請けの製造メーカーとしてChibanon(チバノン)というブランドの引き延ばしレンズと8mm用のシネレンズを市場供給していました[1]。1955年に会社名を三協光機株式会社へと改称、Chibanonブランドを廃止し、自社ブランドであるKOMURAの供給を開始しています。会社名の「三協」には技術、営業、資本の三部門の協力と均衡を保つ意味が込められていたそうです[2]。この頃からのレンズのラインナップには引き伸ばし用レンズのKOMURANON-E、ライカマウントや一眼レフカメラ用などの35mm判レンズ、ブロニカ用(6x6フォーマット)や6x9フォーマットなどの中判用レンズ、そして4x5フォーマットの大判用レンズなどがありました[5,6]。写真用レンズの製品展開は広角レンズと望遠レンズが中心で、カメラとセットで売られることの多かった標準レンズは殆ど作りませんでした。KOMURAというブランド名は社長の小島(KO-jima)と専務の稲村(Ina-MURA)の苗字から一字づつとって組み合わせたのだそうです[1,3]。ただし、なぜか日本では「コムラー」と語尾を伸ばした呼び名で通っており、この呼び名は1969年に改称される会社の正式名称(株式会社コムラーレンズ)にも使われています英語の綴りだけみると「コムラ」と読めるわけですから、外国人に「コムラー」と言っても全く通じないはずです。文献[3]によると同社は1980年頃まで存続していました
重量(実測)530g, 絞り羽 16枚,  絞り F1.8-F16, 最短撮影距離 1.4m, 設計構成 4群5枚エルノスター2型(1-2-1-1), フィルター 62mm、プリセット絞り、発売時価格15800円

三協光機がかつて製造したコムラーブランドの高速望遠レンズには、ドイツのERNEMAN (エルネマン)社が戦前に開発した銘玉ERNOSTAR(エルノスター)の設計を採用したモデルが多くみられます。同社のレンズを用いて写真家達が数多くの印象的な作品を創出しており、大口径望遠レンズは海外のレンズマニアの間で「キング・エルノスター」と呼ばれ高く評価されています。今回は同社が1960年代に市場供給した高速望遠レンズ[4]の中からKOMURA (コムラー)100mm F1.8を取り上げ紹介します。
レンズ構成は下図に示すような4群5枚で、戦前にエルネマン社が生産していたF1.8のエルノスターと同一構成の、俗にいうエルノスター2型です。新種ガラスを1枚使用し戦前のエルノスターを高性能にしているのが特徴です。マウント部は独自の58mmネジマウントになっており、純正アダプター( Interchangeable adapter for Komura uni mount )を介して各社のカメラに対応していました[5]。手に取るとズシリと重く造りの良い鏡胴のため、今になって海外で再評価されている理由もよくわかります。
KOUMRA 100mm F1.8の構成図(トレーススケッチ)。設計は4群5枚のエルノスター2型です
[1]朝日カメラ 1955年1月号 広告
[2]戦後日本カメラ発展史 日本写真工業会編(1971)
[3]カメラ年鑑 日本カメラ(1957)
[4]「コムラーレンズと三協光機」粟野幹男 クラシックカメラ専科No.50(1999)
[5] Komura Product ctalog for 4x5 Large format, 6x9 format and 35mm format camera(Feb.1970). 
[6] "Lenses? Lenses?", Australian Photography Photo Directory 1975, (1975) pp.20-21
  
入手の経緯
レンズは2018年8月に大阪のカメラ屋にて、店頭価格45000円にて購入しました。コンディションはABで、ゴミの混入や剥離したチリ(コバ落ち)が少しみられましたがカビやクモリはなく、実用的には問題のないコンディションでした。KOMURAは現在も基本的には安値で取引されている製品ブランドであることに変わりはありませんが、F1.8~F2クラスの明るい望遠系だけは別格扱いされており、85mm F1.4には130000円~150000円、85mm F1.8、100mm F1.8、135mm F2には100000円前後、105mm F2でも50000円前後もの値が付きます。ただし、F2.8クラスはまだ数千円で取引されており、例えばエルノスター2型(1-2-1-1)の135mm F2.8はまだリーズナブルな値段で入手することができます。レンズをできるだけ安い値段で手に入れたい場合には、海外よりも国内市場をあたるほうが有利でしょう。
 
撮影テスト
定評のあるレンズだけに描写はやはり素晴らしく、オールドレンズらしい雰囲気のある写真が撮れます。特に発色は独特で、コッテリ感が強調されやすい現代のデジカメにおいていい感じにバランスし、自然な色味にまとまります。ピント部の質感表現は繊細で、中心解像度は高く、開放では四隅に軽微なコマフレアが出るものの光を敏感にとらえることができます。少し絞ると全域均等なシャープなピント部となります。階調は軟らかくトーンがとてもなだらかに出ます。背後のボケは軟らかく、どのような条件でも乱れることなく安定しており、ガウスタイプにもゾナータイプにもみられない独特なボケ味の美しさがあります。

F2, sony A7R2(WB:日陰)






F2, sony A7R2(WB:日陰)




F1.8(開放) sony A7R2 (WB:日陰) ボケ味は独特です




F2.8, sony A7R2(WB:日陰)