おしらせ


2010/02/04

Steinheil München CULMIGON 35mm/F4.5
シュタインハイル・ミュンヘン クルミゴン


独特の設計だからこそできたこのサイズ。
コンパクトな広角レンズを探すと最後はクルミゴンに辿りつく
 
こんなに小さな一眼レフ用広角レンズはちょっと見当たらない。ドイツ・ミュンヘンの老舗光学機器メーカー、シュタインハイル社が1956年に製造したクルミゴンである。光学系はシュタインハイルが得意とする3枚構成のトリプレット型を原型とし、最前面に凹レンズを1枚置いて包括角度を広げ、4群4枚構成でレトロフォーカス化したユニークな設計であり、正レンズと負レンズが2枚づつとなるため光学系のバランスが良い。レトロフォーカス化に便乗し、同時に高画質化も実現してしまうという優れたレンズ構成である。アルミ素材の鏡胴に加え、口径を小さく抑えた設計により重量わずか130gの超小型・軽量ボディを実現した。APS-Cセンサーを搭載したデジタル一眼レフカメラが全盛の今、使いやすい35mmの焦点距離を持つ本品への注目度は高い。なお、レンズ名の由来はラテン語の「頂上」を意味するCulmenで、広角レンズなのでこれにギリシャ語の「角」を意味するGonを組み合わせCulmigonとした。
 
★入手の経緯
 本品は2009年12月にeBayを通じて米国ワシントンの業者から送料込みの80㌦で落札購入した。eBayでの落札相場は80-130㌦くらいだろう。解説には「マウント部にハゲ。フォーカスリングに小さな傷。フォーカスリングの回転はスムーズだが少し重い。絞りリングの回転は快調だが、絞り羽には若干オイル染みがある。ガラスはクリーンでクリア。キャップがつく。」とある。後日手元に届いた現物の全てを的確に物語っていた。

フィルター径:40.5mm, 重量:130g, 光学系:4群4枚, 焦点距離:35mm, 絞り値:F4.5-F22, 最短撮影距離: 0.5m。本品はプリセット絞りである。絞りリングには各指標においてクリック感がなく、絞り羽根は実質的に無段階で開閉する

★描写テスト
クルミゴンの設計には割り切りの良さを感じる。開放絞り値がF4.5とやや暗めの仕様だが、元の原型がシンプルなトリプレット構造であることや、ボケ味を出し難い広角レンズであることなどを考えると、無暗に大口径化するよりもコンパクト性を重視するほうが製品としての特色が出しやすい。そう考えると、描写のチューニングも自然とシャープネスを優先するものになる。本レンズの特徴は下記の通りだ。

●画像中央部は絞り開放からシャープに結像する。
●周辺部は湾曲収差の影響で、結像はボケ気味である。
●発色は薄くて淡い。暗部が浮き気味になりコントラストは明らかに低い。
●二線ボケやグルグルボケは出ていない。ボケ味は硬め。
●ガラス面は単層コートティングなので逆光に弱くフレアが発生しやすい。フードは必須だ。

以下、作例を示す。

F4.5 この通り中央部は絞り開放からシャープだが周辺部の結像は像面湾曲の影響でボケ気味

 
F4.5 コントラストは低く発色は淡白。アウトフォーカス部では輪郭に沿ってエッジがシャープに立ち上がっている。ボケ味は硬く騒がしい

F5.6 下方の芝生の結像がガサガサと煩さく像がタルのように歪み縮まっているようにみえる。歪曲収差が出ているようだ?

 
F8 これくらい絞っておけば周辺部まですっきりと高画質だ。いいレンズではないか

★撮影環境: Steinheil CULMIGON + EOS kiss x3 + マミヤ2眼レフ用HOOD(42mm径)

 

 シュタインハイル社製のレンズには特色のある品が多い。第二次世界大戦による工場の被害さえなければ、戦後のシュタインハイルは名実ともにライカやツァイス、シュナイダーと並びドイツを代表する規模のメーカーとなっていたのだろう。中小企業という劣勢の立場、伝統ある老舗メーカーとしての誇りがシュタインハイルの製品を魅力あるものにしたのだろう。