おしらせ


2009/05/28

Isco-Göttingen WESTAGON 50mm/F2(M42)
イスコ・ゲッチンゲン ウエスタゴン`


 
癖玉なんだろうけれど
かっこいいから許します。ハイ。

 イスコ社はドイツの古都ゲッチンゲンにあり、名門光学機器メーカーのシュナイダー(正式名称:シュナイダー・クロイツナッハ社)を親会社とするレンズの製造メーカーだ。日本では知名度がいまひとつ低い。本品はシュナイダーが1937年に設計したダブルガウス型のレンズ構造をそのまま採用し、イスコ社によって1950年代前半に製造された。この設計はカールツァイスのウルトロンやタクマー55mm/F1.8にも採用されている。大口径化と像面の平坦化が容易で、高画質が得られる反面、レンズの構成枚数が多く、レンズ内の光の反射によりフレアが発生しやすいのが難点のようだ。何事もトレードオフなのだろうか・・・色々改良が施され、現在はこうした問題はほぼ克服されている。構造的に後玉が大きく飛び出すので、フルサイズセンサーのEOSではミラーが後玉に干渉してしまう。今回取り上げるイスコ社のウェスタゴン50mm/F2は大きな鏡胴から突き出たヘリコイドリングを持つ無骨なデザインが印象的である。鏡胴にはアルミ合金を採用し、どこか民用品ではない、お高い顕微鏡にでも使われていそうな立派なつくりだ。開放F値が2.8のタイプはよく見かけるものの、F値2.0の製品は極めてレアで、eBayでも見かけることは大変稀である。ここまで明るければ、さぞかしボケ味も面白いだろうに・・・・欲すぃ~。
 
     最短撮影距離: 55cm, フィルター径:52mm, 焦点距離/開放F値:50mm/2.0, 5群6枚ガウスタイプ

入手の経緯
2008年末頃、eBayに新品同様(MINT状態)のものが出品されていた。入札〆切の数分前からスナイプ入札による落札を企てたが、90ドル前後をつけていた値はぐんぐん上昇し、220ドルになっても最高入札者になれなかった。結局諦めることに。ところがその直後、なんとヤフオクで即決価格2万円にて出品されていたので反射的にポチッと購入してしまった。
試写テスト
海外の幾つかのブログに描写についての評価が掲載されていた。それらによるとコントラストは低く、逆光下ではフレアが発生する。開放での描写はたいへんあまい。ハイライト部にはハロが発生しまくり、まるで夢の世界のような描写となる。1~2段絞るとハロが消失し、コントラストが向上してシャープな写りになる。ハロやフレアを表現の1つのするならば、本品は表現力の豊かな面白いレンズである。

近景/開放絞りでは描写が甘い。ピントを合わせたDVD盤面の解像感が乏しい。ボケはたいへん柔らかい

緑の部分にハロが出て綺麗だがボケは煩い。奥の植栽の辺りにグルグルボケの発生が確認できる。気になるならば一段絞れば収差が減りボケ味は素直になる。東京都新宿区戸山公園
フードを装着して順光で撮影してもコントラストはこのとうり低く暗部の輝度が上がってしまう。これを個性とみなすなら味のある素晴らしいレンズということになる。 東京都新宿区戸山公園

モノコート仕様のレンズのため逆光に弱く直ぐにフレアが発生する。朝の眩しさを表現するには持ってこいのレンズだと思う。東京都新宿区・戸山公園

都営副都心線

渋谷駅前

渋谷駅前

現代のレンズの基準から考えると、やはり癖玉なんだろうけれど、このレンズ・・・・かっこいいから許します。ハイ。

撮影環境:Canon EOS Kiss x3 + ISCO + ELMOねじ込み式メタルフード

ELMOのねじ込み式クラッシックフードを装着した様子です。APS-Cセンサーの場合、もう少し深めの80mm用のフードがよい。このレンズの存在感に負けないかっこいいフード、どこかにないものだろうか・・・
子供をハイビジョン動画で撮りたいと妻を説得し、ついにEOS Kiss x3を購入してしまった。ウホホ。その代りにペンタックスのistDS2は手放すことに。はじめはペンタのNEW K-7とどちらにしようか迷ったのだが、決め手は重量が軽いことであった。レンズはいくら買っても家族には絶対にバレない(我が家の法則)。きっと、興味の無い人には皆同じに見えるからなのだろう。でもカメラ本体は不思議と直ぐにバレてしまう。結果、デジタル一眼レフの所有は現在2台のみ。

2009/05/27

Carl Zeiss Flektogon 35mm/F2.8 (M42)
フレクトゴン広角3兄弟の長男

このブログエントリーは2016年11月に刷新されました。
こちらをどうぞ。


野山でのスナップ撮影は
これ1本で何とかなる
 
 Flektogon(フレクトゴン)は東独VEBツァイス社の広角レンズにつけられたブランド名であり、同社の設計士Harry Zöllner(ハリー・ツェルナー)とRudolf Sorisshi(ルドルフ・ソリッシ)がContax版広角レンズのBiometar 2.8/35をレトロフォーカス化させ一眼レフカメラに適合させるという方針で開発した。ちなみに、ZöllnerはBiometar(1948-1981)を設計した人物でもある。1950年から製造された初代・アルミ鏡胴のタイプ、1950年代後半から1960年代にかけて製造されたシングルコーティング仕様の2代目・革巻きタイプと3代目・ゼブラ柄タイプ(写真参照)、1975年から1980年まで製造されたマルチコーティング仕様の4代目・黒鏡胴タイプが存在する。2代目と3代目には35mm 20mm 25mmの3種が存在し、「フレクトゴン広角3兄弟」の愛称で親しまれている。
Flektogon広角3兄弟。左から20mm/F4, 35mm/F2.8, 25mm/F4(M42)

この時代のレンズには鏡胴が金属製で重厚な作りのものが多い。マウントのバリエーションはM42用、エギザクタ用、ペンタコン6用の3種である。フレクトゴン35mmのゼブラ版は後玉が飛び出ているためEOS 5Dのミラーに干渉するとのこと。20mmと25mmのタイプはセーフ。 後継モデルの黒鏡胴MCフレクトゴン35mmはセーフのようだ。

フィルター径49mm, 重量230g, 35mm/F2.8
今回テストするFlektogon 35mm/F2.8(M42マウント)の特徴は風景撮影に適した広角設計であることと、被写体に18cmの距離まで寄ることができる高い近接撮影能力である。花や虫がアップで撮影でき、野外で大活躍するレンズである。1960年頃のレンズには美しいゼブラ柄が流行し、多くのレンズメーカーがこの種のデザインを採用した。この縞々は鏡胴が金属だから栄えるわけで、プラスティック製の今のレンズでは実現できないデザインなのだ。

入手の経緯
本品は2008年5月にeBayにて71㌦でイギリスの業者から落札した。出品時の解説には、ガラス・外観・機械動作ともにエクセレントとあるだけ。新品同様(MINT)との記述なら安心だが、この程度の製品評価の場合、eBayでは危険な賭けになる。予想どうり入札価格は高騰しなかった。幸いなことに届いた実物は新品同様のレベルであった。国内相場が2万円程度なので、たいへんラッキーな買い物だ!。

試写テスト:長野・白馬の高原にこれ一本でゆくフレクトゴン35mmは癖の無い自然なボケ味、ピントの合った部分のシャープな切れ味、柔らかい描写に定評がある。マルチコーティング処理が施された現代のレンズに比べ、逆光時の安定感(コントラスト)が劣るものの、この時代のモノコート仕様のレンズの中では抜群の描写性能である。良い意味でツァイスらしくない落ち着いた渋い発色は、その後に銘玉と呼ばれる後継モデル・MCフレクトゴン35mm/2.4の到来を予感させる。近接撮影能力は人間の目の能力を超えており、ギリギリまで接近して花や虫を大きく撮影すると、見たこともないような凄い写真が撮れ、思わずため息がでてしまう。私たちを非日常の世界に連れて行ってくれる素晴らしいレンズだ。


手乗り蝶。塩分をなめているのだろう・・・離れようとしない
美しい桃色の花。絞り開放での撮影であるがハイライト部にハロは出ていない
ボケ味も煩くない。やわらかい描写だ

もともと広角レンズであるため風景撮影もこのとおり
 
最後に一句
ゼブラって やっぱり格好 いいよなぁ 
しみじみ思う SPIRAL
撮影環境: 
PENTAX *ist DS2
Carl Zeiss FLEKTOGON 35mm/F2.8








★こちらは愛媛・松山でのサンプル: FLEKTOGON 35mm/F2.8 EOS Kiss x3(400D) + HAKUBA rubber hood

ISO100, 絞り値F8  愛媛県松山市

ISO100, 絞り値f5.6
ISO 100, 絞り値f5.6