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イベント案内

オールドレンズ女子部 撮影散歩&お茶会
10月15日 場所は横浜イングリッシュガーデン
参加資格 オールドレンズに興味のある女性 詳しくはこちら 

オールドレンズ写真学校 写真展
11月3ー5日 場所は原宿 申込制:定員13名(参加資格有) 詳しくはこちら スタッフとして参加予定です。

2011/05/30

ZOMZ MIR-1 37mm F2.8(M39) and CZJ Flektrogon 35mm F2.8(M42)

MIRという名はロシア語で「平和」あるいは「世界」を意味する。上段右奥のゼブラ柄のレンズはCarl Zeiss Jena Flektogon 2.8/35

カールツァイスとロシアの模倣レンズ群団2
安価で高性能なロシアン・フレクトゴンの魅力
ロシア(旧ソビエト連邦)は同国占領下の旧東ドイツから多くの光学技術を手に入れ、自国のカメラ産業を発展させてきた。中でも東独VEBツァイス社(Carl Zeiss Jena)の技術はロシアのカメラ産業に多大な影響を与えている。戦後のロシアではSonnar、Biogon、Biotar、Flektogon、Tessarなどのコピーが次々と生みだされた。今回紹介するMIR-1もそうした類のレンズで、1952年に登場したFlektogon 35mm F2.8をベースにVavilov State Optical Instituteが1954年に設計、双眼鏡の生産で知られるZOMZ(ザゴルスク光学機械工場)が製造した単焦点広角レンズだ。レンズを設計したのはD.S. Volsov(Д. С. Волосов)[1910-1980]という光学設計を専門とする物理学者で、彼はバリフォーカルレンズなどの複雑な光学設計法を1947年に開発するなどロシアの写真レンズ史の発展に寄与した人物である。なお、初期のロットにはfk-35(Flektogon Krasnogorsk 35)というコードネームで試作されたKMZ製の個体があるようだ。設計のベースとなったFlektogonは切れ味と色のりの良さに定評のあるBiometarをレトロフォーカス化するというユニークな構成を持つレンズである。MIR-1にもその優れた描写力が受け継がれており、1958年にベルギーのブリュッセルで開催された万国博覧会でグランプリを獲得するに至った。その輝かしい栄光を称えるかのように、鏡胴には「Grand Prix Brussels 1958」の文字が誇らしげに刻まれている。一つ残念なのは、それ以降に光学系の改良がなかった事だ。過去に何度か実施されたモデルチェンジにおいても変更されたのは鏡胴のデザインや材質のみであり、最短撮影距離や絞り羽の枚数すら変わっていない。最後の後継モデルはMIR-1bという名で1992年から2004年まで製造されていたので、何と開発から50年もの間、同一の設計を保ち続けたことになる。オールドレンズ界のシーラカンスと言ったところであろうか。
  37mmという中途半端な焦点距離はやや奇異に思えるかもしれないが、焦点距離35mmのレンズの大半が実際には35mmよりもやや長い焦点距離を持つのに対し、MIR-1は厳密に37mmであるため、35mmのレンズに比べ撮影画角の差は僅かである。
  実はMIR-1のプロトタイプらしいレンズが2012年7月に一度ヤフオクに出品された。レンズ名はコードネームでfk-35と表記されており、fkは「FlektogonKrasnogorsk」の略であると受け取れる。外観はMIR-1そっくりで、銘板には製造番号NO.5600001が記されている。1956年に製造されたシリアル番号が1番の製品である。プロトタイプはこれ1本のみだったのであろうか?。そして最も興味深いのは、このレンズの焦点距離がこの段階ではフレクトゴンと同じ3.5cm F2.8と記されている点である。MIR-1は35mmのフレクトゴンからそっくりそのまんまデッドコピーされたのではないだろうか。



MIR-1/Mir-1b 37/2.8(左)とFlektogon 35/2.8(右)の光学系の比較。構成は5群6枚で解像力で定評のあるXenotar (Biometar)型をレトロフォーカス化したユニークな設計を採用している。MIR-1の光学系は文献[1]からの引用だ。フレクトゴンの図は文献[2]に掲載されていたものをトレースした
参考文献
[1] RussiRussian lenses: A. F. Yakovlev Catalog “The objectives: photographic, movie, projection,reproduction, for the magnifying apparatuses" Vol. 1, 1970
[2] 東ドイツカメラの全貌―一眼レフカメラの源流を訪ねて  リヒァルト フンメル、村山 昇作、リチャード クー、 Richard Hummel (1998/12)

★入手の経緯
 本品は2010年9月にeBayを介してウクライナの中古カメラ業者(取引件数6111件中POSITIVE評価99.5%)から65㌦の即決価格で落札購入した。送料込みの総額は80㌦であった。商品の解説は「EXCELLENT++++。光学系はクリーンでクリア。傷も曇りもないオールドストック。レシートとケース、マニュアルがつく」とのこと。届いた商品は極上品。よくまぁ、こんなに状態の良いものが50年間も残ってるなと感心した。ちなみに、ブラックカラーの後継モデルMIR-1Bの海外相場は50ドル程度で、本品よりもやや安価だ。フレクトゴンの1/3の価格で入手できることを考えると、驚異的なコストパフォーマンスといえる。

MIR-1(ゼニットM39マウント): レンズ構成 5群6枚, 絞り値 F2.8-F16(プリセット)
絞り羽根 10枚, フィルター径 49mm,  最短撮影距離 0.7m, 重量(実測) 178g

M39-M42リングアダプターをはめればM42マウント化できる。リングアダプターはeBayで5㌦程度で手に入れることができる
 
後継品のMIR-1b(M42マウント): 構成 5群6枚,  絞り値:F2.8-F16(プリセット),絞り羽根:10枚,フィルター径 49mm, , 最小撮影距離:0.7m 重量(実測);186gこちらは1992年から2004年までVologda Optical-and Mechanical Plant(VOMZ)にて生産された


★撮影テスト
 MIR-1はフレクトゴン35/2.8に勝るとも劣らないシャープな描写力を備えたレンズである。以前の私のブログエントリーでは後継のMIR-1bを取り上げ、ソフトな描写と解説してしまった。あの評価は本エントリーで撤回したい。色味はフレクトゴンと同様に温調で、色ノリが良い点も似ている。球面収差やコマ収差は良く補正されており、開放絞りからスッキリと写る優秀なレンズである。倍率色収差や歪曲も良く補正されている。気になる事と言えばゴーストが出やすいくらいであろう。取り回しに関してはやや癖があり、絞り冠の回転が逆方向である事に加え、制御機構が独特なので、慣れるまでは、やや使いにくいと感じるであろう。ピントの山が掴みにくい印象を抱くかもしれないが、これはヘリコイドの直進が一般的なレンズに比べゆっくりなためである。慣れないうちはピント合わせに手間取るが、きっちりと合わせたい場合には、むしろ好都合といえる。以下に無修正の作例を提示する。


F2.8 Sony NEX-5 digital: 色のりがよく緑が鮮やかに栄えている
F4 sony NEX-5 digital: 色味はオールドツァイス同様に温調気味


★MIR-1とFLEKTOGONの解像力の比較
 MIR-1にはどれほどの解像力が備わっているのだろうか。描写力に定評のあるFlektogonを基準に、実写による評価を試みた。なお、今回はゼブラ柄(2代目)のFlektogonを比較の対象としている。本来ならばMIR-1の設計ベースであるアルミ鏡胴の初期型Flektogonを用いるべきであるが、ゼブラ柄のFlektogonはアルミ鏡胴モデルと同一の光学系なので比較対象としては問題はない。なお、私が以前に所持していたゼブラ柄のFlektogonはヤフオクを介して本ブログの読者の方に売却してしまったので、今回は知人からお借りしたFlektogonを用いての撮影テストとなった(感謝感謝)。
 下のサンプル写真は金属壁の腐食部を垂直に撮影したものだ。レンズの先端から被写体までは約1mの距離を置いている。ピント合わせはじっくりと時間をかけ慎重に行ったので、ジャスピンであると信じている。写真の中央部を拡大し、MIR-1 37/2.8とFlektogon 35/2.8のシャープネスを肉眼で比較してみた。

 下の写真は2本のレンズの開放絞り(F2.8)における撮影結果である。どちらも金属表面の錆を緻密にとらえており、両レンズのシャープネスは互角のレベルといってよい。

F2.8 Sony NEX-5 digital, MIR-1(上)とFlektogon(下)
クリックすると拡大写真が表示され、もう一回クリック
すると最大化される

F4 sony NEX-5 digital, MIR-1(上)とFlektogon(下)
クリックすると拡大写真が表示され、もう一回クリック
すると最大化される
 上の写真は1段絞ったF4において両レンズの撮影結果を比較したものだ。開放絞りにおける結果と比べ、どちらのレンズも鉄錆の赤みが収まり、ニュートラルな発色に近づいている。2本のレンズの解像力はほぼ同レベルで、両者の差を肉眼で識別するのは難しい。 
 Helios-44シリーズやINDUSTAR 61L/Zのブログエントリーの時にも感じた事だが、ロシアのレンズは一般的にどのブランドも、ネタ元のドイツ製レンズに決して引けをとらない優れた描写力を実現している。ただし、光学系の独自改良が活発には進まないようである。
 
★撮影機材
Sony NEX-5 + MIR-1 37/2.8 + PENTACON Metal hood 49mmフィルター径

 MIR-1に対する写真家の評価は賛否両論で、畏敬の念を抱く人もいれば酷評する人もいる。実力相応の世評を勝ち取っているとは言い難いのが事実だ。写真家達の厳しい評価は、発展力の乏しいロシアのカメラ産業界に対する声なのかもしれない。

6 件のコメント:

  1. 魔術師です。
    今度はMIR-1のデッドストックですか?ケースとマニュアルが
    ついてくるのは何となくわかりますが、当時のレシートまで
    同梱とはすごすぎます。よくそんなの見つけましたね。(^^;)
    ところで…
    実は以前からエキサイトで写真ブログを運営していたのです
    が、無料でUPできる容量一杯まで使ってしまい、しばらくの
    休憩&準備期間をはさんで昨日ようやく再スタートさせまし
    た。へっぽこな写真ばかりですがよろしければ遊びに来てく
    ださいませ~。m(_ _)m

    あ、リンクいただきましたがよろしかったでしょうか?
    では、これからもよしなにおつきあいください。

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  2. 魔術師さん
    ブログの開設おめでとうございます。
    大阪周辺にお住まいのようですね。
    私はまだ、大阪に通いはじめて1ヶ月と
    土地勘が鈍いので、
    撮影スポット探しの際の
    参考にさせていただきます(^o^;)

    返信削除
  3. SPIRALさん どうもです。m(_ _)m
    私のブログの方もみなさんのお陰で何とか賑やかにリスタートす
    ることができてホッとしています。
    >大阪周辺にお住まいのようですね。
    私は関西在住とは言っても滋賀県北部の北陸のにおいの濃い長浜在住です。新幹線だと米原が最寄りですね。

    >大阪に通いはじめて1ヶ月
    何故にSPIRALさんが大阪通いをしておられるのか謎ですが、
    新しい大阪駅や昭和の雰囲気を残すレトロな中崎町あたりは
    フォトジェニックですね。(ここらは中古カメラ屋も多数有
    り。)さらに道頓堀の雑踏や海遊館、アメリカ村、万博記念
    公園あたりもよさげです。私もいつも京都までしか行かない
    ので大阪だとこのくらいしか心当たりの撮影スポットをあげ
    られません。(^^;)

    返信削除
  4. 魔術師さんこんばんは。長浜在住でしたか。
    情報ありがとうございます。

    > フォトジェニックですね。


    新しい大阪駅と周辺のビルの堂々とした建ち方には、
    圧倒されます。中崎町がお勧めですか。
    こんど、ぶらついてみます。

    中崎町の中古カメラ店とは、マツバラさんと、OSカメラサービスのことですよね???。でへへ。攻略済みです。
    両店とも品揃えの豊富な店でした。マツバラさんは旋盤も使い、改造もできる生産的なショップで、レンズはマニア向け。とても刺激的な店です。

    OSカメラサービスは物量に圧倒されました。

    大阪ですと、あとは八百富写真機店の支店の方くらいでしょうか。他にも開拓してゆきたいです。


    >道頓堀の雑踏や海遊館、アメリカ村、万博記念
    >公園あたりもよさげです。

    海遊館、万博記念公園は攻略済みです。
    公園の方は「芸術はバクハツだ!」ってなかんじに素晴らしいですね。

    あとは動物園前駅から延びる商店街が昭和みたいな異空間で、凄いと勧められましたので、ちょっと行ってみましたが確かに凄い・・・。魔術師さんも機会がありましたら是非ぜひ。

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  5. 先ほどコメントを投稿したのに上手く飛ばなかったようですので再度。もし飛んでたらどちらかを削除願います。

    ところでSPIRALさん、大阪詳しいじゃありませんか~。(笑)
    で、ちゃんと押さえるべきところを押さえてらっしゃるところが凄い。マツバラさんは私が初めてM42レンズを買ったお店です。

    >他にも開拓してゆきたいです。
    では早速。大阪駅界隈はキヤノンのサービスセンターがありますので年に一度はお参りしております。(^^)
    大阪駅前第1ビルには「カメラの大林」「梅田フォトサービス」「マルシンカメラ」が。で、第4ビルには「ツカモトカメラ」そこらへんから大阪駅中央口に向かうと、階段を上って大阪駅に着く寸前に「八百富写真機店」(攻略済みですよね)
    大林は正統派、梅田フォトサービスは三脚がどこより安く、マルシンはジャンキー&マニアック、ツカモトは大判中心?八百富はよそにはないマニアックなものが結構豊富といったところでしょうか。

    >動物園前駅から延びる商店街
    うはー、これは濃いですねー。今度行ってみます。ではでは。

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  6. 魔術師さん

    どうもどうも。この掲示板の書き込みは認証制でして、
    すぐには反映されない仕組みになっているのです。

    さて、梅田周辺はバラエティに富んだ中古カメラ屋で
    にぎわっているのですね。説明していただいて、だいたいの
    特徴がよくつかめました(感謝感謝です)。

    インターネットで調べる限りの印象ですが、
    ドイツ製中古オールドレンズ(非ライカ系)に力を
    入れている店に限った場合は、マツバラ光機と
    OSカメラサービス、八百富の支店(本店ではなく)の
    3つになるのでしょうか。これらに匹敵する店は、いかに大阪といえどそうはないように思えます。でも、他にも知らない穴場店があるかもしれませんので、まだまだ探検して
    ゆきたいです。

    >これは濃いですねー。今度行ってみます。

    ぜひぜひ。

    返信削除

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